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【16.水曜映画れびゅ~】"Nomadland"~リアルを超えたドラマがそこにあった~

先週金曜日ついに日本公開された"Nomadland"ノマドランド

ベネチア国際映画祭金獅子賞、ゴールデングローブ賞作品賞(ドラマ部門)など数々の賞を受賞している話題作で、4月26日(日本時間)に行われる米アカデミー賞でも作品賞最有力と評されています。

あらすじ

ネバダ州の企業城下町で暮らす60代の女性ファーンは、リーマンショックによる企業倒産の影響で、長年住み慣れた家を失ってしまう。キャンピングカーに全てを詰め込んだ彼女は、“現代のノマド(遊牧民)”として、過酷な季節労働の現場を渡り歩きながら車上生活を送ることに。毎日を懸命に乗り越えながら、行く先々で出会うノマドたちと心の交流を重ね、誇りを持って自由を生きる彼女の旅は続いていく。

(映画.comより一部抜粋)

本作の原作は、アメリカのジャーナリスト ジェシカ・ブルーダーによるノンフィクション本『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』です。

映画に登場するノマドたち

この映画の特色は、何といってもキャスト。

主演のフランシス・マクドーマンド以外の主要な登場人物のほとんどが本当の”ノマド”(車上生活者)の方々で、本人役として映画に出られています。

ただ本人"役"といっても「その役を演じている」という表現は当てはまらないと思います。

映画で描かれているのは純粋なノマドの生活ノマド達との交流ですが、それは決して作られたものではありません。

事実、実際に映画に出演したノマドの方は「映画の私は99%いつもの私。ただ、映画のために1%は演技した」と語っていました。

ちなみに映画に出演したノマドは、原作のノンフィクション本でも密着されていた方々です。

リアルを超えたドラマ

そのような異色の方式で撮られた『ノマドランド』。

そこで語られるノマドの方々の経験は嘘偽りなく、心に深く染みわたりました。

その一方でドキュメンタリーというわけでもなく、映画としてのドラマ性もあります。

そんなドキュメンタリーでもモキュメンタリ―でもないのだけれども、すごくリアルでドラマ性がある、なんというか「リアルを超えたドラマ」がこの映画にはありました。

…いや、もしかしたら「リアルを超えたドラマ」なんてカッコつけた言葉なんかではこの映画を表しきれないのかもしれません。

筋書きなど存在せず、何がリアルであるとか何がドラマであるとか関係のない、ただ純正じゅんせいなノマドの生活を私たちは『ノマドランド』を通じて目にしただけかもしれません。

フランシス・マクドーマンド

今回主演を務めたフランシス・マクドーマンド
『ファーゴ』(1996)、『スリービルボード』(2017)ですでに2度オスカー主演女優賞を受賞している名優です。

本作でマクドーマンが扮したファーンは、彼女自身の生き写しとしての部分も多くあると本人は語っています。

それゆえなのか、他のノマドの方たち同様マクドーマンも”演じている”感じが全くありません。

本当にドキュメンタリーを観ているような気分となり、「本当に実在しているファーンというノマドがたまたまマクドーマンっぽい人だった」という表現が個人的にしっくりきます(笑)

ちなみに本作の製作は、もともとマクドーマンが原作の本に感銘を受けて自ら企画したのが始まり。それゆえアカデミー賞では主演女優賞に加えて、プロデューサーとして作品賞にもノミネートされています。

マクドーマンといえば、2018年のアカデミー賞で主演女優賞を受賞した時のスピーチ。

#MeToo運動やTime ’s Up運動で女性の権利に関してより一層を注目を集めていた時期に全カテゴリーの女性ノミニーとともに強いメッセージを発信しました。

主演女優賞ないし作品賞で再びオスカーの壇上に上がると思われるマクドーマン。

コロナ禍で混迷を極めたこの1年に彼女が何を語るか、注目したいです。

クロエ・ジャオ

また監督を務めたクロエ・ジャオがノミネートされている監督賞にも注目。

すでにゴールデングローブ賞監督賞を受賞しており、文句なしの最有力候補です。

もし受賞となれば『ハート・ロッカー』 (2008)でキャスリン・ビグローが受賞した以来12年ぶり史上2人目の女性監督へのオスカーとなります。


前回記事と、次回記事

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次回の記事では、デヴィッド・フィンチャー監督最新作にして、今年度アカデミー賞最多ノミネート作品”Mank”Mank/マンク(2020)について語っています。