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【155.水曜映画れびゅ~】"20 Days in Mariupol”~現実と思いたくない…~

"20 Days in Mariupol”マリウポリの20日間は、「実録 マリウポリの20日間」としてNHK「BS世界のドキュメンタリー」で放送され、4月26日から劇場公開されている映画。

今年の米アカデミー賞にて、長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品です。

★受賞
長編ドキュメンタリー賞

第96回米アカデミー賞 結果一覧

作品情報

ロシアによるウクライナ侵攻開始からマリウポリ壊滅までの20日間を記録したドキュメンタリー。
2022年2月、ロシアがウクライナ東部ドネツク州の都市マリウポリへの侵攻を開始した。AP通信のウクライナ人記者ミスティスラフ・チェルノフは、取材のため仲間と共に現地へと向かう。ロシア軍の容赦ない攻撃により水や食糧の供給は途絶え、通信も遮断され、またたく間にマリウポリは孤立していく。海外メディアのほとんどが現地から撤退するなか、チェルノフたちはロシア軍に包囲された市内に留まり続け、戦火にさらされた人々の惨状を命がけで記録していく。やがて彼らは、滅びゆくマリウポリの姿と凄惨な現実を世界に伝えるため、つらい気持ちを抱きながらも市民たちを後に残し、ウクライナ軍の援護によって市内から決死の脱出を図る。

映画.comより一部抜粋

マリウポリ

2022年2月24日。ロシアによるウクライナ侵攻が始まった。

ウクライナ東部ドネツク州のマリウポリは、ロシア軍にとってクリミア半島とロシア本土を結ぶ線上に位置する戦略的な要衝になり得た。そのため侵攻から約3か月間、ウクライナ軍とロシア軍の激戦地となった。まだ民間人の避難が行われていないにもかかわらず、ロシア軍の攻撃は容赦がなかった。

マリウポリは2022年5月20日に陥落。推定2万人の民間人がマリウポリで命を落としたとされている。

ウクライナ侵攻が始まった日から20日間を、現地で取材中だったAP通信の記者は記録していた。

現実と思いたくない…

現在進行形で進むウクライナ侵攻。本作は、その戦争と向き合う記録映画。

ロシア軍の容赦ない攻撃。不条理に殺される民間人。それでも命を救おうとする医師。そして、子供を失い、絶望に打ちひしがれる親…。

AP通信の記者は、自らも命の危険と隣り合わせの状況のなかカメラを回し続け、この無慈悲な戦争を世界に伝えようとしました。

その様子は現実とは思えません。…いや、現実とは思いたくないのです。映画を観ている時、どこかで「これはフィクションだ」と思い込もうとしている自分がいました。もちろん、この映画がドキュメンタリーであることは百も承知です。しかし、そんな風に自分を騙さなければ、本当におかしくなりそうなほど、残酷な現実が映画には記録されていました。

「こんな映画、作りたくなかった」

本作の監督は、ミスティスラフ・チェルノフ。長編ドキュメンタリー賞を受賞した彼のスピーチが、今年のアカデミー賞で最も印象に残ったシーンでした。

This is the first Oscar for Ukrainian history.
(ウクライナの歴史で初のオスカーです)
【中略】
I'm honored. But, probably, I will be the first director on this stage who will say I wish I've never made this film.
(本当に名誉なことです。でもオスカーの舞台でこう発言する監督は初めてでしょう。『こんな映画、作りたくなかった』と)
I wish to be able to exchange this to Russia never attacking Ukraine never occupying our cities.
(叶うならオスカーと引き換えに、過去をロシアがウクライナを侵攻しなかったものに変えたい)
【中略】
I cannot change the past. But we are all together. I'm on you, some of the most talented people in the world.
(しかし過去を変えることはできません。でも、私たちは団結できます。世界屈指の才能を持つ皆さんで、力を合わせましょう)
We can make sure that the history record is set straight and that the truth will prevail and that people of Mariupol and those who is given their lives will never be forgotten because cinema forms memory, and memory forms history.
(そうすれば、事実を明らかにすることが可能です。いつか真実が勝利した時、命を捧げたマリウポリの人々は私たちの記憶に残ります。映画は記憶となり、記憶は歴史を形作るからです)

一部の訳文はWOWOWで放映された番組の
字幕を参照しています

ウクライナだけでなく、ガザやミャンマー、アフガニスタンなど、世界中で起きている戦争が1日でも早く終結することを願っています。


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次回の更新は、急に暑くなってきたので夏らしい作品を。『水深ゼロメートルから』を紹介させていただきます。

お楽しみに!