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【14.水曜映画れびゅ~】"Borat 2"~衝撃の問題作!!~

『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』(原題 “Borat Subsequent Moviefilm: Delivery of Prodigious Bribe to American Regime for Make Benefit Once Glorious Nation of Kazakhstan”)は、今回のアカデミー脚色賞にもノミネートされているドキュメンタリー(?)映画です。

14年前に公開されたシリーズ1作目により世界的人気者となったボラットであったが、カザフスタンの地位を著しく汚したとして終身刑となり14年間強制労働をさせられていた。しかし、そんなボラットに名誉挽回のチャンスが巡ってくる。カザフスタン政府は、トランプ大統領との交流を深めるため貢物としてサルを贈ろうと計画し、そのサルをボラットに託してアメリカに派遣しとのだ。そうして再びアメリカに降り立ったボラットであったが、貢物を確認するとサルは消えており、その代わりに娘のトゥーターがいた。サルがいなくなって困ったボラットは、代わりにトゥーターを女好きで知られるアメリカ副大統領のマイケル・ペンスに貢物として贈ろうと考え、ペンス副大統領に会うためのアメリカ珍道中が再び幕を開ける。

ボラットって誰?

カザフスタン人のジャーナリスト ボラット・サグディエフ

ボラッドを追ったドキュメンタリー(?)映画『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006)というものがあります。

カザフスタンの情報省からアメリカの文化をカザフスタンに紹介するドキュメンタリー映画制作を任されたボラットのアメリカ珍道中を描く映画なのですが、このボラット…とんでもない奴です

カザフスタンの田舎の田舎で育ったボラットは、アメリカの文化や礼儀なんてお構いなし。

トランプタワーの前で野〇ソしたり、フェミニストの活動家たちの前でおもっきし・・・・・女性をけなしたりするなど、完全アウトなことを繰り返し、そしてその模様が映画にバッチリおさめられています。

そんな問題作すぎる作品なのですが、なんとアメリカで大ヒット!

「こんな作品を好むなんてアメリカ人はどれだけ下劣なんだ!」って思っちゃいそうなのですが、実はそういうわけではないのです。

モキュメンタリー

このボラット、実在の人物ではありません。

その正体はイギリスのコメディアン俳優 サシャ・バロン・コーエン

英国屈指の個性派俳優として知られ、『ヒューゴの不思議な発明』(2011)や『レ・ミゼラブル』(2012)などでのクセのある役が印象的な方。

また昨年からNetflixで公開されている『シカゴ7裁判』においても異彩を放つ演技を魅せ、米アカデミー賞助演男優賞に現在ノミネートされています。

そんなコーエンが自身のコメディー番組"Da Ali G Show"で生み出したキャラクターが、ボラットです。

ただそんな裏側を知ってしまうと、こう思う人がいるのではないでしょうか?

「じゃあ、映画はすべてフェイクなのか…つまんねえ」

…いや、そうでもないんです。

確かにボラット自体は架空のキャラクターですが、そのことを映画で知っているのはごく一部の人だけで、あとはマジで何も知らない・・・・・・・・・人たちがドキュメンタリーと思い込んで出演しているんですね。

そしてそんな人たちの前でボラットが失礼極まりない行動を連発するものだから、ガチでピリピリした空気感が流れます(笑)

そんな、いわばドッキリみたいな形で撮影しているのに、ネタばらしなんかせずに映画公開をしちゃうもんだから、大ヒットした一方で映画に対する抗議や訴訟が起きるなど大問題になったらしいです。

まさかの2作目!

そんな問題作から14年の時を経て、まさかの2作目が昨年Amazonオリジナル映画として公開されました。

そんな今作は1作目に比べて政治色の強く、衝撃的なシーンもてんこ盛り!

例えば…

共和党の政治資金集会にトランプの変装をして乗り込み、ペンス副大統領(当時)に向かって「ペニスさん!」と大声で叫んだり…

ホロコーストを経験したユダヤ人のおばあちゃんの前で、ユダヤ人差別の発言を繰り返したり…

そして極めつけは、ある大物政治家にまさかの…

そんな1作目よりも過激となった2作目。

その評価は高く、コーエンはゴールデングローブ主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、またボラットの娘役を演じたマリア・バカローヴァは今年のアカデミー助演女優賞にノミネート。

そして作品自体も、ゴールデングローブ作品賞(ミュージカル・コメディ部門)を受賞し、アカデミー賞では脚色賞にもノミネートされています。

一貫したアメリカ風刺

この『ボラット』シリーズでは、そんなボラットのトンデモ・・・・なキャラクター性から、途上国であるカザフスタンをバカにしている印象を受ける方が多いと思います。

事実やりすぎな部分もあり、カザフスタンの政府関係者が1作目の公開時にカンカン怒ったという逸話もありますが、私からすれば誇張しすぎたわかりやすいコメディとして普通に笑えます。

そもそもこのシリーズの本質はそのような”カザフスタンをバカにする”ことではないと思います。

作品の真意とは、”アメリカをバカにする”ことではないかと思います。

ボラットの発言につられて差別発言をするアメリカの若者、強硬な共和党支持者、QAnon支持者、ドナルド・トランプ、などなど...。

このシリーズからアメリカ人の建前と本音がまじまじとわかるような気がしました。

コメディ映画ではありますが、全体を通じてそのようなアメリカの汚点を浮き彫りにしている生々しいメッセージ性も感じ取れますね。

・・・

…とまあ、つらつらと書いてはみましたが、正直この作品はも”百聞は一見に如かず”です。

なので、とりあえず見てください!(笑)


前回記事と、次回記事

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次回の記事では、今年のアカデミー作品賞・監督賞ほか6部門ノミネートの"Minari"ミナリ(2020)について語っています。