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監査を一年やってみて ―公認会計士試験合格、おめでとうございます!

公認会計士試験に合格された皆さん、合格おめでとうございます!
学生、専念、社会人と立場は様々でしょうが、それぞれの立場で本当に苦労されたことと思います。発表直後は何かとバタバタしますが、一通り落ち着いたらまずは自分の努力を振り返って、ゆっくり休んでください。
私は新卒で経理→専念→R4会計士試験合格後に監査法人という経歴でして、まだ試験合格から1年しか経っていません。経験も浅く偉そうなことはなにも言えないのですが、てりたまさん闘魂さんに合格者向けのメッセージを書きませんかとお声掛けをいただき、折角の機会と思いこの記事を書いた次第です。企画に参加されている方の中では一番皆さんの立場に近いですので、この記事は去年の自分が読んだら役に立つだろうということを書いています。


監査を一年やってみて

公認会計士が活躍する仕事は多岐に渡りますが、一番基本となるのは監査でしょう。唯一の独占業務ですし、高度な専門性が求められ公益性も高く、また試験合格者のほとんどは合格後まず監査法人に入所し、監査に関わることになります。
SNSでは監査はやりがいがない、つまらないといった声も多く見ますがそれは一面であり、監査の仕事自体は素晴らしい面も多いです。上場企業の一つ一つの取引をしっかり見ることもできれば、もっと大局的な、経営陣の会社経営に対する考え方に触れることもできます(これは一年目でも機会があります)。しかもそれを複数の会社で経験できるということで、こんな仕事はなかなかありません。
私の経理時代を振り返っても1年目からこれほどの情報に接する機会は当然なく、こういった経験ができるのとできないのとでは成長速度が全く違います(その分大変でしょうが)。もちろん、会計士試験を突破した高度な知識を持っているという前提付きではあるのですが、かなり恵まれた環境なのは間違いありません。「そんなことわかってる、だから会計士を目指したんだ」という方も多いでしょうが、監査ばかりやっていると案外すぐにこれを忘れてしまい「しんどい、なんで会計士になろうとしたんだ……」と思ってしまうものです。ふとした時に思い返してみてください。
とはいえ人には向き不向きがあり、監査が向いてないという人、どうやってもやりがいを感じられない、つまらないという人もいます。監査のしんどさは、本質的には「経理の方々など、直接接するクライアントの現場の方々とコンフリクトが発生すること」に集約されると思います。経営者としては、特に規模が大きくなればなるほど「不正が行われていないか」「投資家に説明できるような財務諸表になっているか」などのニーズはあり、この点本来クライアントと監査人はwin-winの関係です。ところが現場の方々にしてみればそんなことは関係なく、(言い方は悪いですが)忙しい時期に資料を要求してきて、業務のことをよくわかっていないのに説明の時間を割かされ、時にケチをつけてくる相手という感じになってしまいます。大きな目線では会社、社会から必要とされている存在なのに、普段直接関わる人たちとは利害が対立してしまう、というところが、少なくともスタッフレベルで感じる監査のしんどさの根源でしょう。仕事ができる先輩方はこのあたり相手の性格やスケジュールを上手く気遣いながらコミュニケーションを取っているので、できるだけ真似をするようにしています。

最初の一年を無事乗り切ろう

良い面悪い面がある監査のお仕事ですが、それはそれと監査法人に入所する皆さんはこれからいきなり期末の繁忙期にぶち込まれます。これがなかなか大変で、特に新卒・既卒で社会人経験のない方々にとっては監査自体の厳しさ云々の上に「社会に出てはじめて仕事をする」「しかもいきなり長時間労働」という困難がのしかかってくるわけで、どうしても一定数メンタルを病んでしまう人が出てしまいます。
まず前提として、最初の期末は本当にわけがわからないことだらけのはずです。今自分で振り返ってみてもあの時期にあの状況で、しっかり意味を理解して能率よく仕事をできたわけがないと思います。私自身は一応経理経験があって実務には触れていましたし、業界本や監基報を事前に予習する等はやりましたが、それでも正直期末に自分が何をやっていたのかあまりよくわかっていませんでした。
この理由を細分化してみると、以下のようになると思います。

  • 理論上どういう監査手続が必要で何をすべきという知識があっても、現実の具体的な事例に落とし込めない

  • 法人固有、クライアント固有の事情が多い。しかもこれは1年以上関与している他のメンバーは当然の前提になってしまっているので、気が利く人でないと「新人にはここの前提がわからない」ということがわからないので放置されてしまう(というか先輩たちも忙しいのでそこまで気が回らない)

  • 手続がわかったところで、今度はツールの使い方が分からない

  • その上労働時間は長いので、正常な思考ができなくなる

というわけで、監査法人に入所してすぐの方はほぼ間違いなく上記の困難さにぶち当たることになります。こんなのどう対処すりゃいいんだという話ですが、このあたりの技術的・メンタル的な対処法はララさんのnoteがかなり詳細に言語化してくださっているので、是非入所前に一読されることをお勧めします(特に繁忙期編、メンタル編)。

これは私が先輩から聞いた話の受け売りですが、仮に仕事が全然できなくてダメダメでも一年仕事をやり続ければ監査を一周経験したことになり、途中離脱を挟むのに比べその経験値はかなり大きなものになります。精一杯仕事に取り組もうというマインドは持ちつつ、とにかく最初の一年、特に最初の期末は潰れず無事に乗り切ることが大切です。もしマズいと思ったら頼れそうな同期やマネージャー、パートナーに声を上げましょう。今はどの法人もそういった相談を行うラインがあるはずです。

会計士試験に合格してよかったこと

会計士の素晴らしいところは監査以外にも活躍のフィールドが広い点です。独占業務以外でここまで活躍の幅が広い資格は他にはないのではないでしょうか。監査をどうしても好きになれない、つまらないという方でも資格を取ってしまえば活躍の場は多くあり、またこれからますます広がっていくと思います。
ただし、そういった業務をやるにしてもまずは知識・経験がないと話になりません。私もまだ昨年合格したばかりなのでこの点あまり偉そうなことは言えませんが、一緒に勉強して経験を積み、人生を切り開いていきましょう。

会計士試験に合格してよかったことはもう一つ、友人知人が増えたことです。学生時代はともかく社会人になってからは、特に管理部門で仕事をしていると自分からかなり積極的に動かない限り社内以外の知り合いは増えません(最近はファイナンス交流会などの交流の機会も多くあり、昔ほどのハードルの高さではないでしょうが…)。
この点、会計士はまず監査法人自体の規模が大きい上に、補習所や地域会、(私は関わっていませんが)準会員会の運営委員等々様々なつながりができます。「直接利害が絡むわけではないが話は通じる友人知人」というのがなかなか絶妙で話していて楽しいですし、色んな気づきを得られます。働いてから新しい知り合いがこんなに増えるということはそうそうないことなので本当にありがたい限りで、人生が豊かになっていると感じます。

おわりに

というわけで合格者の皆さん、特にこれから監査法人に入所される方々は合格の喜びに浸るのも束の間、いきなり繁忙期にぶち込まれ、仕事をしながら補習所の課題やら考査やらをこなしつつ1~3年後には修了考査に向けてまた勉強することになり、さらに多くの人は少なくとも数年間の監査法人での激務を経験することになります。しかしそれでもやはり、会計士試験に合格したというのはとても大きなことです。これは合格後にはじめて社会人を経験した人にはあまりピンとこないと思いますが、前職で資格なしで働いていた時と比較すると、会計士試験に合格した上で働くというのは選択肢の数やメンタルの持ち方が全く違います。是非胸を張り、まずは繁忙期と一年目を無事に乗り切り、一緒に業界を盛り上げていきましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました!
本当におめでとうございます。

#公認会計士論文式試験合格おめでとう #公認会計士 #会計士試験

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