見出し画像

監査法人1年目の教科書 -初めての繁忙期を最小限の迷惑&スキルで乗り切る編 上-

この記事は「初めての繁忙期を、先輩にかける迷惑を最小化しつつ乗り切るために必要最低限のスキル」について書いています。ここに書いてあることを押さえればなんとかなる、を目指しました。

監査法人に入社すぐ繁忙期を迎えることは多くの就活生が知っています。思い返すと私も入社まもなくは繁忙期を乗り切れるのか、不安に思っていました。

準備のために本を読んだり、先輩に話を聞く等していましたが、会計士試験後は自己研鑽に身が入らずでした。当時知りたかったことを一言で言ってしまえば「最低限どこを抑えれば良いのか」でした。

そこで、私が思う最低限のスキルを並べてみたいと思います。ただ思ったより長くなりそうですので、3部作になる予定です。まずは何事も敵を知ることからだと思いますので、第一弾は「繁忙期のスケジュール」についてです。

第二弾は「繁忙期を乗り切るマインド」、第三弾は「繫忙期を乗り切るために必要なスキル」の予定です。

書く予定の内容はどれも簡単ですが、この全てができている新人さんは皆無に等しいです。私の知る限り1人のみで、それも人づてで優秀であるとお聞きました。

なお周りと差をつけたい、という方はこちらの記事をご参照ください。監査法人1年目の教科書-差がつく必読書編-|ララ (note.com)

それでは第一弾、早速本文へ

繁忙期のスケジュールを知る

時系列順でまとめてみました。

■4月2週目 資料依頼をする

繁忙期はクライアントに資料依頼をすることから始まります。大規模クライアントだと100個以上の資料を依頼します。資料依頼内容は先輩が取りまとめてくれますが、おそらく送付は新人さんに任されるのではないでしょうか。

■4月3週目 資料が届きだす

メール経由であったり、資料授受専用のサイトを使用したりします。依頼資料の管理は新人が任されるケースが多く、来ていない資料・遅れている資料があれば督促をします。新人が任されますが、非常に重要な仕事です。材料がないと料理はできないのと同じで、資料がなければ監査は進められません。ここで受領漏れがあると後工程に響くため、結構神経を使う仕事です。

■4月3週目~5月上旬 調書作成と上司によるレビュー

ここがスタッフの仕事のメインになります。資料をもらって、その資料について質問する・回答をもらうのやり取りを最低でも2往復くらいし、監査を進めていきます。初めての調書づくりはなかなか大変です。「当期分のこの調書の作ってください」と前期の調書(Excelやwordファイル、時には紙)を渡され、それを参考に当期分を作成していきます。何個くらいかはチームにもよりますが、一つのクライアントで最低でも10ファイルくらいは作成するんじゃないでしょうか?それを2週間でやっていくとなると大変です。補修所の課題研究を2週間で10個やれと言われたらげんなりするでしょう。そのイメージです。本来は前期の調書とは全く別ものとして、1から作成するのがセオリーですが、実際は前期調書の数値や日付、コメントの更新であることが多いです(本当はこれでは不十分なんですけどね…)。作った調書を順次上司によりレビューを受け「ここもっと細かくして」や「ここ更新漏れです」色々コメントもらいます。初めて作ると各調書5~10個くらいはコメントつくんじゃないでしょうか?私が見た中でもっともコメントが多い調書は130個でした(笑)このコメントに応じて修正していきます。この辺りから本格的な残業が始まり、疲れも蓄積していきます。

■5月上旬~中旬 監査チームのパートナーレビュー

監査報告書に名前を載せる人によるレビューです。パートナーが細かい方か大雑把かで。この時期は別世界です。細かい方の場合、正直大変です。パートナーは重要だからこそコメントしているわけで、優先して対応する必要があります。上司によるコメント対応とパートナーからのコメント対応を同時並行して進めます。ここ辺りでははっきり疲れが見えてくる人が多いですね。がっつり太る方、細々となっていく方、顔色が悪い方と「この人限界やん…」と見れば分かります。(笑)

■5月中旬 会社法、審査

ここが監査の山場です。資料をもらって、その資料について質問する・回答をもらうのやり取りを最低でも2往復くらいし、監査を進めていきます。その後社内で審査を受けます。実質この審査で意見を出せるか、出せないかが決まります。監査をしているチームからは独立した立場の人にレビューしてもらいます。ここで終わりかと思いきや、金商法の監査報告書提出に向け監査が続きます。

■5月下旬 会社法、監査報告書意見日

審査が終わると監査報告書をクライアントに予定通り渡せるよう、監査報告書の準備等を進めていきます。結構社内で監査報告書へのサインの手配等面倒です。ゴールデンウイークはありません。私はゴールデンウィークどこも混むし高いしで好きではありませんが、人によっては友人と予定が合わない等悔しい思いをするでしょう。

■6月上旬~中旬 金商法、審査

会社法の監査報告書日が終わってもゆっくりできません。2つ目の山場です。計算書類には記載しないが、有価証券報告書には記載する注記等を中心に監査を進めます。このあたりでもう休みたいよ…と休みのことばかりがよぎります。

■6月中旬 金商法、監査報告書意見日

お疲れ様でした、監査報告書の意見日です。意見を出せば調書をいじることは許されませんので、調書登録手続に移っていきます。

■7月中旬 調書登録&英文財務諸表意見日

金商法の監査報告書を出すと終わりかと思いきや、英文財務諸表監査がある場合があります。とはいえ、そこまで多くの会社がこちらを作成しているわけではありませんが、は海外でも上場している会社や海外投資家向け任意で作成している場合があります。提出している場合、こちらの書類にも手続を実施する必要があります。クライアントが作成していない場合は繁忙期の明けです。すこし仕事のペースを落としながら、監査調書を保存する手続きを進めます。

■7月下旬 第1四半期レビュー

英文財務諸表監査が終わった後、少し休めますが四半期レビューがなんだかんだすぐ始まります。レビューは監査に比べればかなり楽ですが、やはり初めてだと大変です。繁忙期といえるでしょう。

■8月中旬 第1四半期報告書

ここが過ぎると夏休みシーズンです。休暇を取るメンバーが増え、連絡がつかないメンバーが増えます。同期と旅行に行ったり、家族と過ごしたり第二四半期レビューまでゆっくりできます。集中して働く期間が続いた後、一気にオフになると燃え尽き症候群になりやすいですので、たっぷり自分を大事にして甘やかしましょう。

繁忙期をなんとか乗り切るだけでえらいのです。振り返れば多くのミスや、もっとうまくやれたことが頭をよぎるでしょう。反省は向上心ある限り尽きませんが、完璧主義と向上心は異なります。完璧主義は自分を追い込んでしまいます。気持ちは分かりますが、完璧主義に陥らぬよう気をつけましょう。なお、ストレスのかかる繁忙期の中、自分のメンタルを守る方法については、こちらの記事に書いています。
監査法人1年目の教科書 -病まないメンタル編-|ララ (note.com)


最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が皆さんの役に立てば嬉しいです。なお以下の記事が「監査法人1年目の教科書」シリーズすべてを集約したものです。私がこのシリーズを始めたきっかけ、込めた願い等も書いていますのでよかったらどうぞ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?