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日本の風習

このところ街中でよく見かけるのは、会社員らしき人たちが大きな紙袋を両手に下げて歩く姿である。紙袋の中は、おそらく自社のカレンダーやら手帳やらが入っているのだろう。

取引先への年末のご挨拶回りという、この時期恒例の風景。当社においても先々週あたりから来訪者が多くなり、総合受付には行列ができるほどだった。それだけを見るとまるで大企業であるかのような光景であり、なかなか誇り高く思ってしまう。

ところで、年末の挨拶に来年のカレンダーや手帳を配る日本独特の風習は、いつ頃から始まったのだろう。中にはオリジナルの特注品を用意する企業もあるが、大抵は既製品に企業ロゴを入れたものが多く、それらを受け取ると社内の一角にひとまとめにされ、欲しい人がいなければ無惨にも廃棄されていく運命である。

なかなか、サステナブル社会の実現にはほど遠いような。それでも風習としてなくならないというところに世の中の矛盾を感じる。

モノには必ず製作コストが掛かっているのは当然で、タダだからといってもらうモノも、タダで作られたモノではないのだ。

欲しいものは自分でお金を出し必要な分だけを買う、といった意識が社会に浸透すれば、無駄な廃棄もさらに減るのではないかと思うのだが。しかし、それでは季節商品として大量生産するモノは製造業や物流関連業界の儲けがなくなるとか、経済的なバランスといったサプライチェーンが崩れてしまうため、保たなければならない側面があるのだろう。

“クリスマスケーキ” も季節商品の一つだ。

私は今年、クリスマスケーキを初めて事前予約して購入した。食べたいケーキを逃したくなかったというのも理由の一つだが、事前予約することによって、消費者として “必ず消費する責任” を全うしたかったからだ。

何となくケースに並んでいるケーキたちは、売れ残ったらどのように処理されるのだろうということを幾度となく考えてしまう。店員さんからは「当日中にお召し上がりくださいね」と笑顔で言われるのに、まさか売れ残りを翌日も販売したりはすまい。殊に “クリスマスケーキ” はイベント期限があるため、気まぐれな需要に対して残らず売り切るハードルはさらに高いはずだ。

廃棄する場面は心苦しいあまりに想像したくないものだが、そういったバックヤードがあることを意識して商品を選ぶことも、消費者として大事なことだと思う。だから、来年以降も事前予約を続けるつもりだ。



さて、私の考えでは2日間かけて食べようと、敢えてイブ前夜の23日に受け取りに行ったプチサイズのクリスマスケーキ。

とてもかわいらしくて、「いっぺんに食べるのはもったいないから、半分は明日ね」とパートナーに伝えると、「え?こんなの全部、今夜食べちゃうでしょ」とあっさりした答え。

まじか。
まさか明日になって別れ話を切り出したりしないだろうな(ー ー;)

結局、言葉どおり一夜で食べ切ってしまい、24日のイブと25日の当日はスイーツなしのクリスマス。何だか聖夜の雰囲気も減ってしまったけれど、まぁいいか。

日付が変わり、今日から街中のクリスマスデコレーションはすべて取り払われ、正月飾りに置き換わる。

何とも心変わりの激しい日本だが、新たな年を迎えるための風景色が濃くなる街並みは嫌いではない。これぞ日本らしさであり、私にとって一年の中で最も好きな一週間がやってきた。

今年一年をゆっくりと振り返りながら、心穏やかに過ごしたいと思う。

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