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【お願い】他人に何かを変えて欲しい場合は、ぐっと一個でガマンしよ。

漫画の編集を20数年やりましたが、
一番しんどかったのは、
漫画家さんが描いてきた
ネーム(下書き)を拝見して、
面白いと思う箇所がない時。
たまにですが。

私みたいなポンコツな編集者でも、
出だしやラストくらいは多少、
意見やアイデアを出して、
作品への入りやすさと、
ラストの印象深さを
強調してくださいと言ってました。
でも、基本的に私の目の前に
出されたネームは、
95%は出来上がりに近い。
細かなところをごちゃごちゃ言う
編集者もかなりいるけど、
それの通りにして
漫画家が納得いくか?
読者が満足できるか?

逆に言うと、ネームを
漫画家が描き上げる前に
どれだけ、私のお願いを
漫画家のハートに
刻みこめるかが大事。
一度ラストまで描いたネームは
あまりこねくり回さないのが一番。

でも、ネームを見せて頂いて、
それを多少、変えて欲しい時、
どうしたらいいか?

何ヵ所か気になるポイントが
あったとして、
全部口にしたら
漫画家さんが落ち込むか?
ぶちぎれるか?どっちか。

そんな時は、まず
流れがスムーズだとか、
人物のキャラが面白いとか
色々と褒め称えて、
最後にちょっと一ヶ所だけ…
という感じで、
変えて欲しい場面について
話をします。
あとはぐっとガマン。
これが若い時はできなくて、
喫茶店でよく漫画家さんと
議論や膠着状態になりました。

ぐっとガマンしたぶん、
一番変えて欲しいと願う箇所は
とにかくしっかりと
提案していきました。

ここの場面のこの展開ですが、
こうしたら、更に漫画家さんが
言いたいことを強くアピール
できるんじゃないか?と。

私のためじゃなく、
漫画家さんが訴えたいことを
更に訴えやすくするために。

他人に何かを変えて欲しい
なんて難しい大事業です。
めったに叶うことではありません。

ただ、この世に漫画の編集
という仕事が存在し、
必要なのには訳があります。

時にダイナミックに、
時に優しく物語が展開するには、
作品をメリハリ付ける必要が!

強い場面はより強く、
静かな場面はより静かに、
「立体的」になるように
助言をする人が傍にいる方が
漫画に命が宿りやすいから。

他人に何かを作り変えて欲しいと
お願いするのは本当に至難の業。
お願いするとしても、
極力、数はひとつにガマン。
その方が、聞く側も
きちんと聞き受けやすくなります。

言いたいことを思い浮かぶままに
言ってては、聞く側はプライドも
傷つくし、意固地にもなる…。

相手を思うがゆえのお願いですよ
という本旨は絶対にブレないでいたい。

これは、もしや、夫婦や子育て、
介護福祉、会社の人間関係、
なんでも同じかもですね。

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