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【156.水曜映画れびゅ~】『水深ゼロメートルから』~男女平等の本音~

『水深ゼロメートルから』は、5月3日から劇場公開されている映画。

『リンダリンダリンダ』(2005)や『カラオケ行こ!』(2024)を手掛けた山下敦弘監督の作品です。

あらすじ

高校2年の夏休み。ココロとミクは体育教師の山本から、特別補習としてプール掃除を指示される。水の入っていないプールには、隣の野球部グラウンドから飛んできた砂が積もっている。渋々砂を掃き始めるふたりだが、同級生で水泳部のチヅル、水泳部を引退した3年の先輩ユイも掃除に合流。学生生活、恋愛、メイク…。なんてことない会話の中で時間は進んでいくが、徐々に彼女たちの悩みが溢れだし、それぞれの想いが交差していく――。

公式サイトより

砂の積もるプールにて

高校2年の夏休み。体育の補習でミクココロは、プールの掃除をさせられる。グラウンドに隣接するプールは、練習をしている野球部の砂ぼこりのせいで、掃いても掃いても砂が積もる。

「こんなん、やっても意味ないじゃん」

ギャル気質のココロは、全く掃除をしない。その傍らで、ミクは黙々とプールの砂を掃除していく。

そんななか、風変わりな水泳部のキャプテンチヅルと、3年生で水泳部の元キャプテンユイも掃除に加わる。

4人は掃除をしながら、なんてことない会話を重ねる。学校生活のこと、部活のこと、メイクのこと…。

そんな会話のなかで、4人のなかに眠っていた”ある感情”が露わになっていく。

JK版『ブレックファスト・クラブ』

本作の原案は、高校生演劇の同名戯曲。2019年当時、高校3年生だった中野夢花が執筆し、第44回四国地区高等学校演劇研究大会で文部科学大臣賞(最優秀賞)を受賞した作品です。ちなみに、本作の脚本も中野夢花が担当しました。

映画化にあたり、監督を務めたのが山下敦弘。

青春映画の大傑作『リンダリンダリンダ』(2005)を手掛けたこともあり、山下監督は最適任者といえるのではないでしょうか。

そんな本作は、いわば「JK版『ブレイクファスト・クラブ』」。ハリウッドの青春映画ブームの代表作である『ブレックファスト・クラブ』(1985)は、個性の異なる登場人物が補習で学校の図書館に集められて反省文を書いていくなかで、日々の不安を吐き出していく物語です。アメリカで初めて”スクールカースト”の存在を暴露した作品としても、有名ですね。

そして本作『水深ゼロメートルから』は、映画の作り的には『ブレックファスト・クラブ』とほぼ同じ。

優等生気質のミク
ギャル気質のココロ
風変わりな性格のチヅル
なぜか一緒に掃除をする、気弱な先輩のユイ

個性の異なる彼女たちが、プールに積もった砂を掃除しながら、日々の不満や悩みを吐露していきます。

演劇原作らしく、舞台はほぼ一貫してプールの中です。そして、砂は一向になくなりません。しかし掃除は正直どうでもいい要素で、最も大事なのは、そこで繰り広げられる彼女たちの会話劇です。

男女平等の本音

そんな彼女たちの会話の主題は、男女平等の本音

「どんだけ頑張ったって、私たち、女なんよ」
「女を理由に逃げてるだけじゃないの?」
「女はメイクして、ようやく男と同じ土俵に立てるんだよ」
「子どもの頃はみんな同じだったのに、いつからか、女らしく、男らしくって言われ始めちゃって…」

”男女平等”とか”多様性”とかいう言葉が、色々とはやし立てられるようになった現代社会。そんな”男女平等社会”に対して、「でも…それって、ただの理想だよね?」というノリで、劇中の女子高生たちがグサグサとメスを入れまくってきます。

「時代は変わった」とか「もう男女とか関係ない」ってよく言われますけど、実際はそれほど変わっていないし、そもそも「別に変える必要がない」と思う人もいます。「なら、どうすえばいいのか?」なんて議論を提起するつもりはありません。でも、この映画からリアルで生々しい女子高生の叫びを感じました。


前回記事と、次回記事

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次回の更新では、5月17日から公開されている『ミッシング』を紹介させていただきます。

お楽しみに!