見出し画像

1ページのショートストーリー「結成10周年ライブ」

高校時代の同級生がLiveをやるというので冷やかしがてら観に行って来た。

ただ僕が心を奪われたのは同級生のバンドではなく、その日メインの扱いを受けていた結成10周年のバンドだった。

当然TVに出たことがあるような有名なバンドではないけれど、普段バイトをこなしながらいつかスポットライトを浴びるために日々Live活動をしていると、あとから同級生から聞いた。

その4人組バンドがステージに登場すると、20人ほどの女性たちから黄色い声援が飛び、その日一番の盛り上がりを見せて、演奏は始まった。

否が応でも上がるハードル。見事そのハードルを越えてくるメロディとパワー。素人の僕でも、そのバンドの凄さや強さは伝わった。

3曲ほど歌い、ボーカルのMCが始まった。

『きょうは来てくれてありがとう~』

『実はきょうは、俺たちの結成10周年なんです』
観客からは「知ってる~」など、ステージに向かって声が飛び、会場は一体感を見せていた。

『俺1人ではここまでやってくることはできなかった。今日来てくれたファンのみんなありがとう~』

『そしてここまで付いて来てくれたメンバーのみんな、本当にありがとう~』

『ここで最高のメンバーを紹介させてください。ギター・・・、』
静かな時間が流れた。

『ギター・・・、』
再び静かな時間が流れ、ボーカルが小声でギターに声を掛けた。

『ごめん、名前なんだっけ・・・』

この記事が参加している募集

スキしてみて

ひとり~の小さな手~♬なにもできないけど~♬それでもみんなの手と手を合わせれば♬何かできる♪何かできる♪