佐藤ジュンコ

佐藤ジュンコ

マガジン

  • ぱらぱる 2021年12月号「パラレル」

    • 4本

    「パラレル」という言葉から発想されることをテーマにしたマガジンです。

  • ぱらぱる 2021年4月号「雨」

    • 10本

    今月のテーマは「雨」です。

  • ぱらぱる 2021年9月号「自分をたいせつにする時間」

    • 4本
  • ぱらぱる 2021年5月号「しごと(仕事)」

    • 5本

    今月のテーマは「しごと(仕事)」です。

最近の記事

里帰りの記録 2023年6月(3)

福島県立美術館へ。常設展観覧券がベン・シャーン。特集展示「眼にうつる詩ー美術と文学の交差点」最終日でした。ベン・シャーンの作品をたくさん見られてよかった。 福島県立美術館は、私にとっては初恋のひとのような場所でして。どのまちのどんな美術館へ行っても、福島より広いなぁとか、福島より新しいなぁとか、福島より明るいなぁとか、つい福島県立美術館を引き合いに出して考えてしまいそうになる。そして、もしも「好きな画家は誰ですか?」と聞かれたら「ベン・シャーンとアンドリュー・ワイエスです」

    • 里帰りの記録 2023年6月(2)

      父の愛車、青いトラクターでニンニク掘り。のはずが、「なんだかんだで手作業が一番手っ取り早い」という結論に至り、父がスコップで掘り起こし、母と私が土を落としてコンテナに詰め、ひと畝掘るのにどれだけ時間がかかっただろう。耕運機は休憩用のテーブルにぴったりだった。 
実家の「中の間」と呼ばれる部屋には、ダイユーエイト(福島でホームセンターといえばダイユーエイト)で箱買いしたジュースやらお茶やらスポーツドリンクやらが、ごちゃごちゃと積まれている。それらを少しずつ冷蔵庫で冷やしておい

      • 里帰りの記録 2023年6月(1)

        梅の収穫の合間に、リヤカーに積まれた摘みたての梅の実と、剪定して空の青の分量が増した梅の木とを眺めながら食べる、どら焼きとアクエリアスのおいしさよ! 畑へ行く前に久しぶりにお墓参りをして、どら焼きふたつと庭に咲く花とをお供えしてきた。スーパーで一袋数百円で売られているどら焼きじゃないのよ、仙台土産のちょっといいどら焼きよ、生きてる私たちでおいしくいただきましょうよ。そう思わなかったと言えば嘘になる。それでも、久しぶりの墓参りだし、じいちゃんにもばあちゃんにもたまにはおいしい

        • 初午

           2月は猫の月。じゃあ馬の月ってあるのかな?と数日前にインターネットで検索してみたら、馬の月はわからないけれど、初午の日というものがあった。しかも今年は2月10日、もうすぐ。おいなりさんを食べる習慣がある、とある。おいなりさんにかこつけて、お寿司を食べに行こうということになった。  立ち食いカウンターのガラスの向こうに、寿司ネタがずらりと並んでいる。私の席の前には「鯨のさえずり」と書かれたカードと、魚のようなお肉のようなぽってりしたネタが、うたた寝しながらテレビを見るともなく

        里帰りの記録 2023年6月(3)

        マガジン

        • ぱらぱる 2021年12月号「パラレル」
          4本
        • ぱらぱる 2021年4月号「雨」
          10本
        • ぱらぱる 2021年9月号「自分をたいせつにする時間」
          4本
        • ぱらぱる 2021年5月号「しごと(仕事)」
          5本

        記事

          あめあめ(やさしく)ふれ(やさしく)ふれ

           暖かくなって、雨の降り始めにアスファルトの匂いがするようになった。私はこの温かくて冷たくて乾いて湿った匂いが好きだ。夏の帰り道の匂い。ぽつ、ぽつ、ぽつ、始まりの雨音も好き。やわらかいやさしい雨、植物たちが潤ってよろこぶくらいの雨が好き。それより強いと、すこしこわい。  生まれて育った家は築100年以上の古い木造校舎のような建物で、雨音がすさまじかった。生命の危機を感じるくらいの轟音。テレビをつけても聞こえない。会話もできない。眠るときはどうしていたのだろう。大雨のたびに眠

          あめあめ(やさしく)ふれ(やさしく)ふれ