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中国人の張晧さんが飛騨高山に移住したワケ

2018年11月、極寒を迎えようとする岐阜県高山市に突然、一人の中国人女性が家族で移住してきました。名前は張晧(ChoKou)さん。

その勢いのまま12月には「飛騨高山インキュベーションセンター」にオフィスを構え、訪日中華系観光客をターゲットに観光分野での起業準備を進めています。


日本語堪能で、明るく笑顔が素敵な張さん。しかし、一体全体何者なのか?なぜ高山へ移住したのか?飛騨人の疑問は尽きません。

ということで今回は、張さんへの突撃インタビューを敢行!
「どうして飛騨高山へ移住したの?」そんな素朴な疑問から見えてきたのは張さんの聡明なお人柄と、外国人と共生する飛騨高山の未来像でした。


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「東京ラブストーリー」にハマって、中国から日本へ


丸山:張さんは中国のどの辺りのご出身なのですか?

張さん:中国は吉林省の生まれです。北朝鮮と接する北部の雪国で、冬は-30℃まで下がる極寒の地盆地だから高山と環境が似ていて、採れる山菜もほぼ一緒ですよ(笑)。


丸山:高山の寒さは問題なかったのですね(笑)。張さんが日本に来たきっかけは何だったのですか?

張さん:もともと日本が好きだったの。父親がアパレル関係の仕事で、岐阜を中心によく日本に行っていたから、家には日本の物が溢れていました。日本のドラマが特に好きで、「東京ラブストーリー」にハマったの(笑)

中国の大学を卒業してから、東京の日本語学校に一年半留学しました。その後、日本の大学院でまちづくりや公共スペースの在り方を学んで、卒業後は東京の建築会社に入社します。長年、建築デザインの仕事をしていたけれど、辞めて高山に来ちゃいました(笑)。


丸山:まちづくりや建築を学ばれていたのですね!そんな張さんはなぜ飛騨高山に移住されたのですか?

張さん:日本の田舎に住むことへ憧れがあり、東京で知り合った高山出身の荒川治さんの紹介で、去年の4月に飛騨高山へ遊びに来ました。建築の仕事をしていたので古民家に惹かれたのもあるのですが、山と水も綺麗で、食べ物が美味しいですよね。また高山の方の人情が素敵で、すぐに移住を決意しました。


丸山:すごいスピード感(笑)。移住して3ヶ月、飛騨高山での生活はどうですか?

張さん:良かったことは、タマゴネギお米が美味しいこと(笑)。中華料理はタマゴで炒めることが多くて、ネギもよく使うから嬉しい。それとお米は本当に美味しいね。小学一年生の子どもがいるんだけど、高山に来てからはごはんを必ず3杯おかわりするの!そんなに食べる子じゃなかったのに(笑)。

残念なことは、お店が閉まるのが早いからか、夜は外に出ている人が少なくて寂しいね。それ以上に深刻な問題は、休日に子どもをどこに連れて行けばよいのか分からないの。本当に困っているから誰か教えてほしいな。



訪日観光客へ日本のストーリーを伝えたくて、起業


丸山:「飛騨高山インキュベーションセンター」にはいつから入居されましたか?

張さん:12月10日に入居しました。中華系の訪日観光客をターゲットに、旅行をもっと楽しめるコーディネートができたらと起業しまして、中国語の通訳や地元の方向けに中国語講座を運営しています。

中国語の講座は週に一回、一時間1000円で初回は無料です(笑)。今は観光業の方がメインで受講されていますが、少しでも中国語で接客できたらいいですよね。いろんな方に中国語に触れていただきたいです。


丸山:なるほど。飛騨高山はインバウンド対応に関して先進的なイメージがありますが、実態はどうでしょうか?

張さん:飲食店などでは、英語のメニューはそこそこあるけれども、中国語のメニューはあんまり見ませんね。香港とか台湾の方なら多少は英語が通じますが、中国本土の人たちにはほぼ通じません

たまに中国語に訳した案内文章を見つけた時は嬉しいけれど、だいたい間違っているから気になってるの・・直してあげたい(笑)。



丸山:中国語対応はまだまだなのですね・・。実際に飛騨高山に来られている方の、観光目的に変化はあるのでしょうか?

張さん:初めて日本に来る方は東京や大阪に行くから、飛騨高山に旅行に来る方は旅慣れている方が多いですよ。

少し前は有名観光地を巡ったり、爆買いすることがメインでした。今ではより学びに近い要素や、体験型ツアーを重視する方向へシフトしています。

中国の子どもは自然と触れ合う機会が少ないです。日本に観光に来る層は都会の富裕層が多いから、田んぼを見たことない子がいてもおかしくないくらい。農業体験もウケるんじゃないかな。

しかし当たり前ですが、言葉が通じないと紹介できませんよね。私たちがその役割を担って、日本のストーリーを伝えたい。そんな思いで、いくつか体験型ツアーを企画しています。


「私の子どもは飛騨人になる」 より外国人に優しい飛騨高山を目指して


丸山:日本語が堪能で、日本文化にも興味津々な張さんが、この3ヶ月で一番感動した体験はなんですか?

張さん:それは「でこなる座」です!(即答)
伝統芸能のステージなのですが、演者さんたちの一生懸命取り組む姿に感動して、私は今まで何をやってきたのだろう・・と人生振り返っちゃって(笑)。心打たれて上演中ずっと泣いてたの。

こういう体験が旅行の意義なのかな。強烈な思い出ができると、その街への愛情に繋がるよね。長く滞在してくれたり、また来てくれたり。

高山は有形の文化財産をいくつも所有していて、それは恵まれていること。だからこそプラスアルファで、目に見えないもの人の心を動かす想いがより伝わればよいよね。



丸山:「でこなる座」は流石のチョイスですね。それでは最後に、張さんご自身が飛騨高山で叶えたい夢はなんですか?

張さん:少子高齢化が進む中で、外国人の移住者は日本全国で増えています。いつか高山祭の屋台を曳く中に、外国人が混ざっていたら面白いよね。でも高山の守るべきところは大事にしてほしいとも思う。

私は中国で生まれ育ったから、100%の飛騨人になるのは難しいかもしれない。でも次の世代は・・例えば私の子どもは飛騨人になるよ。そのうち飛騨弁を喋り出すだろうし(笑)。だから今より外国人に優しくて、住み良い街になってほしい。そのために、私にできることがあったらいいな。

今後は地元の企業やお店さんとも連携できたら嬉しいです。外国人への対応で、困っている地元の観光業の方がいらっしゃったらお気軽にご相談ください。地元の方といっぱいお話ししたいんです。お待ちしています!



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正直に申し上げますと、張さんのお話をどこまで引き出せるのか、日本語しか話せない僕はとても不安でした。しかし開始早々に杞憂に終わるほど、張さんの言語能力は段違い(笑)。気さくなお人柄も相まって、とても楽しい時間でした。


人口減少に加えて、労働者不足が深刻化している飛騨高山。
たくさんの訪日外国人観光客を受け入れているのであれば、観光を提供する側でこそネイティブに対応できる方がもっと活躍できるはず。


飛騨に突然現れた張さんは、今はまだ物珍しい存在かもしれません。でもまずは張さん本人に会いに行ってみてください。気づいたら仲良くなっているはず(笑)。


魅力的で聡明な張晧さんの、飛騨での生活は始まったばかり。
一年後はどうなっているのでしょうか?飛騨人が温かく受け入れて、張さんの笑顔がますます増えていることを願うばかりです。

(ライティング・編集:丸山純平)

連絡先:張晧さんに会いたい方は下記から

張晧(ChoKou) / Villas XP 代表
https://www.facebook.com/profile.php?id=100007044451486

営業時間:10:00-17:00 (火曜定休・日曜は予約のみ対応)
住所:岐阜県高山市有楽町45番地 SING 2nd 1F
Mail:naonao821108@villas-jp.com
TEL:0577-70-9039

中国語講座:毎週火曜日13:00-と19:00-の2部構成で開校。参加費1000円、初回は無料。

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