ともだちインタビュー03(後)ちゃけさん:「 物干し竿と、インドと役者」

前編はこちら
大人に抑圧された子供時代から、
無気力で流されがちだったちゃけ。
リーマン・ショックをきっかけに
インドを旅したことで、
自分の人生を自ら動かす面白さに気づく。
「やりたいことなんでもやろう」
そうして渡ったオーストラリアで、事件が起きる

事件

オーストラリア、ゴールドコーストへは、
英語を勉強する為のワーキングホリデーとして渡る。
しかし、その計画は僅か一週間で崩れる事に。

一軒家の一部屋を借りるルームシェアで
現地滞在を始めた、わずか一週間後。
その家主と酒を飲む仲になっていたが、
ふとした事で言い争いになり
結果、激しい暴力沙汰になった。
「自分は手を出さないように抑え込んだりしたが
もみあった挙げ句、激しいのをもらってしまって」
なんとか逃げて救急車を呼んで一命を取り留めたが
頭蓋骨骨折を含む重傷を負った。

「この時は、本当に死ぬかと思った」

当然警察沙汰になり、相手は刑罰。
「国からも見舞金が出て驚いた。」

しかし1週間の入院の後も
後遺症が残り、すぐに帰国できなかった。
「運良く、父親の勧めで保険に入ってて
こういう時は「救援者費用」といって
現地へ迎えに行って看病する家族の費用も出るので」

家族が代わる代わる来豪し、看病してもらう。
「家族のありがたみも感じたんですが
同時に情けなくて。ボロボロ泣きましたね」

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入院時の写真。「腫れがひいた後なんで、見せてよいレベルかと」

こんな顔になるくらいなら

それまで何ヶ月も旅とバイトを
忙しく繰り返してきた
ちゃけは急に異国の地で
安静する事になった数週間。

彼の脳裏に浮かんだのは
「やりたいことをやろう」だった
自分の変形した顔を見ながら
「こんなんなら、役者にでもなっておけば良かった」

既に心は開き、
人生の儚さも実感した彼は迷わなかった。
帰国後「役者になる」と宣言して
養成所に通い始める。

20代後半から急激に忙しくなる彼の人生。
何より語り口に宿る力が
学生時代の時とは比べ物にならない。
この時点でインタビューは3時間を超えていたが、
グイグイと引き込まれていた。

「若い奴らと混ざって一生懸命やるんですけどね」
ここでも彼は挫折を経験する。

「演技が下手というより、発想とか、
何より若者とコミュニケーションがうまく取れない」

物干し竿も金融商品も売り、
外国を渡り歩いた男にしては予想外の事態。
役者キャリアとしては順当とはいかなかったが
もう、ただ腐るような人間ではなかった。

「エキストラをたくさんやりましたね。
交通費くらいしかもらえないけど
演技もできるし、トップ俳優の演技も見られるし」

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右から、キムタク、香里奈、ちゃけ。凄い並びだな!

「所属した養成所も、演技云々より
人としての自分に向き合え、というタイプで
いろんな事を考えさせられました」

惰性とは違う「自分で創る人生」を歩んだ。
努力の果てに2時間ドラマの
ちょい役で出演を果たすが
彼の中で役者の道は限界を感じたのも事実だ。

そんな中、役者と両立する為に、
時間に自由が効いて効率良い仕事を探した。
自分の武器はやはり営業だが
もう物干し竿は売りたくない。

オーストラリアで助けてくれた

保険の存在が頭をよぎった。
何かの時にいかに助けになるか、
また多くの人がいかに
間違った保険に入らされているか
その思いから、
現在まで7年続けてきた保険の営業を始めた。

様々な事がリンクする。
営業の勉強の為に「知識よりはコミュニケーションだ」
とコミュニケーション講座などに通い始める。

もちろん、若者と苦労したあの体験も根源にある。
言葉より、身体の感覚が大事だってのは、
実は役者ともリンクしていて面白かった。」

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殺陣の稽古で怪我した時

家族、そしてコーチング

結果、営業はうまく行き始め
稼げるようになってきた。
そんな中、実家で揉め事が起こる。

オーストラリアで家族への恩も感じていた
ちゃけは実家へ戻る事に。
しかし、結果として
こじれた人間関係に難儀し
自身も辛い精神状態に陥る。

「恥ずかしい話、あれだけ助けてくれた
家族を怒鳴りつけたり」する関係に。

その時人材企業に勤める姉の勧めで
出会ったのが、コーチングだった。
「正直そこまで乗り気じゃなかったけど
姉への義理立てもあり」コーチングを受けてみた。

そのコーチング体験が、
また大きな転機となる。

「衝撃をうけましたね。
結局、自分の考え方や捉え方が
いろんな問題を引き起こしてきた事に気づいた」

自分も他人も
その可能性を信じていなかった。
自分にはできない
あの人にもできない、と思ってた。

心の奥にある価値観や感情を引き出され、
また真剣に自分に向き合ってくれる
コーチの姿に心を打たれ
コーチングに興味を持った。

「自分を信じられない僕の姿を見て、
目の前で泣くんですよね。
こんなにまっすぐ向き合ってくれるんだって」

自分でも、コーチングを学ぶ事に決めた。

学んで、何を得た?

自分の殻を破る心地よさと
結局技術じゃなくて
人とどういう気持で向き合うかだと。

相手に問いかける事は、
自分にも問いかけてる。
自分が挑戦していないのに
相手にそうしろとは言えない。

「結局役者の時に学んだ事と
一緒なんですよね。
自分の中で響いていないのに
相手の心を響かせられない。

これまでのあらゆる経験が
ここで1つの形になった。

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自他の境なく

もちろんまだまだビビる事も、逃げる事もある。
しかし
「今は例えば相談相手が
1兆円稼ぎたいんですって言ってきても、
あなたならできる、と心から信じられるんです」

営業も
旅も
役者も
コーチングも
全て人としての勉強プロセスだ。

これから目指す事は?
「まず自分という人間の根幹を知りたい。
自分の中に、どんな愛があるのか

そしてその先に目指すのは
「宗教的意味ではなくて
 心の持ち方として
 自他の境が無いと思える所までいきたい」

どうこれ?
大学生まで「無気力な物干し竿アルバイト」
だった男が、今こんな事言うのよ?

人間て、人生って面白いね。

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今年2月。僕とコーチングをお互いした後。

あとがき

初の前後編に分けた長い文章を
例え飛ばしながらでも
読んでくださってありがとうございます。
聞いたその時は、長編映画を一本見終えた気持ち。
今は、小説を一本書き終えた気持ち。
でも、全て本当の話。全て、一人の人の話。
人間て面白い。
その一言に尽きる、彼の変遷、体験、思想。

見た目は普通の社会人。
この話を聞かなければ
彼の事をただの保険営業マン
という理解で終わってしまっていた
かもしれない事を考えると、
普段僕たちはたくさんの「面白い人々」
「宝物のような経験」を見過ごして
生きている事に気づく。
人は誰でも素晴らしく、尊い存在だ。NCRW!


普段から悩み相談、コーチング、
最近では上記のようなインタビューも行っています。
興味ある方はぜひこちらから。


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