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サヨナラ八月と消えたシアターの記憶

8月の風を両手で抱きしめたかったじゅんぷうです。サヴァンナへ飛び立つ日がくるかもって思ってたのに。

早いもので8月も終わり。
夏はもう終わりです。

20年ほど前、浅草六区には
かつて興行の聖地だった時代の名残のように
東映、東宝の封切館と、3軒の名画座、
あとはオトナの映画館がありました。

今やレトロや下町ブランドを求めに
観光客も押し寄せるけど
あの時代の浅草はうらぶれた、
ちょっとディープな街だったと思う。

映画館もシネコンというものができ始めたころで、
人々にすっかり忘れられたような浅草の
東映、東宝は新作がかかっても席は埋まらず
東宝は企画上映で映画ファンを呼んでいました。

そして今は1館もありません。
ホテルや商業施設になったり
パチスロを経てスーパーになったり…
オトナの映画館が最後まで残って
うちの子どもたちもピンク色の文字を
おおきなこえで読もうとしていた思い出。
よかった、初めて覚えた漢字が
団地妻とかじゃなくて。

消えたシアターのひとつ、浅草名画座は
映画館の前に貼られているポスターに
妙にそそる紹介文が添えられていました。
それが任侠ものとかやくざものの
泥臭いテイストの映画であればあるほど
もの凄いシナジーが発揮されて
浅草名画座…浅名アニキの書く紹介文を
楽しみにしていたものです。

今どこでどうしてるのかな、アニキ…。

そんな浅草名画座で
毎年8月に上映されていたのが
『皇帝のいない八月』

皇帝のいない八月
1978松竹|監督:山本薩夫
クーデター計画「皇帝のいない八月」を企てた自衛隊員たちがブルートレイン「さくら」号をジャックして東京を目指す※当時ブルートレイン(寝台特急)が大ブーム

U-NEXTのサムネイルより

ストーリーは面白いのですが
何しろ当時、
国鉄の撮影協力が得られなかったとあって
(『新幹線大爆破』のあとだから、
おいまた爆破かよって感じでしょうね)
列車や特撮のシーンがまあチープ。
それにラストがラストだけに
鉄道ファンをも絶望させたに違いありません。

だけど『新幹線大爆破』でテロリストだった山本圭など
キャスティングはかなりくすぐりが効いてます。
圭さんは薩夫監督の甥ですしね。
何と言っても主人公の元自衛官を演じる
渡瀬恒彦の狂気だけで見る価値あり。

妻が吉永小百合(なれそめ考えると理解できない夫婦)で
「さくら」号の中で再会するシーンがとくに、
あんなに屈託ない狂気ってあるんだと震えます。
久しぶりにお酒片手に見るのもいいかも。

渡瀬恒彦はそれまで東映のやくざ映画で
鉄砲玉だったり殺人鬼だったりしましたが
松竹作品に出るようになったのが
おそらく俳優としての転機。

大原麗子と離婚した年なんですよね、1978。
離婚してかなり時がたってから
『十津川警部』で元夫婦が共演したのが
大原麗子の遺作だったことを想い出したところで
8月の締めくくりとさせていただきます。

冒頭はプリプリでしたが
吉川晃司「サヨナラは八月のララバイ」
脳内再生しながら…

悲しいけれど夏のまま生きてはいけないのさ

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