見出し画像

【15.水曜映画れびゅ~】"Minari"~「普遍的夫婦像」に+α~

"Minari"ミナリは今年度の米アカデミー賞で作品賞・監督賞を含む6部門にノミネートされている話題作で、先週から日本でも公開されています。

あらすじ

韓国系の移民 ジェイコブ・イーは一攫千金の夢を掴むべく、妻(モニカ)と子(デヴィッドとアン)を引き連れてアーカンソー州の田舎町へと移住した。ジェイコブは一から農地を開拓して大農場主に成り上がろうとしていたが、モニカはそんな夫を冷ややかな目で見ていた。ほどなくして、モニカの母(スンジャ)も一家と同居することになった。スンジャは並々ならぬ毒舌家だったが、どこか憎めないところもあり、一家の生活(特にデヴィッド)に刺激をもたらすことになった。その一方で、農場経営は一向に軌道に乗らず、家計は火の車であった。様々な困難に直面したジェイコブは挫けるどころか、却って成功への意欲を燃やしていた。そして、全てを犠牲にする勢いで経営に没頭していったが、それがとんでもない事態を引き起こしてしまう。

Wikipedia より

移民第一世代の夢

劇中ではあまり触れられませんが、この作品の舞台はレーガン政権下の1980年代アメリカ。

アジアを含め多くの国から、アメリカへの移民が増え始めてきた時期と重なります。

そんな移民たちはアメリカに移住して職に就き、ある程度安定した生活することができました。

しかしそのような暮らしを手に入れたとしても「本当にその職が自分のやりたいことなのか」「これで人生を終わらせていいのか」という想いが付きまといます。

そして、夢に走りたくなってしまうのです。

それこそが、異国から自由の国アメリカへやってきた移民第一世代が抱く”アメリカンドリーム”

そして本作の主人公ジェイコブもその一人でした。

本作の監督・脚本を務めたリー・アイザック・チョンは、移民第一世代である自身の父親の姿をジャイコブと重ね合わせて製作し、故郷であるアーカンソー州を舞台としました。

そしてジャイコブの息子であるデイビットを、自分の幼少期を重ね合わせているのでしょう。

普遍的夫婦像

そんな夢追人のジャイコブに対して妻モニカは批判的。

子供のことそっちのけで安定的な生活を投げ出し夢を追う夫を怪訝けげんに思い、喧嘩が絶えません。

夢/理想を追う夫
家族を第一に考える妻

このような夫婦間の価値観の違いは、本作に限らず多くの作品で描かれてきました。

例えば『フェンス』(2016)では「息子に対して自らの理想を頭ごなしに押し付けるなど身勝手な夫(デンゼル・ワシントン)に対して、息子を気遣いながらも最終的には夫に我慢を強いられる妻(ヴィオラ・デイヴィス)」という夫婦の姿が描かれました。

『マッリジ・ストーリー』(2019)では。舞台監督としての夢を追い続けてきた夫(アダム・ドライバー)に対して献身的に支えてきたはずの妻(スカーレット・ヨハンソン)が離婚を機に壮絶にぶつかり合う姿が描かれました。

個人的に『ミナリ』の夫婦像が一番重なりあったのは『ツリー・オブ・ライフ』(2011)。

"厳格な父"(ブラッド・ピット)と"愛情深い母"(ジェシカ・チャステイン)という夫婦の関係性には大いに共通するものを感じます。

『ツリー・オブ・ライフ』の父親は厳しすぎですが…。

以上のように、多くの映画作品でそんな「普遍的な夫婦像」が描かれてきました。

その夫婦の間で板挟みになる存在が「子供」である点ことも共通して挙げられます。

+αと、タイトルの意味

そんな「普遍的な夫婦像」が描かれる本作ですが、他の作品と一味違うところはその夫婦・家族に+αとしておばあちゃんが登場することでした。

娘のモニカのために韓国からアメリカへ移住してきたスンジャ

このスンジャという+αが『ミナリ』という作品にどのようなメッセージ性を持たせるのでしょうか…?

そして作品のタイトル『ミナリ』。
韓国語でセリを意味する語らしいです。

このタイトルの意味も考えながらご覧になると、より楽しめると思います。


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

次回の記事では、今年のアカデミー賞最有力候補の”Nomadland"ノマドランド(2020)について語っています。