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【30.水曜映画れびゅ~】"The Assassination of Jesse James"~ブラッド・ピットの隠れすぎた名作~

『ジェシー・ジェームズの暗殺』(原題”The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford”)は、2007年公開のアメリカ映画。

ブラッド・ピットの映画会社PLANB製作の作品です。

簡単なあらすじ

アメリカ西部開拓時代に実在した強盗団の頭"ジェシー・ジェームズ"。

タイトルからもわかるように、そのジェシー・ジェームズがボブ・フォードに暗殺されるまでの日々を描いた作品です。

ブラッド・ピットお気に入りの一作

この作品について知らない人は多いのではないでしょうか?

というのも、この作品は興行的には大失敗したとされています。なので日本のみならず、アメリカ含め世界的に知名度が低い作品といわれています。

しかし主演と製作筆頭を務めたブラッド・ピットは本作にかなり思い入れがあるようで、2017年のGQでのインタビューにおいてこのように語っています。

「僕のお気に入りの作品は、僕が出演した作品のなかでも最も興行成績が悪かった『ジェシー・ジェームズの暗殺』なんだ。いつかしっかりとした評価がなされる時が来るとは思っているよ。僕がそう信じる限りね」

Brad Pitt Talks Divorce, Quitting Drinking, and Becoming a Better Manより

興行的には失敗したものの、批評的には高い評価を得た本作。

それゆえピットの望み通り、今ではコアな映画ファンを中心に隠れた名作として人気を博しています。

のちのオスカー俳優3名の共演

そんな本作の魅力ですが、なんといっていもブラッド・ピットケイシー・アフレックサム・ロックウェルという3人の実力派俳優の共演。

この3人全員が、のちにアカデミー賞を受賞しました。

ブラッド・ピット

物語の核となるジェシー・ジェームスを演じたブラッド・ピット

血も涙もない強盗魔としての冷酷さと、どこか悲壮感を漂わせるミステリアスさを併せ持ちます。

ブラッド・ピットはそんなジェシー・ジェームスを静かな演技で見事に作り上げ、「恐ろしくカリスマ的」と批評家に言わしめたほどでした。

本作のブラッド・ピットの演技は世界的に評価されており、ヴェネツィア国際映画祭で男優賞を受賞しています。ブラッド・ピットの世界三大映画祭における男優賞受賞は今現在で本作のみです。

ケイシー・アフレック

そんなジェシー・ジェームスの命を狙うもう一人の主人公ボブ・フォード。虎視眈々と暗殺のチャンスを狙うものの、ジェームスと生活する中で感情が揺さぶられ続ける繊細な男です。

そんなボブを演じたのが『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(2016)でアカデミー主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック

『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でもそうでしたが、複雑な感情を持つキャラクターを演じるとケイシー・アフレックは輝きますね。

本作の演技でアカデミー助演男優賞のノミネートされ、自身にとって初のアカデミー賞ノミネートとなりました。

サム・ロックウェル

そのボブの兄役を『スリー・ビルボード』(2017)のサム・ロックウェルが演じます。

ボブと比べてちょっとおとぼけなキャラでありながら、ボブと同様にジェームスの暗殺を目論む男。次第に緊迫していくジェームスとボブの関係性において、その間を取り持つ重要な役柄です。

このように、なかなかの俳優布陣であった本作。
特に映画後半は、この3人による緊張溢れるシーンの連続で痺れます。

ロジャー・ディーキンスによる闇と光

そしてもう一つの注目ポイントが、映像。

アカデミー撮影賞を受賞した『ブレードランナー 2049』(2017)と『1917 命をかけた伝令』(2019)のほか『ノーカントリー』(2007)や『007 スカイフォール』(2012)など数々の名作で撮影監督を務めたロジャー・ディーキンスの技が光ります。

特に冒頭の列車強盗のシーン。

夜の闇と列車の光のなかでこちらに歩いてくるジェシー・ジェームスの姿は、本作の象徴的なシーンです。

そのほか西部開拓期ならではの風景とその陰影で、作品の雰囲気をグッと高めます。全体として『ノーカントリー』を彷彿とさせる印象です。

最後に

2020年のアカデミー賞授賞式で、助演男優賞のプレゼンターとして登場したレジーナ・キングがこのようなことを言ってました。

「映画の影響力はどのように定義できるでしょうか。興行成績という人はいるでしょうね。ただ私にとっては、印象的なセリフや心動かされる演技ではないかと思います」

 Brad Pitt Wins Best Supporting Actorより

興行収入が良くなかったからと言って、一概にそれがおもしろくない映画かといえばそうでもないんですよね。

だからこそ私は、これからも『ジェシー・ジェームズの暗殺』のような作品を掘り起こしていきたいです。

前回記事と、次回記事

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次回の記事では、ウェス・アンダーソン監督の名作"The Grand Budapest Hotel” グランド・ブダペスト・ホテル(2014)について語っています。