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【農業】EU共通農業政策(CAP)の新段階

こんにちは。新小樽少年です。
連載記事も第5回になりました。
今回からはEUにおける農政政策になります。
出来るだけわかりやすく説明できるようにしますので、
最後までお付き合いよろしくお願いします( `・∀・´)ノ

また「スキ」や「フォロー」もお待ちしています!!

はじめに

EUは共通農業政策(CAP)
直接支払い制度を中心とした家族農業支援に取り組んでいる。
EUの農家も家族経営の農場が大半を占めており、
その一方で経営形態は零細農家や大規模経営も存在。
農業政策の問題点は直接支払いは生産規模に比例するため、
大規模経営の農家に集中してしまう。
それゆえ農村振興政策の助成は小規模農家が受けにくい。

既往のCAP改革

CAP改革は2本の柱からなっている。
「第1の柱」は市場施策直接支払い
市場政策は公正取引実施のための安全網的役割を果たしている。
直接支払いは農業者の所得支持に貢献している。
1999年のCAP改革以降、農村の景観維持が重視されるようになるが、
法令順守農地の維持管理という最低限のもの。
多面的機能の意味合いは狭義的のようだ。
後ほど述べるが農業の多面的機能が重宝されるのは、
次期CAP改革と期待される。

「第2の柱」は農村振興政策についてであり、
農業の競争力、環境、農村、森林施策の維持に取り組む。
その取り組み具合は完ぺきとは言えないが、
取り組んでいる国は増えてきている。
(表1を参照)

2013年CAP改革の新たな展開

2013年にCAP改革に転換がはかられた。
それは穀物の生産過剰、WTO農業交渉の停滞によって、
国内農業助成に規律直接支払いにストップがかかった。
国内農産品に助成金を出すと、生産量を調整可能することが可能であり、
貿易的な公平性が失われるため。
それゆえ、CAP予算削減の是非農業の多面的機能
制度の公平性新規加盟国への対応が論点とされるようになった。
新規加盟国のブルガリアやクロアチア(旧社会主義国)には、
小規模零細農家と大規模農業経営体が併存している。
それらの国の多くは、生産品目の特化が進んでおらず、収量水準が低い。
また農協などの組織率が低いとされる。(農協は必要なのか?)

これらに対応すべく、
農村振興政策による助成金の支払いが導入された。
これは低所得かつ農業への依存度が高い国は純受益国
高所得かつ農業への依存度が低い国は純拠出国
という構造を設けることで、所得の再分配を可能にした。

直接支払い」は目的別に多様化している。
支払いの多様化は大きな変化だ。

画像1

分権の強化を目指す次期CAP改革案

CAP改革は2020年に終了する予定であり次期CAP改革案が検討されている。
EUの課題、難民や安全保障、環境や気候、持続可能性のパリ協定
イギリスのEU脱退に伴う、財源不足、
多面的機能の重点化、助成の公平化、
極右勢力の台頭などの問題に対応する必要がある。
また支払制度の複雑化に伴う、行政負荷と農業者の事務負担の増加。

まとめ

農村振興政策に見られる所得の再分配は、
従来の中小農業者への再分配と比べて大幅に強化された。
高額受給者の減額ではなく、中小農業者への重点的な支払いを確立。

次期CAP改革は直接支払いによる多面的な機能への対応と公平性の強化
を課題として掲げている。

EU家族経営農家にとっては望ましい。
EU全域で農業生産を維持する生産性の低い土地、小規模経営、
青年のような所得支持の必要な農業者への重点化
経済的に弱い地域や経営を支え、
次世代の就農を促進する方向に働くことが期待されている。

感想ならびに補足説明

いかがでしたか。
農政の内容でしたので、少し難しいと思った方もいるかもしれません。
私も実際に参考文献を読んでいて、
難しいな思う部分が多数ありました。
なので最低限にかつ分かりやすくまとめたので、
論理展開が分かりにくいと思った方は気軽にコメントをお寄せください。

これを読んでいて思ったことは、
たしかに国はこのような支援策を用意してるが、
これが果たしてヨーロッパ諸国の農家さんに
どのように影響が出ているのかという点です。

例えば日本にも似たような制度があります。
新規農業者に対して、その営農支援策としていくらか助成金が出ます。
しかし実際のところ、その助成金というのは皆無に等しいものになっています。(筆者の過去のヒアリング結果に基づく)
つまり十分な支援ではないということです。
新規で農業を始めるとなると、開墾するための費用や収益性を考慮しても、黒字になるまで数年かかります。
それゆえ、支援策とは言え、十分とは言いにくいのです。

今回の記事はあくまで制度説明の内容でしたので仕方がありませんが、
こういうEUの小規模農家が支援策に対しどのような意見を持っているのか、
というヒアリングを試みるのは面白いかもしれません。

新小樽少年

参考文献

この記事は『村田武「新自由主義グローバリズムと家族農業経営」筑波書房、2019年』を参考にして書いています。
平澤明彦(2019)「第4章EU共通農業政策(CAP)の新段階」
p123-167




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