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おいあくま

「人間不信」とでもいうのだろうか。

私はいま、職場で何かと疑ってしまう日々が続いている。

ウソをつかれているのではないか。
除け者にされているのではないか。
してやられたのではないか。 

自分で言うのも何だけれど、それがもう、病的なのである。

これまでにも何度か記しているが、私は入社して二十数年間、仕事大好き人間で過ごしてきて、近年は自部門の業務のみならず会社の周年行事や社史制作まで主導した。大変だったけれど、それ以上にやりがいを持っていた。

数年前、私の上司は仕事を丸投げ状態にした挙句、会社のカネを横領して懲戒解雇になった。その後1年ごとに上司が変わり、事件後3年目には初の女性管理職を上司に迎え、これでようやく落ち着いたかと思ったら、昨年になってハラスメント被害に遭う。

いったい何なのだろう、私は。

私のリクエストによって、人事部は産業医を紹介してくれたし、異動も叶えてくれた。
それには、心から感謝しているけれど。

ハラスメントは加害者本人に恨みを買ってしまうから、とのアドバイスを受け、今後の関係性を優先し、その事実は公表しないことで収めた。恨みも怖いがそれ以上に相手は当社初の女性管理職。会社がその役職を降ろすわけがなかった。悔しかったけれど、公式には「本人たっての希望により異動」となっている。

そのような中、先週後半に経理部門に所属する1人の後輩ちゃんが私に相談を持ち掛けてきた。そういう相談を受けるのも二十数年、変わらない。

彼女は先週、人事部に一般職から総合職への職群転換を促され、一週間後(今週)に行われる昇格試験の案内をされたのだと言う。

あまりにも急な話だったことと、人事部の独断によりピックアップした数名の一般職だけにしか案内していないことを訝しみ、今回何が何でも受験すべきかを私に意見を求めてきたのだった。

当然、当事者ではない私が口出しすることではないので、言われるがままに今年受験するメリット・デメリット、しっかり準備したうえで来年受験するメリット・デメリットを、想定し得る範囲で挙げ、いずれにしてもチャレンジすることには応援するよと伝えた。

…が、胸の内では人事部に失望していた。

コーポレートガバナンス・コードにて開示が求められている「女性の活躍推進」が背景にあるのは言うまでもない。何やら画策していることも知っている。けれど、情報非公開で個別に職群転換を案内する不公平さ、対象者本人に考える余地を与えないようなスケジュール、これがプライム市場に上場する企業のやることか?
「女性の活躍」=「女性総合職の活躍」なのか?

正直言って、一般職から総合職の職群転換のルート(制度)の運用開始が決まったら、自分もエントリーメンバーに加えてもらえることを疑わなかった。そもそもそういう仕事ぶりで昇格の意思を示してきたし、総合職でないことのほうがおかしいとも言われてきたし、周りからの期待も感じていた。

でも、それは単なる慢心に過ぎなかったというわけだ。
何のためにここまで努力してきたんだろうと思うと、虚無感に襲われた。

何に希望を持てば良いのだろう。
誰を信じれば安心できるのだろう。

後輩ちゃんは、週末にじっくり考えた結果、来年受験できる権利を人事部に取り付けたうえで、今年の受験は辞退したそうだ。彼女自身も社内の不穏な空気を感じ取ったのかもしれないが、どう判断するかは本人次第としか言えない。

そういうことがあり、私はいま極度?の「人間不信」に陥っている。

私はウソをつかれているのではないか。
もしかしたら除け者にされているのではないか。
あの人の思惑にしてやられたのではないか。 

冷静に考えれば気のせいなのに、気にしなければよいだけなのに、言い聞かせても言い聞かせても、泣けてくるほど自己嫌悪。

さらには更年期の年頃だし、闘う相手は誰でもない、自分だということに気づかされる。

皆、どうやって乗り越えているんだろう…。

難局が続く中、いろいろ漁ってたどり着いた「おいあくま」。

怒るな
威張るな
焦るな
腐るな
負けるな

「色即是空空即是色」と併せて、心に留めておきたい救いの言葉だ。

いちいち反応しない練習。
私が学ぶべきは、真っ先にそれのような気がしている。