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【29.水曜映画れびゅ~】"Black Swan" / "Whiplash"~極限まで追いつめられると、人は何をみるのか?~
今回の記事では、二つの映画について紹介させていただきたいと思います。
『ブラックスワン』(2010)
ニューヨークのバレエ団に所属するニナは、元バレリーナの母とともに、その人生のすべてをダンスに注ぎ込むように生きていた。そんなニナに「白鳥の湖」のプリマを演じるチャンスが巡ってくるが、新人ダンサーのリリーが現れ、ニナのライバルとなる。役を争いながらも友情を育む2人だったが、やがてニナは自らの心の闇にのみ込まれていく。
『レスラー』(2008)でも知られる ダーレン・アロノフスキー監督作品。
主演を務めたナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を受賞したことでも有名な作品です。
授賞式の時、妊娠していたみたいですね。
『セッション』(2014)
19歳のアンドリュー・ニーマンは、「偉大な」ジャズドラマーになることに憧れ、アメリカ最高峰の音楽学校・シェイファー音楽院へ通っていた。そんなある日アンドリューが教室で1人ドラムを叩いていると、学院最高の指導者と名高いテレンス・フレッチャーと出会う。そして後日、アンドリューが学ぶ初等クラスをフレッチャーが訪れ、自身が指揮するシェイファー最上位クラスであるスタジオ・バンドチームにアンドリューを引き抜くのだった。
フレッチャーは一流のミュージシャンを輩出するのに取り憑かれ、要求するレベルの演奏ができない生徒に対し、人格否定や侮辱を含めた罵声や怒号も厭わない狂気の鬼指導者。アンドリューを迎えた練習初日、その矛先はさっそくアンドリューにも向けられ、ほんのわずかにテンポがずれているという理由で椅子を投げつけられてしまう。さらに他のメンバーの目の前で頬を引っ叩かれ、屈辱的な言葉を浴びせられると、アンドリューは泣きながらうつむくほかになかった。しかしアンドリューはこの悔しさをバネに、文字通り血のにじむような猛特訓を開始するのであった。
『ラ・ラ・ランド』(2016)で後に世界を席巻することとなるデイミアン・チャゼル監督の出世作。原案・脚本もチャゼル監督が務めています。
本作で病的なまでに狂気じみた演技を魅せたJ・K・シモンズが、アカデミー助演男優賞を受賞しています。
現在(2021/06/30)、アマゾンプライムで視聴可能です。
二作の共通点
なぜ今回この二作を一挙に紹介したかといいますと、どちらの作品もとても面白いのはもちろんなのですが、それとともに非常に共通点が多い二作だと思うからです。
①異常なまでに追い込む指導者
一つ目の共通点は、異常なまでに主人公を追い込む指導者。
パワハラやセクハラという言葉では収まりきらないほどの罵詈雑言と人格否定。
「俺が指揮するからには失敗は許さない」と言って、プレッシャーというムチを片手に主人公を精神的にも肉体的にも限界まで追い詰めていきます。
②自分で自分を追い詰め続ける
そんなコーチに必死で食らいつこうともがくのが、主人公のニナ(『ブラックスワン』)とニーマン(『セッション』)。
生活の全てをバレエ/バンドに注ぎ込むことで、少しずつ認められていくような気がしてきます。
そして、もっと認められたいがためにもっと自らを追い込んでいきます。
しかし次第に精神がおかしくなっていき、気づけば周りには誰も味方がいなくなっている…
純粋な心を持っていたニナは、精神までも黒鳥に。
ジャズ好きの素朴な少年だったニーマンは強情な性格となり、バンドから孤立します。
③極限まで追いつめられると、、、?
すべてを捨て去ってまで一芸を極めようとしたニナとニーマン。
そこまでして辿りついた極地で二人はそれぞれどんな結末を見たのか?
この共通点については、映画をご覧になって確認していただきたく思います。
この映画に共感できますか?
もし「この映画に共感できますか?」と聞かれたら、みなさんはどう答えますでしょうか?
私はまずこう聞き返すでしょう。
「"誰に"共感できるという意味ですか?」
少なくとも私は、この2作で二人ずつに共感できます。
主人公とコーチです。
主人公には、もちろん共感できます。
私事ですが、自分にもそういう時期がありました。
自分にはこれしかないと思って、ひたすら追い込む。周りの目など気にせずにただただ盲目的に一転集中する。今振り返れば大分痛い奴だったかもしれませんが、そういうこともありました。
正直冷静に考えれば別に「これしかない」なんてありえないし、途中で投げ出したってどうってことなかったのかもしれません。ただ良い経験であったと振り返れもしますが…
後悔していないとも言い切れないのですね(笑)
そして、コーチにだって共感できます。
自分が見出した才能であれば、最高カラットまで磨け上げたいもの。
そのために、自分の理想となるようにその才能を完成させようとするのが、指導者だとも思います。それで自分の思い通りにならなければ、力業でも軌道修正する…
少ない人生経験ながらそんな大人をいくらか見てきましたし、自分にもそういう一面があったなっと思い当たる節もあります。
それが正しいかどうか…この二作を観ると考え込んでしまいますね。
そんな私ですが、バレエの経験もジャズバンドの経験もありません。
ただこの二作には単なるスポ根映画としてではなく、もっと大きな人間の性のようなものを感じさせる作品のように思いました。
だからこそ、この作品に共感を覚えたのだと思います。
前回記事と、次回記事
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次回の記事では、ブラッド・ピットの隠れた名作”The Assassination of Jesse James”(2007)について語っています。