【デビュー年】61歳デビューの作家には、遅咲きの強みがある

昨日深夜のバラエティ番組
「激レアさんを連れてきた」では
風変わりな作家が登場しました。

赤松利市。
61歳でデビューした、
元ホームレス生活者。
バブル期には会社経営者でした。
まさに、型破りな破滅型作家です。
福島原発で除染作業もした
赤松利市さんは、
アウトロー作家、
遅れてきた昔カタギの作家です。

61歳頃はホームレスをしながら、
処女作で、作家デビューをして、
62歳で書いた「藻屑蟹」では、
大藪春彦賞に選ばれました。

酒と女と小説に溺れた人生の破滅者。
肩書?プロフィールは、 
それだけで、もうそそられますね。

家庭も仕事もお金も失い、
そんな実体験を作品に吹き込んだ、
ディープな味わいが魅力。

今どきでは珍しいというか、
50年前なら、
流行作家の典型だったでしょうが。
今ではなかなかいない
珍しいタイプの作家です。

私が赤松さんの
「藻屑蟹」や「鯖」を読んだ時は
正直、ちょっとした怖いものみたさが
初めは、ありました。

西村賢太のような劣等感を  
底流に感じつつも、
ただの私小説ではない、
どこかエンタメにもなっているので、
なんだか、キツネにつままれたような
奇妙な感覚を受けました。

アウトロー感、
ハードボイルド感、
破綻者独特の世界観などが
好きな人には、
たまらない小説家です。
 
西村賢太の本みたいに、
ドン底生活に惹かれる私には、
赤松利市にも惹かれそうになり、
これはヤバいと感じ、 
距離をとりました。
アウトローを気どる年ではない、と。

体験?年齢?が半端ないほど、
アウトローなので、
頭で作り上げる他の作家には
どう足掻いても出せない
実体験型の強みが出る作家です。
 
でも、書店にいて買うかどうか
悩んでいる時は、
哀し過ぎたり、残酷過ぎるその世界は、
引きづられたらヤバいな、と
逃げ続けてきました。

もちろん、
新潮社の中瀬ゆかりさんみたいな
傑物編集者や、
アウトロー好きな読者からは
赤松作品は激賞されてきた。

赤松ワールドには、
伊坂幸太郎や
朝井リョウには
どんなに転んでも書けない、
人生の生きづらさが滲み出てます。

いや、小説は元来、 
フィクションだし、
ほら話で良い訳ですから、
想像力で描かれる作品も、
実人生で描かれる作品も、
どちらも優劣はありませんね。
好みの問題です。

大多数の読者からは
赤松利市さんは余りに
暗くてディープで、
敬遠されるかもしれない。
大多数は、伊坂幸太郎や
西加奈子が好みでしょう。
せっかくの読書の時間を
気が滅入る作品で埋められるのか?
好みがわかれますね。

でも、赤松ワールドは、
好みの人には凄くディープに
ハマるでしょう。
一部だけど、深いファンを獲得してる。
何か自分に合う本を探してる、
そんな方々にはおすすめかもしれない。

西村賢太は私小説でしたが、
赤松利市は自分の体験を随所に、
また土台に使い、利用しながらも、
暗くて痛い話をエンタメ作品として
拵えています。

若い作家志望者には
赤松作品は、ピンとは
来づらいかもしれませんが、
こんな
「遅れてやってきたアウトロー」作家は
なかなかいませんね。 
貴重な存在です。

時間がある時には
「藻屑蟹」や「ボダ子」を
読んでみるのも悪くないかもです。
なかなかいない作家です。

西村賢太と対比するようなことを
何度か書きましたが、
赤松利市さんはあくまで、
私小説ではありません。
フィクション作家です。
なのに、読んでいて、 
これは赤松さんの体験なんだろうな、
というオーラが漂うのが
彼の作品の業(ごう)というか、
魅力なんでしょう。
これは、若い時から小説家になりたいと
必死に作家修行してこなかった人の、
強み、魅力でしょう。

20代から作家になりたくて、
小説講座に通ったり、
やたら文学界の話に詳しい人は
どこか業界崩れ的な作風に
なってしまいがちですから。

 

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