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「ARTS SEED OKITAMA 2016 」(米沢芸術文化協会 会報寄稿)

*ARTS SEED OKITAMA 2016 の開催に合わせ、「米沢芸術文化協会 会報」に寄稿したものです。以下、本文です。


 「ARTS SEED OKITAMA 2016」は、2016年7月15日~26日の11日間、置賜地方を中心に各所での個展や企画展を一枚のマップにまとめたものです。展示会場と飲食店や博物館からの協賛を合わせ22か所で開催しました。

 2011年の震災後から年二回のペースで、チャリティーを目的としたグループ展「BeHereNow」を開催してきました。参加作家は延べ120人を超え、毎回多くのご来場を頂きました。この場を借りて改めて感謝いたします。昨年5年10回目の節目を迎え、2016年からは「BeHereNow企画」とし任意団体にしました。
 グループ展は個人的に「この指止まれ」で行ってきましたが、正式に団体とすることでより多くの方々と、点から線、面へと広がりを持つことができるのではないかと考えています。グループ展は一か所の会場に十数名の作家の作品を展示した「点」です。ARTS SEEDは展示会場を置賜各地に「点」在させ、それを結びアートの「面(マップ)」を作ろうという試みです。いわば点はSEED(種)です。あちこちで種が芽を出し花を咲かせ、実を結ぶイメージでしょうか。

 置賜での活動を思うとき、文化的に決して芳しい状態とは思えず、年々歳々ただ疲弊していくのではと感じています。
 しかし、文化的によくない、逆境は、時として作家にとっては悪くないのかもしれません。

 ここ最近ではマルシェが毎月、毎週のようにどこかで開催されています。マルシェにはマルシェの良さがあるかと思いますが、個展やグループ展とはやはり違うと思うのです。

 プロかアマかということと、作品が良いか悪いか、ということは別な話です。ただ、作品の価格が「材料費」だけ、もしかするとそれ以上に安い、というのやはり趣味だろうと思います。趣味で作って売って楽しむのも文化的だと思います。しかし、まずい点もあるのです。

 一般的にギャラリーやお店で、作品を販売してもらうとき、販売手数料を支払います。手数料はお店の儲けです。ですから作家は作品の価格を決めるとき、自分の取り分と材料費と販売手数料のことを考えます。

 ここで「だから手数料の掛からない(少ない)マルシェに出すんだ」という方はあまりプロには向かないかも知れません。だって置賜にもっともっと素敵なお店、場所が沢山あったほうが楽しくはないですか?
 プロの定義は色々あると思いますが、一つはマーケットに対し責任に持ち、育むことに、少なくとも意識的である人ではないかと思います。

 また、ここで「だから趣味の人と一緒にやるのは(価格で勝てないから)嫌だ。マルシェも嫌い」というのもプロらしからぬと思います。マルシェにはマルシェの良さがあります。
 そして、展示会には展示会の良さがあります。個展は一人の作家の作品をじっくり見るという贅沢がありますが、そのぶん開催するコストも高くつきます。
 しかし高いハードルは作家にとって悪いことだけではないでしょう。価格競争ではなく、価格以外の価値をきちんと作品に反映すればよいだけではないでしょうか。

 マルシェと展示会どっちの形式が良いとか悪いとかという話ではありません。それぞれです。ですが、マルシェばかりが多く、展示会が少ない、というのは置賜の芸術文化にとっては問題かもしれません。
 そこに問題を感じ、とても面倒な道を選んできました。
 しかしそれは、作家としての活動は、その地域の未来にも責任があると考えるからです。今日の作品、明日の売り上げ、来月の個展、といった目の前のことももちろん大事です。でも、それだけでは置賜に限らず地方の未来は暗いように思います。

 ですから、ARTS SEED OKITAMAという企画をすることにしました。文化は遅くて速いのではないかと信じています。その信じることができるということが、作家の強みの一つかも知れません。しかし、これは作家だけではどうしようもなく、見てくれる人、応援してくれる人、そして買ってくれる人がいて、初めて文化が育まれると、やはり信じています。

 ARTS SEED OKITAMA 2016はお蔭様で各会場、多くのご来場を頂き無事終えることができました。来年の2017も準備中です。
 また多くの縁が織り重なって、ARTS MEET OKITAMA 2017(2017年3月18日~26日、よねざわ市民ギャラリー)にも関わらせて頂きました。横の糸と縦の糸のようになればと思っています。

 最後になりますが、ARTS SEEDでは各展示の売上から一割(作家と会場から)をBeHereNow企画に寄付して頂いています。それを財源に次年度の企画や、県外の(できれば宮城、福島の)作家の招聘に充てたいと考えています。
 来年もどこかの会場でお会いできることを楽しみにしております。応援よろしくお願いいたします。(2016年師走)

(米沢芸術文化協会 会報寄稿)
BeHereNow企画 代表 菊地純

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