見出し画像

文芸編集部を卒業することになり、9年間を振り返りました

春は出会いと別れの季節。
社会人になると、それは人事異動の季節でもあり、サラリーマンである僕も例には漏れません。
 
というわけでご報告です。
2014年から9年間所属した文芸編集部を、卒業いたします!
ぱちぱちぱち……
 
そんなこんなで4月付で人事が出まして、文芸編集部から籍が外れることになりました。
2年前から兼務で担っていたデジタルマーケティングユニット・ユニット長の業務は変わらずで、新しく宣伝プロモーションユニットのユニット長に就任しました。どっちにしろ兼務です。
名刺上では、「デジタルマーケティングユニット・ユニット長 兼 宣伝プロモーションユニット・ユニット長」となり、我ながらカタカナが長いなあ……と感じておりますが、これからはデジタルとリアルの両輪で、本を届けて広げる業務に全力を尽くしてまいります。
 
ただ、変にもったいぶっても仕方ないので先にお伝えしておきますと、これまで同様に本作りは続けるつもりです。
ときどきなら本を作ってもいいよ……と言われているので、ぐっと作る数は減りますが、社内フリーランス編集者として本は作りたいな、と思っています。

 文芸編集部には都合9年間いたわけで、10年近くも編集者をしていたことにびっくりします。
作った本を数えてみたところ、文庫もいれると100冊をこえていました。一冊一冊に思い出が詰まっていますが、たくさんの作家さんと物語作りをさせていただいたんだなあ……ということに、しみじみ感謝の念が沸いています。
 
一方で自分の残したものを振り返った時に、こんな結果を出したんだぞ!という達成感より、もっとうまく本の力を最大化できたはずなのに……という無念さばかりが浮かびます。
 
結局、僕は編集者として何者にもなれなかったなぁと思うのです。
 
物語づくりに加担することは自分の内面をさらけ出すことでもあり、思うような結果を出せなかった時に、大きな精神的なダメージがのしかかります。じゃあ思うような結果とは何なのか? 感動で号泣するような原稿を作家さんと作りあげることなのか、いっぱい書評とかメディアにとりあげられることなのか、なにか賞を取ることなのか、3万部売ることなのか、10万部売ることなのか。
求め始めるときりがなく、その心が満たされることは決してないのだろうなあとわかっていても、もっと広げられたはずなのにという悔しさばかりが常に胸に渦巻いていました。
なににおいても自分の力不足を痛感することばかりで、なんとかそれに抗おうと悩み苦しみましたが、その壁を突破することはできませんでした。
残念ながら僕は編集者としては一流になれる人間ではなくて、ある種の限界を突き付けられ続けたここ数年でした。
 
だから編集者なんてはやくやめてしまえば楽になれるのですが、それでも。
物語が大好きで、物語を作り続けたいと思ってしまうし、作る限りはたくさんの人に読んでほしいのです。
だから、いつまでも編集者でありたいと願ってしまうのです。
 
自分が力不足であるならば、たくさん学んで考えるしかありません。
編集者という視点ではないもっと広い視野と経験を積むことで、足りない能力をなんとかカバーするしかない。
いつまでも、本当の意味で編集者であり続けられるように。
 
そんなことをずっと思い悩み続けていたこともあり、自分自身の選択としていったん編集部からは籍を外し、「本を届けること」に専念する道を選びました。

出版をとりまく環境は加速度的に変わっており、本……とりわけ小説のあり方が問われる時代になっています。
その中でも、人は物語なくしては生きられないし、その原点は小説だと信じています。
本離れと言われ続けていますが、それはわれわれ作り手側の届け方がなにか間違っているような気がしていて、もっと健全かつ正しい方法できちんと届けられれば、すぐに小説の時代が復権するような気がするのです。
 
これからはデジタルとリアルの両輪で「本を届ける」ということを全力で考えて、その答えを見つけたいと思っています。
そして編集者としてもパワーアップを遂げ、これまでお世話になったたくさんの作家さんに恩返しをしつつ、新しい物語を健全に世に広げていきたい。
そうなれるように、がんばります。
 
9年間本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
 
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?