見出し画像

【26.水曜映画れびゅ~】"The Breakfast Club"~「スクールカースト」を描く映画~

"The Breakfast Club"ブレックファスト・クラブは1985年公開のアメリカの映画で、現在(2021年6月9日)Amazonプライムで視聴可能です。

あらすじ

接点のない異なるタイプの高校生、すなわち「スポーツマン」「秀才」「不良」の3人の男子生徒と「お嬢さま」「不思議ちゃん」の2人の女子生徒は懲罰登校を命じられ、休日に図書室で「自分とは何か」をテーマにした作文をヴァーノン先生から課される。それまで付き合いのなかった5人は次第に自分の心をさらけ出し、家族や学校への鬱屈した気持ちを語ったり、ともにマリファナを吸ったりして、心を通い合わせていく。

 (Wikipedia より)

※次の動画は、日本語字幕のない本編映像の一部です。
(公式のトレーラーが見つかりませんでした…)

「スクールカースト」

本作は、1980年代におけるハリウッドの青春映画ブームの中で最も有名な作品の一つとされています。

特に主題歌となったSimple Mindsの"Don't You (Forget About Me)"は、いまやハリウッド映画史を語るうえで欠かせない映画主題歌となっています。

それらに加えて本作は、アメリカの高校において「スクールカースト」が存在することを初めて暴露した映画としても知られています。

個性の異なる登場人物が図書館で反省文を書くために集められるのが、物語のはじまり。

この5人は普段の学校生活では絶対に交わることのない集団にそれぞれが属していることが劇中で語られます。

それこそが、生徒の人気の度合いによって自然発生的に形作られたアメリカン・ハイスクールのカースト制度のそのものであることを示唆しています。

「スクールカースト」を描いた作品

1980年代の作品である本作で露わになったこの「スクールカースト」ですが、現在も多くの映画やドラマで題材にされています。

『レディ・バード』(2017)

『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)の監督でもあるグレタ・ガーウィグの監督デビュー作であり、代表作の『レディ・バード』(2017)でも「スクールカースト」が如実に描かれています。

シアーシャ・ローナン演じる"レディ・バード"はカースト下位層に所属する女子高生で、しかも家族はそんなに裕福ではありません。

そんな自身のアイデンティティにコンプレックスを抱いており、そのため同学年のお金持ちで人気者集団、いわゆるカースト上位集団に近づこうとします。

このように高校生自身の性格だけでなく、貧富の差なども「スクールカースト」の要素として出てくることが今作を通してわかります。

『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』(2019)

昨年からNetflixで配信されているNetflixオリジナルの『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』

主人公のエリー・チューは中国系移民。

学校では成績優秀でほかの学生のレポートの代筆業でお金を稼いだりもしていますが、友達はいません。

彼女はレポートを代筆してくれる子としてただ利用されているだけ…

その裏では陰口をたたかれるなど、カースト上位層にいるような学生から明らかに見下されています。

移民人種というのも、海外では「スクールカースト」の要素。

ほかのアメリカ人学生とは異なる中国系であることが彼女をカースト下位層にしているというのは、なんだか理不尽ですよね…。

映画としてはそんな風に孤立していた彼女にひょんなことで友達ができたことで物語が一気に動き出します。

『13の理由』 (2017~2020)

Netflixオリジナルドラマで『13の理由』

性格や貧富の差、人種、さらにはセクシャリティの問題まで、アメリカにおける「スクールカースト」の実態がありありと描かれていたこの作品。

加えて、そのようなカースト制度がたどり着く最悪の悲劇が物語の核になっています。

全4シーズンありますが、観るのが辛すぎます。

日本の「スクールカースト」

「スクールカースト」はこのようにアメリカのハイスクールでの問題とされていましたが、近年では日本の学校でも存在していると専門家の間でもいわれるようになりました。

かくいう私も、中学・高校生時代は「スクールカースト」に苦しんだ経験があるのですが…

その話は今回置いておいて、そんな日本の「スクールカースト」を描いたエンタメ作品をここからは紹介させていただこうかと思います。

『桐島、部活やめるってよ』(2012)

朝井リョウの同名小説を吉田大八が監督した『桐島、部活やめるってよ』

日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞したこの作品は、顕著に日本の「スクールカースト」を表していると言えます。

またこの映画と関連して紹介したいのが、Creepy Nutsの『トレンチコートマフィア』という曲。

この歌詞はカースト下位層にいる学生の視点で書かれおり、この曲に合わせて作られた『桐島、部活やめるってよ』のMADがすごく胸に刺さり、オススメです。

また映像作品ではないのですが、日本の「スクールカースト」を主題とした小説で芥川作家の村田沙耶香の『しろいろの街の、その骨の体温の 』という作品もあります。

興味がある方は、ぜひ読んでみてください。

最後に

今回は『ブレイクファスト・クラブ』の紹介から出発して、日米の「スクールカースト」を取り扱った作品をいくつか紹介させていただきました。

「スクールカースト」ってのは、カースト上位でも下位でも、結局誰も幸せになれないんじゃないかと思うことがあります。

見下される「下位」にいるのが辛いのはもちろん、いつか「下位」に落ちてしまうのではないかとビクビクしながら生きる「上位」に対しても「なんだかな?」と思ってしまいます。

「上とか下とかではなく、ひとりひとり」

そういう見方をすれば解決するはずなのですが、複雑な青春時代を送るティーンにはそれがとても難しいことであるということも理解はできるんですよね…。


前回記事と、次回記事

前回投稿した記事はこちらから!

これまでの【水曜映画れびゅ~】の記事はこちらから!

次回の記事では、クエンティン・タランティーノ監督、レオナルド・ディカプリオ, ブラッド・ピット共演の"Once Upon a Time in… Hollywood"ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(2019)について語っています。