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売上目標をなくした結果、会社の成長が加速した話

こんにちは!株式会社ニジボックス執行役員の丸山潤です。
実はニジボックスでは、営業、制作メンバー共に個人の売上目標を設定していません。このことを面接でお話しすると「売上目標がないんですか!?」と驚かれることがあります。
そこで今回は、「売上」に対する意識を変えた経緯と、そのことで会社がどのように変わったのかについて詳しくご紹介しようと思います。

もともとは、個人の売上目標が文化だったニジボックス

ニジボックスはリクルートの新規事業実験機関から誕生し、後に分社化しました。
創業当時のニジボックスでは、営業メンバーはもちろんのこと、ディレクターやデザイナー、エンジニアなどの制作メンバーであっても、売上目標を設定することが当たり前になっていました。僕もそういうものなのかなと納得しようとはしていたのですが、心の奥ではどこか違和感がありました。

違和感のあった営業VS制作の構造

どんな違和感があったかというと、営業チームと制作チームが対立せざるを得ない状況になっていたことです。
例えば、期間での売上目標が既に達成できている場合、以降は無理に案件を取ってこなくてもいいはずです。ですが、営業メンバーが個人の売上目標を達成するために、厳しいスケジュールで無理やり案件を受注してしまう状況が頻繁に起こっていたんです。その結果、制作チームはリソースを無理に作って制作にあたることになり疲弊してしまう、という悪循環が起こっていました。
会社全体として目標を達成しているのに、個別の営業目標達成のために組織全体へ大きな負荷がかかってしまう、その状況を問題に感じていました。

目標の指標を「売上」ではなく「品質」へ

そこでニジボックスでは、そのような状況を改善するため、それまで設定していた目標を見直すことにしました。具体的には、営業メンバーの目標を売上ではなく「企画提案の質」とし、新規のクライアントに対して企画提案をした際の受注率アップを目指したのです。それに合わせて制作メンバーの個々の売上目標も廃止し、自分たちが納品した制作物に対する「顧客満足度」の向上を目標としました。もちろん、経営層では引き続き売上目標は持ち続けます。

目標を「品質」に変えて、起こったこと

では、目標を品質に変えたことで何が起こったのでしょうか?
まずは、案件をねじ込むということが起こらなくなったので、制作チームが制作に追われることがなくなり、結果として営業チームVS制作チームという対立がなくなりました。制作プロジェクトだけではなく、営業メンバーにもNPSの調査結果を評価軸に入れたため、提案品質の向上や顧客満足度向上にコミットするようになりました。
さらに、組織間でのハレーションが減っていくことで、従業員の心理的安全性も改善され、結果的に退職率の低下にもつながっていきました。
普通なら、個々の売上目標をなくしてしまうと売上が下がってしまう、と考える人が多いと思います。しかし実際のところは、顧客満足度がアップすることでクライアントからの継続的な受注頻度が高まり、売上が上がりやすい環境になっていったのです。

プロダクト開発にも応用できる、目標の見直し

ここまでお話ししてきたことは、全てニジボックスで実際に起こった話です。ただ、このことは他の企業でも、プロダクトを作る際に当てはまるのではないかと私は考えています。
例えば、新規事業を立ち上げる際に「◯年度までに◯○円の売上を達成しなくてはいけない」という目標を定めていることが多いと思います。ですが、プロダクトマーケットフィット(PMF)できていないのに、最初から売上目標を設定することは危険です。先ほどの話は、この状態と同じだと思うんです。
プロダクトを作る際も、顧客が何を求めているのかを分からない状態で走るのは無理な話で、売上を拡大しようにもできない状態に陥ってしまうと思います。
ゴール設定が明確ではないままに目の前の売上を目指すと、求められていない機能やよく分からないソリューションを、あれもこれもと追加してしまうこともありがちだと思います。そして、気づいたときには「これって、何を解決するサービスだったんだっけ?」と、結果として誰にも使われないプロダクトになってしまいかねませんよね。

プロダクト作りも「売上」より「品質」を第一に

要素の1つです。ですが、誰にでも強いるのは意味がないのではないかと思うのです。
私は、プロダクト開発にとって一番大切なのは顧客やユーザーに対しての品質を担保することだと考えています。そして、売上目標はグロースフェーズの適切なタイミングで戦略的に設定してゆく必要があります。これが逆転してしまい、とにもかくにも売上重視となってしまうと、プロダクトの方向性がいつまでも定まらないし、従業員も目の前の実績にしか目がいかなくなってしまいます。売上目標を掲げたいところをグッと我慢して、質の向上に焦点を合わせる。そうすることで、ユーザー中心のプロダクト開発となっていき、UX改善にもつがっていくはずです。
 
あるUXリサーチに関する調査結果では、企業の約7割が「顧客のニーズの理解を重要視してUX改善に取り組んでいる」という結果が出ています。その一方で「UX改善の実績が上がらない」「UXが改善されてもビジネスインパクトが出ていない」という調査結果も出ています。これらの課題の根本的な要因は、目標の置き方を間違えているからではないかと思うのです。本質的なところがずれてしまうと、UXの改善もうまくいかなくなってしまいます。
UX改善を適切に実施するには、時には目標設定から見直すことも大事なのではないかと、私はニジボックスで実際に起こったことを通して感じています。
一度、目標から売上を思い切って取っ払い、品質向上に努めてみる。そんな取り組みも必要なのではないでしょうか?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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