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「ARTS SEED OKITAMA 2016 文化の種をまく。育てる。ひきつぐ」

*ARTS SEED OKITAMA 2016 の開催に合わせ、地元のミニコミ「まどあかり」に寄稿したものです。以下、本文です。

「ARTS SEED OKITAMA 2016」(※以下、ASO)は、今年7月15日~26日の12日間、山形県置賜地方を中心に、各所でそれぞれ開催される個展や企画展を一枚のマップにまとめたものです。展示会場が16、飲食店や博物館からの協賛参加が6、合わせて22か所で予定しています。

 美術、工芸、アート、そういったものが好きな人は、この期間に置賜を訪れてもらうと、すごく楽しいよ、という企画。
 作家にとっては、どうせ個展やるならこの期間に置賜でやったほうが広報的にも集客的にも、きっと売上的にもいい、という打算的な企画です。

 文化、芸術などを趣味とする人は、だいたい人口の1%に満たないらしい。らしいというのは、そもそも古い統計なうえに出典もさだかではないからだ。数値はだいたいどの年代に置いても変わらない、と書いてあったように思う。また、この文化、芸術とは鑑賞、制作、購入などということがらや、また絵画、演劇、書道、お茶、踊りなどとジャンルも多岐に渡ったざっくりしたものだったと思う。

 さて、そのいい加減な情報をもとに、風呂敷をひろげてみよう。置賜地方はざっくり20万人ちょっと、そこに山形市などの近隣市町村、おまけに期待をこめて近県からの来客もいれ、30万~50万人が対象だとする。30万人の1%が仮に文化、芸術に興味をもっているとすると、約3,000人。また、そのうちで鑑賞、購入を趣味とし、特にアート、工芸系が好きだとなると、もっと少なくなるはずなので、ざくっと1,000人。
 今回、ASOのチラシは10,000枚刷ったので、この10分の一枚が届けばよいことになる。ただ、これまで色々企画してきたが、チラシのヒット率が1割というのはちょっと希望的かもしれない。

 もちろん、広報は紙媒体だけではなくSNSや、新聞( 『山形新聞 』 の「ヤマガタ 青春群像 」でとりあげて いただ きました )、テレビ、ミニコミ誌などのメディア、そして強力な口コミなどもあるので、実際はもっと期待はできるのではないかと思う。
 1,000という数字は、イベントとしては大した数字ではないと思う。むしろ大風呂敷を広げた割にはしょぼい。
 しかし、一つの個展に1,000人が訪れてくれたとしたら、地方都市では結構大成功だと思うのですが、どうでしょうか。 もちろん、マップにある会場に全ての人が全て回るわけないでしょうから、一つひとつの展示会の来場者数はもっと少ないでしょう。それでも、個別に単独で行うよりはずっと来場者が見込めるのではないかと、皮算用をするわけです。

 「アート」って何か。ファインアート、ネイルアート、美術、芸術、ARTとアートのちがいは? あとアーティストいうのもよくわからない。ひとによって思い浮かべるのも、感動するのも、捉え方は色々だと思うし、色々なことはよいことではないか。誰かが「これはアート、こっちはアートじゃない」なんてことはつまらないように思う。
 でも、そこであえて僕が思うアートはなにかと問えば、「これまでとは(同じものなのに)違う新しい価値観を与えてくれるもの」もしくは、「当たり前だと思っていたものを塗り替えるようなもの」かもしれません。ジャンルや作者の意図とも関係なく。「アートは問題提起であり、デザインは答えだ」何て言うのももしっくり来る気がします。

 「文化」って何か。歴史文化、食文化、おたく文化、これもきっと沢山ある。人の営みの数ほど。いつぞや、「文化は図書館や博物館にあるもの」という答えを聞いて、ぽかんとしたことがある。それもあると思う。でも、文化は過去のものだけではなく、自分たちで育てていけるものだと思うし、そうありたい。ひきうけたり、育てたり、ひきついだり。

 よく例えで、「冬にスーパーでパイナップルを買うのは食文化ではないでしょうか」と話す。これはこれでぽかんとされたりする。雪の降る中、遠くの南国の果物を食すのであるから、それなりのコストがかかっているはずである。その、何かにコスト(時間であったり、金銭であったり)をかけるという行為がひとつ文化を作るのではないか、と思うからだ。郷土料理や在来作物だけが食文化だと思っていると見誤るのではないかな、と。
 そう、綺麗で崇高なものだけが文化ではないはずだ。3,000円のコンサートのチケットはなかなか売れなくとも、平日の昼間からパチンコ屋さんの駐車場はいっぱいではないか。やっぱりよく解り難いかもしれない。そのへんの話しは受け売りなので、平田オリザ著「芸術立国論」をお読み頂くのが間違いないと思う。

 一年にワンシーズン、7月の後半あたり、梅雨があけたかどうか、ちょっと蒸すような本格的な夏が来る前、夏休みもはじまり、うきうきしだす季節、置賜のあちこちで展示会が行われる。どんなに雨脚が強くとも、その個展の会場内には作家が丹精込めて作ったであろう作品がならび、小さな宇宙を作っている。だから、ASOは宇宙をめぐる旅なのだ。そういった文化はどうだろうか。僕たちと一緒に宇宙をめぐりませんか?

 そして、各会場の売上の一割を作家や会場などから寄付して頂き、来年へと積み立て、主に近県の作家の招聘(お招きする)のために使いたいと思っています。新しい交流が、新しい種を置賜に運んで来てくれるのではないでしょうか。
 それは、文化の種をまき、育て、ひきつぐこと。
 僕も、参加した作家も、そして何より巡ってくれた皆さんが、楽しんでくれることが、新しい次の文化をつくっていくと思うのです。(2016年5月吉日)

BeHereNow企画 代表 菊地純

( まどあかり 2016夏号 寄稿)


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