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2022年1月に読んだ本 書評

2022年1月に読んだ本をまとめました。
基本、人気作家さん、話題の本を中心に読んでいます。

今回から私の満足度、おススメ度で★をつけています。

★★★★★ とても良かった!!人に薦めたい!これを読まないなんて、人生損している!

★★★★  とても良かった!充実した時間をありがとう。是非、読んでみてください!!

★★★   読んで良かった。面白かったです。読んで損はない!

★★    少し難しかったかな?あなたの意見を聞かせてください。

★     う~ん、今の私には難解だった。また、再挑戦します。

あくまで私の基準です。本選びの参考になればうれしいです。

ナナメの夕暮れ 若林 正恭 

★★★★★

漫才コンビ・オードリーの若林さんの2冊目のエッセイ。読書家の若林さんがダ・ヴィンチでの連載に17,000字の書き下しを加えています。

エッセイの中で、自身の内向的な性格や生きづらさを抱えている悩みを告白。
生きづらさを抱えている人も多い社会で、彼の悩みは多くの人が共感できるもの。彼が歩んだ人生の中で出した様々な答えは説得力があり、楽しく生きるヒントが隠されています。

年齢を重ねて若い頃と心身共に変わったところや、「おじさん」になったことによって起こった悲喜こもごもなエピソードが盛りだくさん。芸人らしい観察眼とユニークな視点は人生の面白さと、ちょっとのほろ苦さを味わえる。

読みやすく、謙虚な人柄がにじみ出る文章はあたたかく、「同じ悩みを抱える人にぜひ読んで欲しい」とのメッセージが添えられている。

もう少し詳しい本の紹介、感想はコチラ👇

わたしの美しい庭 凪良 ゆう 

★★★★★

BL小説作家出身で、本屋大賞受賞作家という経歴を持つ凪良ゆう。10年以上も心の機微を描き続けてきた著者ならではの繊細な人たちの癒しの物語。

血のつながらない父・統理と暮らしている百音、別れた妻と再婚相手の間にできた百音を引き取った統理、そしてゲイであることを公言している路有。世間から見れば普通とはちょっと違うところがある彼らは噂の的になりやすい。無自覚な言葉の暴力を受けた時、人はどうやってその傷を癒せばいいのだろうか…。

社会のルールや幸せの形は人それぞれですが、心のわだかまりや傷を癒し、自分に合った幸せの形を見つけることはなかなか難しいもの。でも、徐々に氷が解けていくように、生きづらかった日常がゆっくりと違った風景に変化する。

生きづらい世の中での不安や、心の触れ合いによって揺れ動く感情が繊細な描写で綴られていて心に響きます。さまざまな悩みを抱えた人たちが自分の生き方を見つけ出す、あたたかい再生の物語。

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モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語 内田 洋子

★★★★★

著者が日本人初のイタリアの金の籠賞を受賞した作品。イタリアの書店の歴史、本の歴史を紐解くノンフィクション。
ページをパラパラとめくると、美しいイタリアの風景や中世のような街並み、またモンテレッジォの村の人々の表情がカラー写真で数多く載っている。お洒落な写真集のように読んだり、イタリアを旅している紀行文として楽しむこともできる本です。

水の都として有名なイタリア、ヴェネツィアの路地の奥にヴェネツィアに関する本や美術の本だけを取り扱う古書店があった。偶然見つけたその本屋の店主・アルベルトはこちらの要望に合った本を豊富な種類の中から探し出してくれることで信頼があり、常連客も多い。そのアルベルトの出身地モンテレッジォの村では昔、本の行商が行われ、本の原点と言われているようだ。そのこと知った私は興味を惹かれ、その村を訪れることにした…

本屋大賞の由来、本がどのように変化し大衆に広まったか、書店の起源、本の行商人が歩んだ苦難な道など、イタリアの歴史と共に知ることが出来て面白い。
本の行商人がいなければ本の発展はもっと遅れていたかもしれない。「知識は財産である」という名言と共に、本の発展に大きな影響を及ぼした行商人が活躍する本当にあった物語です。

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黒牢城 米澤 穂信

★★★★★

ミステリー作家、米澤穂信の直木賞受賞作品。各ミステリー賞でも6冠を達成しています。

荒木村重が籠城する有岡城内で人質、自念が死んだ。自決かと思われたその死体にはなんと矢傷があり、その部屋は密室状態だった。村重の家臣たちの動揺を鎮めようと、その時に自念の部屋を見張っていた家臣から証言を取るも誰も犯行を行うことは不可能だと思われた。行き詰った村重は地下の牢に閉じ込めた黒田官兵衛の知恵を借りようとするのだが…

この物語は、織田信長に反旗を翻した村重が籠城した有岡城内で起こったミステリーを描いている。科学的な解決法は皆無なこの時代、探偵小説さながらに官兵衛、村重の冴えわたる推理が展開されます。

また、籠城の緊迫感のなか起こる事件は、人々の心に疑心暗鬼を植え付け、さらに次の事件の引き金に。追い詰められていく有岡城と村重、そして家臣たちとの関係の変化などが複雑に絡み合い、衝撃の結末へ向かって物語が動いていく。

ミステリの精髄と歴史小説の王道、歴史ミステリーの面白さを詰め込んだ一冊。

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年末年始に読んだ本

八甲田山死の彷徨 新田 次郎

★★★★★

山岳小説の分野を拓いた新田次郎の代表作で、実際に起こった世界最大級の雪山遭難事件をもとに描かれている。1977年に映画化もされた。

明治35年、日本陸軍の二聯隊が八甲田山で雪中行軍の演習を行うことになった。冬の八甲田山に入る危険性を理解していた徳島大尉は、雪中行軍の経験がない神田大尉に助言をし、お互いの隊の無事と成功を誓うが…

小説を読んだことがない人でも話は知っているという人も多いこの物語。雪山踏破の冒険心が搔き立てられ、人間ドラマもしっかり描かれていて読み応え十分。そして何よりも軍隊の特殊な組織ならではの悲劇、自然を甘く見た人間の愚かさなど教訓となる点が数多くある。特に成功と失敗を分けた2つの聯隊の対比がはっきり描かれており、組織やリーダーシップの重要性を説くためのビジネス書としての位置づけもある。ぜひ、読んでおきたい社会人の必読書。

花鳥の夢 山本 兼一

★★★★★

『芥川龍之介の「地獄変」の主人公でもある絵物師・良秀が、地獄絵図を描くために己の娘を見殺しにした如く、絵師も、物書きも、無から形のあるものを生み出すものはみな、時に死すらも冷徹に観察せずにはおられぬ、罪深い存在である。』(解説:澤田瞳子より)

今なお語り継がれる織田信長も豊臣秀吉も惚れこんだ日本美術史上最高の天才絵師・狩野永徳の生涯を描いている。永徳の代表作である、「洛中洛外図屏風」や「唐獅子図屏風」の作品も登場し、その描かれた経緯や、永遠のライバル長谷川等伯との対決も面白い。

天才ゆえの苦悩や、絵を描くことの喜び、ライバル長谷川等伯へ嫉妬する様子は一人の人間として親近感がわくが、絵を描き始めるとまさに命を削っている姿が脳裏に浮かぶ、その文章が秀逸。

織田信長、豊臣秀吉、黒田官兵衛、千利休など広く知られている人物像とちょっと雰囲気が違うのは永徳からの目線で描かれているためなのか。そこは歴史小説の面白さの一つでもあると思う。



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