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【無料?有料?】無償無料で、人は傑作を書けるのか?

無償で記事を書くべきか?
いや、有償で書くべきか?

どちらにも楽しい側面があるような。
有償で書く、つまり
原稿料や印税をもらう方が
いわゆる作家、物書きとして
憧れてる人も多いでしょう。
noteでも有料記事の執筆は、
有償の行為でしょう。
いつかやってみたい憧れだ。

また、いっぽう、
無償?つまり無料で、
お金に関係なく書くのも
気楽で楽しい側面があります。
noteで無料で記事を投稿してる人は
「無償の愛」の如し、の行為だ。(笑)

まあ、私は単に、
有料にしたら、誰も
観てくれないだろうという臆病さから、
無料にしてるだけですが(笑)。

ところで、
日本で、古代や中世に
本を書いていた人は実に不思議だ。
源氏物語や平家物語は、
まだ、印刷機も、印税制度も
ない時代に書かれてますよね。

源氏物語の紫式部は、
なんのためにあんな大作を 
書いたんでしょうか?
印税はない。
書店もない。
出版社もない。
読者は、宮殿の同僚たち。
直接にお金にはならない。
でも、あんな大作を
人は無償の行為で
書けたりするものでしょうか?

一説には、源氏物語は、
宮殿中で人気となり、 
女性たちがこぞって読みたがり、
やがて、天皇や皇后の耳にまで入り、
有名になっていったことが、
紫式部の出世に繋がったとききます。

ところで、
清少納言の『枕草子』も
兼好法師の『徒然草』も、
自分から世の中にただただ、
読んで欲しくて書いていたのか?

読ませてもらう人は
幾ばくかのチップを払っていたのか。
いや、そんなことはないでしょう。

『古今和歌集』は国家から命じられて
官僚が編纂したから、
作る意味は分かるんです。

中世に多い仏教の説話集も、
作られた背景は分かりやすい。
仏教を広め、戒律を守らせるため。

問題は、源氏物語や平家物語だ。
誰か作家がいて、
何か媒体で連載した訳ではない。
紫式部はよほど、周りに
読んで欲しかったんだろうか?

『平家物語』は、きっと、
多くの命を失った平家の
兵士たちへの追悼のため
だったに違いないでしょう。
少なくとも、とっかかりは…。
それが聴く人の心にあまりに刺さるので、
世に広まったのでしょう。

ところで、
現代で、源氏物語や平家物語のように
無償で書かれ続けたた本があります。
(作家の死後に出版社から出ましたが)

それは、橋本治『人工島戦記』です。
膨大なページ数にまずは呆然となります
正直、京極夏彦さんの
数かずの鈍器本をはるかに
凌駕しています。
人工島戦記は、1400ページあります。

しかも、その大半は
ただ、ひたすら密に書かれていました。
橋本治さんは、晩年、
重い病気を患っていて、
治療のためのお金が必要でした。

そこで、社会論、時代論、
日本論、美術論、組織論などが、
様々な出版社らから
新書や単行本として発刊されました。
『負けない力』
『二十世紀』
『宗教なんかこわくない』
『言文一致体の誕生』
『三島由紀夫とはなにものだったのか』
『精読 学問のすゝめ』
『わからないという方法』
『これで古典がよくわかる』
『いとも優雅な意地悪の教本』
『人はなぜ「美しい」がわかるのか』
などなど、常に面白く、刺激的な
本をだしてきた人です。

でも、橋本さんは中年後期からは
病いの連続になります。
治療にかかる費用は大変だったそうです。

それなら、30年近く、
トータル3000枚もの原稿になっていた
『人工島戦記』だって、
適当な枚数で、
何十回にもわけて、
どこかの媒体で、
ときどき発表すれば、
いわゆる不定期連載をすれば
良かったんじゃないのか?
そうしたら、毎回、原稿料がもらえた。
病気でお金に不自由していたなら、
なおさら、その道を選んだら
楽になれたんじゃないか?

と、私みたいな凡人は考えてしまう。
橋本治の支持層を考えるなら、
不定期連載だってできたはず。
それに、実は最初の4〜6回は、
「すばる」で連載されていました。
ただ、その後、ピタリと連載は
やめてしまったんです。

その後、他の仕事とはちがい、
『人工島戦記』だけは
原稿料には替えることはなく、
ただひたすら自分のペースで
自分の好きなように、
遅々としながらも、
原稿を書き続けていったんです。

3000枚ですよ。
部屋の一角にどっさりと
積み上げられていたに違いない。

小説の舞台の島の地図や
人間関係図まで作り込み、
亡くなる前まで書いていたらしい。

これだけは、
お金のためではなかったんですね。
あんなに著書をたくさん出した橋本治が、
唯一、お金のためではなく書いた小説。

よほど深い思いを 
込めていたんでしょうね。

とはいえ、
「私は人工島戦記のために生きた」
なんてロマンチストな事は
決していわない、飄々とした、
クールでシニカルな人です。
ロマンチストな意味を
この『人工島戦記』に込めてたとは
どこにも書き残していない。

でも、原稿3000枚、
1400ページの小説を
人は深い思いなしには
書いたりできるでしょうか?

しかし、飄々たる人生の達人、
橋本治なら、それもできるのか?
おそるべし、橋本治。
私は今、それを買いはしたものの、
まだページを開いたばかりです(汗)。

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