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「ARTS SEED OKITAMA 2016 文化の種をまく。育てる。ひきつぐ」③

*ARTS SEED OKITAMA 2016 の開催に合わせ、地元のミニコミ「まどあかり」に寄稿したものです。以下、本文です。

 前号に、作家や会場のことを少し書いた。正直に言うと置賜にはそう多くの作家や会場はないように思う。もちろん魅力的な人や場所はある。だが、欲を言えば、もっとほしい。

 想像してほしい。休みの日、ぶらっと確認もせず行っても、何かしら楽しい展示をやっている、作家にもあえるかもしれない、そういう場所がもう少し、この地域にあってもよいように思う。いや、よいというよりほしい。
 いわゆる、企画ギャラリーだ。実のところ、ARTS SEED 2016の会場に企画ギャラリーはひとつもなかった。貸しギャラリーやカフェの展示スペースをお借りしたケースが多かった。もちろん、ありがたいことだし、これからはギャラリーでする展示が全てというわけではないとは思う。

 昨今、マルシェが大流行だ。少しマンネリ化して下火なのかもしれないが、県内では消えては増えしているように見える。作家側からするとマルシェは少ない経費で多くのお客様に見てもらえるチャンスだ。運営側から見ると経費をかけずに多くのコンテンツを集められる。お客様も楽しい。ハレの日だ。地域おこしのイベントにも最適ではないか。
 かたや、ギャラリーでの展示はどうかというと、作家にしてみると自分だけの空間をつくれるが、準備は大変だ。ギャラリーだって場所を維持するには多くの経費がかかるし、お客様をよぶのだって大変だ。基本的にはその展示に興味がある人以外こないだろう。そこがマルシェとは大きく違う。だが、その大変さにもまして、作家にとって自分の作品をきちんとした空間で見てもらえるのは代えがたいことだと思う。お客様にとってギャラリーはハレの日であり、非日常でなければならないが、作家にとっては日常であり仕事場だ。単発のイベントでは困るのだ。

 マルシェのよさは参加の手軽さ。ギャラリーのよさは作品の良さをより伝えられることだろうか。どちらがよいか、ということを言いたいのではない。それは、作家がそのつど選べばよいだろうと思う。問題は選べるギャラリーが少ないことだ。マルシェだけでは作品の発表の場が十分とは言えないのだ。

 今はネット販売だってあるだろう。そういう人もいるかもしれない。僕もそう思う。だが、考えても見てほしい。既製品、プロダクト製品ではないのだ。どれを買っても基本的には同じもの。こと日本においては商品によって誤差があるなんてことは許されないだろう。そういうものはネットで買っても問題はない。スペックがわかればことたりるだろう。
 しかし、作家の作品は同じようにいくだろうか。一点一点違う、もしかするとすべて一点ものということもある。そして、何より作品の向こうには作家がいる。作家は生身の人間であり、そこから生まれた作品は、やはり生身で感じてはじめてわかることもあるではないだろうか。身体性はめんどくさい。いやだからこそ、面白い。そういう性質のものだと思う。ネットで翌日配達、では面白くない。

 毎回繰り返しになるが、ARTS SEEDという企画は、企画それ自体が成功することが目標ではない。自分たちにとってよりよい文化、地域にすることが目標だ。ARTS SEEDはそのための手段の一つに過ぎない。作家にしてみれば、それぞれ事情はちがうだろうが、短期的には目の前の展示が成功させることであるだろうし、中期的にはより安定的な活動やステップを一つずつ上ることであろう、そして長期的にはその地域になにがしか還元できることだろうと思う。むしろ、その地域に何の影響も及ぼさず、また短期的な収益だけに終始するのであれば作家として成功したとは言えないだろうと思う。

 長い目で見たら、企画ギャラリーが置賜にももういくつかあるのが望ましい。ARTS SEEDを通じて作れないかとも思う。でもまずは、そのまえに多くの準備が必要だろう。そういうことで、勉強会を企画することにした。毎月8日(ふきん)にMIYAUCHI2632を会場にアート関連の話ができる空間を準備することにした。参加は作家に限らずアートに興味がはある人であればどなたでも大歓迎だ。むしろ、そういう人に参加していただきたい。文化は作家だけが作るものではないからだ。(2016年9月吉日)

(まどあかり 2016秋号 掲載)

BeHereNow企画 代表 菊地純

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