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虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜

人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?

第八話 

奈津の余命宣告が医師から母親へ告げられた日、センターに戻ったナツにも変化があった。

山岸佳子「ナツ、ご飯の時間だよ。最近あんまり食べてないから、沢山食べてね!」

普段と同じようにナツに餌を与え、なかなか食べようとしないナツに佳子は話しかけていた。

山岸佳子「ナツは寂しいよね。せっかくナツの事を一生懸命に思ってくれる人が出来たのに、またすぐに離れ離れになっちゃってさ、奈津ちゃんは本当にナツの事が大好きだって分かるもんね。奈津ちゃんは絶対にすぐにナツの元へ戻って来てくれるよ。絶対に」

クゥーン

山岸佳子「んっ?ナツ今鳴いた?」

ナツは下を向いていたため、明らかにナツの鳴き声だったのかは分からないが佳子には分かった。

山岸佳子「ナツ、いいんだよ。嬉しかったり、悲しかったりしたら鳴いたり、動いたりして、もっともっと感情出して生きていこうよ!ワンワン」

佳子は嬉しかった。今まで人の前では鳴く事はおろか、動こうとする事もほとんどなかったナツが犬として感情を伝えようとする鳴き声を出してくれた事に感動した。

一週間ほど経った頃

奈津「ママ、ナツは元気にしてる?ご飯は食べてくれてる?お絵かき帳ある?」

母親「ナツの事は心配しないで、毎日元気だよ!入院生活で奈津も退屈になっちゃうよね?明日来る時に持ってくるね」

奈津「うん。ナツも私と会えなくて寂しいと思うから、ナツの似顔絵と手紙書いてあげたいんだ」

母親「それいいね!きっとナツも喜んでくれるよ」

次の日、母親はお絵かき帳を持ってきて奈津に渡した。

母親「はい持ってきたよ!上手く書けるかなぁ?」

奈津「ありがとう。頑張って書いてみるね。完成したらママがナツに見せて、手紙も読んであげてね」

母親「分かったわ」

一見普通に見えるが、時折胸を抑える仕草などしており、奈津の容体は日々悪くなっていっていた。

奈津「ママ、完成したよ!これでナツ喜んでくれるかな?」

母親「凄い上手だね!ナツの似顔絵見せたら喜ぶと思うよ」

〜ナツへ〜

ナツ元気?

奈津は病院にいて早くナツに会いたいけど、まだ会えないみたい。

奈津がお家に帰ったら、いっぱいナツにご飯あげて、パパとママとナツの4人でまた公園行って芝生で寝っころがって、おやつ食べて、おいかけっこして遊ぼう。

私も寂しいけど、絶対にナツのとこに帰るよ。

バイバイ。

手紙を読み母親の目からは、涙が流れハンカチで顔を覆ってしまった。娘の夢を叶えてあげる事が出来ない現実を考え感情を抑える事が出来きなかった。

奈津「ママ、どうしたの?」

母親「うん。奈津が一生懸命ナツの事考えてくれてて凄い嬉しくてさ、早くみんなで遊びに行けるように頑張ろうね」

その後、母親は医者に状況を伺いに行き、

母親「先生、今後奈津はどのような治療を行なっていくんでしょうか?」

医者「正直なところ、絶対的な療法はないため、今のままで回復してくれる事を待つしかないといった状況になります。容体は悪くなっていってしまっておりますので、前にお伝えさせて頂いた...余命半年というのは、今のところ...変わっておりません」

母親「そうですか...先生、もしこの先奈津の命が絶たれてしまうのであれば、入院ではなく自宅に戻って生活させて貰う事は出来ないでしょうか?」

医者「呼吸器など、自宅に設置して何かあった時にすぐに病院に来れる準備をして頂けるのであれば、自宅での療養も可能です。」

母親「分かりました。それでは一度奈津を自宅に戻せるようにして下さい。お願いします」

病院の帰りに、母親はカタツムリ保護センターにより山岸佳子に状況を説明した。

山岸佳子「...そんな状況までなってしまっていたんですね。私としても非常に悲しいです。あんなに奈津ちゃん元気だったのに...これから先私が協力してあげられる事があれば、すぐに言ってください」

母親「ありがとうございます。まずは、奈津が家に戻ってくる頃にはナツを自宅に戻して頂きたいと思っております。あとどれくらい奈津と一緒にいてあげられるかは分かりませんが、奈津にとってナツはかけがえのない親友なんで」

山岸佳子「もちろんです。私としても奈津ちゃんの元へ戻ってほしいし、ナツも絶対に戻りたいと思ってるはずです。」

第九話へ続く













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