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「汲む」を読む

NOTE再開。
2024年は「書く練習」がやりたいことの一つ。今年は、自分が感じることを踏み込んで「文章」として記録しようと決めました。これは決して「心地よい暮らし」でも「素敵なあなた」ではなく、時にはヘドロや棘も出ます。自分がその時に感じた何かを言語化するのは、なぜそう思うのか?と自分に問う必要があり、このNOTEのタイトルを "LOOK DEEPER"と名付けました。「書く」という行為が目的なら日記でも事足りるけれど、「練習」は上達が目的なので、「誰か他人が読むかもしれない」という可能性があるNOTEはうってつけの場所だと思っています。気恥ずかしさと不要な自意識は手放して書いていきます。

2023年は、400名以上が応募したアートフェア主催に加えて、別件で文化庁・日本博が主催の芸術祭から声がかかり6月からプロジェクトマネジメントとして参画、まだ続いています。大きな企画を2本も見るというチャレンジングな年でした。芸術祭は、100名以上が関係し、17会場・17件の芸術祭プログラム、さらに70名を超えるアーティストが参加の大所帯です。企画そのものはキュレーターやコーディネイターが担当しますが、私は全体の進行管理はもとより、毎週の定例会ファシリテーション、連携してキャプション1枚から、SNS1投稿からと小から大までのディレクション。「ミクロとマクロ」、「寄りと引き」、「俯瞰と偏狭」と両極を往来しながら先を見て、辞退者続出の広報も兼任。大型バスをチャーターしてのプレスツアーなど壮大な皿回しの芸当でした。途中、ストレス性腸炎で点滴と絶食にも見舞われ。でも、一人でやっているわけではなく、初参加の自分は、特に経験者である非常に優秀な事務局スーパーレディース 2名と、凛として優しい 1名の学生に物凄く助けられました。プロデューサーは全体構想を作りスポンサー獲得に奔走したのは天晴れです。にしても、100名も関わっているのに、私が常に頼ったのはこの3名だけでした。それはなぜか? ある「詩」が気づきを与えてくれたのです。

茨木のり子という詩人をご存知ですか? 谷川俊太郎とはかつて同人誌を作って以来の友情で繋がった人でした。私はどちらも好きで、どちらを先に知ったかは忘れたけれど、心の風景を彼らの詩に助けられています。

その茨木のり子の詩に「汲む」という作品があります。ぜひ全文を読んで欲しいですがここには一部だけ抜粋して紹介します。

『柔らかく
外にむかってひらかれるのこそ難しい
あらゆる仕事
すべてのいい仕事の核には
震える弱いアンテナが隠されている きっと……
わたくしもかつてのあの人と同じぐらいの年になりました
たちかえり
今もときどきその意味を
ひっそり汲むことがあるのです』

詩の解釈は人それぞれなので正解は無いと思いますが、私なりの解釈はこうです ー『傍目には分からない目に見えない事の積み重ねが良い仕事を作り上げる核であり、震える弱いアンテナに大事なメッセージがある』ー

そして、この詩の前段で筆者は、大人になった自分がまだ若い人たちの仕事ぶりを見て、かつての自分もこうだったなぁと回想しています。

芸術祭ではまさに「目に見えない事の積み重ねが仕事の核」と、「小さくて弱いアンテナを軽視しない」を大事にしました。他の人が頼れないということではなく、現実的に小さなことも把握しアンテナを発信している3名から教わることがたくさんあったのです。経験とか、世間が勝手につけるイメージを身に纏ってしまう自分がいるのも事実です。でもカオスの中で初心に立ち返り何とかやってこれたのはこの詩と秀逸なメンバーのおかげです。

画像:麻布台ヒルズで観たオラファー・エリアソンの作品をパシャリ
photo by Junko Sasanuki




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