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キャリア自律対策は中期的かつ層的に

キャリア期とキャリア自律

筆者である依藤は2023年5月現在で52歳です。内閣府では40 歳から64歳を中高年層と定義していますが、52歳は中高年(以降、ミドル・シニア)ど真ん中の年代です。団塊ジュニア世代が含められるこの年代は労働者の中で占める割合が高く、人件費が高く、能力や体力が低下しつつある層です。
そのため、当該層のキャリア自律の必要性が求められています。そんなミドル・シニアですが、私の考えでは当年代をキャリア期の定義において二つに分けています。

キャリア再模索期《45〜54歳》
指導的立場を得る一方で、第一線から退きつつある時期。と同時に、60歳以降の定年延長・雇用延長などを見据えて、キャリアを改めて模索する時期でもある。

キャリア再発展期《55歳〜》
キャリア再模索期に見据えたキャリアを発展させていく時期。これまでのキャリアを立ち止まって振り返り、今後のキャリアを模索・再発展させる世代だといえます。

一方で、他の年代はどのようになっているかというと以下の通りです。

キャリア模索期《18〜29歳》
社歴や社会人経験が浅く、自己のキャリアを模索している時期。模索がうまくいかず、それが離転職をおこすきっかけにもなっている。

キャリア発展期《30〜44歳》
自己のキャリアが定まりつつあり、仕事を通じて自分の考えややりたいことを発揮し、成長する時期。

年代ごとに特徴があり、キャリアの捉え方や状況が異なることが理解いただけたでしょうか。
と同時に、キャリア自律ができていると仕事生活を円滑に進めやすくなる可能性がうかがえます(もちろん、キャリア自律と円滑な仕事生活は必要十分条件の関係ではありませんが)。つまり、どの年代にもキャリア自律が大切だといえます。とはいえ、どこからどんな対策を打てばいいのでしょうか?画一的な通り一遍の対策では奏功しないということは考えられそうです。

広報活動とキャリア自律対策

2022年10月に開催した現場知フォーラム「キャリア自律、無関心ではいられるけど無関係ではいられない ~労働組合に求められるキャリア自律支援とは~」でキャリアコンサルタントの仁平氏がおっしゃっていたように、中長期的かつ層別対応することは非常に重要です。全組合員に一斉にキャリア自律対策を行っても反発や無関心が想定されます。

実情として、キャリア自律の重要性や必要性は吹聴されていても、自分事になっていない状況(日経リサーチ・HR総研「キャリア自律」に関するアンケート)が見受けられます。特にキャリア模索期の若年層においては、いきなりキャリア自律支援とか自己実現といってもどう対応していいのかが分からず、面倒さやうっとうしさを感じさせる可能性があります。

まずは緊急性の高い層や、進めやすい層から対策することが重要でしょう。
そうなると中長期的期間を要することになります。そうなると、伝え方や見せ方は非常に重要になってきます。考え方を変えると、情宣・広報活動を錬磨する良い機会でもあるといえます。

パーソル総合研究所の調査結果(従業員のキャリア自律に関する定量調査)では、キャリアカウンセリングは他の教育研修と比べて従業員のキャリア自律に最も関連が強いことが分かりました。

ただし、受講経験率は他の教育研修と比べて最も低い結果となっています。

経験率が低いのは、供給体制が整っていないからではなく、キャリアカウンセリングへの意識が依然として弱いことや導入事例や成功事例が少ないからでしょう。調査結果を見る限り、効果があるわけだから事例にこだわる必要はないといえます。

個別的労使関係とキャリア自律

弊社創業者の西尾力が以前から申しているように、労働組合運動は集団的労使関係では成り立たなくなり、個別的労使関係に移行せざるを得ない状況になっています。それ故に個々のキャリア自律は必然的に必要になってきます。そういった意味でも労働組合にとってキャリア自律対策は重要な位置付けになるでしょう。

ただし、個別的労使関係によって過度な自己責任論が横行することがないよう、労働組合としてはチェック機能も果たすべきでしょう。キャリア自律対策を円滑に進めるためにもアクセル(キャリア自律の推進)とブレーキ(チェック機能)のバランスは重要です。

依藤 聡 j.union株式会社

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