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歌声における息の混ぜ方

 人間が声を出す時には声帯を震わせているわけですが、では何がその声帯を震わせているのかというと、それは肺から上がってくる呼気(=体外に吐き出そうとする空気)になります。この呼気の量や勢いをコントロールしやすくなるというのが、発声練習の時や歌う時に腹式呼吸をすることの大きなメリットの一つとなる、というのは以前にも話した通りですね。

 で、そうやって声を出している時に息が混ざってくる場合があります。意図的に混ぜようとしたり、意図せず混ざってしまうこともあるかもしれません。「ウィスパーボイス」なんて言葉はよく聞きますし、「ハスキーボイス」や「息漏れ」なんて言葉を使うこともあるように、ただただ声帯を震わせる(鳴らす)だけではなく、そこに混ざってくる息をどうコントロールするのかも、発声練習や実際に楽曲を歌う上でとても大事なポイントになりますので、今回はそこのところを深く掘り下げてお話しようと思います。

 声を分析するやり方は色々ありますが、今回は息の混ざり具合がテーマですので、その息の混ざり具合が多いのか少ないのか、そして、音量(声量)が大きいのか小さいのか、の二つに絞って考えてみます。それぞれを組み合わせてみると、

①息の混ざり方が多くて、音が小さい。
②息の混ざり方が少なくて、音が小さい。
③息の混ざり方が少なくて、音が大きい。
(④息の混ざり方が多くて、音が大きい。)

の四つに分類することができます。①はウィスパーボイスや息声、裏声などの、空気感のある少し弱々しい声ですね。②はハーフトーンボイスなどの、力強くはないけれども芯のある声。③は表の声などの固くて力強い声になります。(④は一部シャウトやスクリーム、デスボイスなどが含まれることがありますが、発声練習では一般的にあまり使われることがないので括弧書きとしました。)

 私たちボーカリストはこれらを、意識的に、もしくは無意識的に、いろいろと行ったり来たり動きながら、発声練習したり歌ったりしています。ボイストレーニングにおいても、力強い声を出そうとする前に裏声などでウォームアップしますし、ハーフトーンボイスにスムーズに移行するべく、最初に息声を丁寧に鳴らしていったりします。実際に歌ってる時も、音量(声量)の調節をするだけでなく、息の混ざり方を変えて声質を変えることで歌声に様々な表情を付け、表現力を豊かにすることも出来たりします。また、子音の発音によっても息の混ざり方が変わります。sやhなどの子音は息を含ませやすく、mやbなどの子音では唇を閉じたり、dやgの子音では口の中で息を止めるので、息の流れが変わってきます。これはさらに喋り方の癖などでも個人差が出るので、それがそのまま個性として現れてくるのが、誰かの楽曲を歌うことや色んな楽曲を聴く事の面白さに繋がってきます。

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 自分自身はどんな息の混ぜ方をしながら発声練習したり楽曲を歌ったりしているのか。客観的に分析してみることが大事です。録音して分析するのも良いと思いますし、トレーナーに意見を求めるのもどしどしやっていただければと思います。どんな息の混ざり具合の時が最も良い感じに歌えてるのか、を試すのも良いでしょうし、逆に歌いやすい楽曲を歌っている時の息の混ざり方がどうなのかを後々分析してみるのも良いと思います。自分の好きなボーカリストさんがどういう風に混ざり具合のコントロールをしてるのかを真似してみて、そこで得られた何かを他に応用していったりするのも、きっと良い練習になると思います。声帯を締める筋肉を鍛える「ネィ」のトレーニングなども行いつつ、腹式呼吸をしっかりと意識しながら、色々試してみてくださいね!

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