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New Generation Sweetsと書いた件の補足

Hanako 2021年3月号(1/28発売)は
スイーツ特集。

僭越ながら、スイーツ大賞2021特集の審査員に今回お声がけいただき、寄稿させていただきました。
他の方々はメディアで何度もお見かけしたそうそうたる顔ぶれで、とても恐れ多いのですが、内容はとてもボリューミーで全国の様々なスイーツを紹介してますので、ぜひお手に取ってご覧いただければと思います。

さて、本日は、そこの記事で「New Generation Sweets」の加速が2021年のトレンドになりそう、と書かせていただきました。

誌面の都合で伝えきれなかったこのワードの意味について、こちらで説明させてください。

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New Generation Sweetsとは
私が今回便宜上つけた名前ですが、
文字通り、次世代のスイーツ、を意味します。

次世代の作り手が新しい解釈をもった
新しい表現のスイーツ

という意味です。

次世代、とは?
まず、次世代に対する前世代というのは、90年代後半〜00年代前半に起こったスイーツブームを指します。
今、みんなが知ってるパティスリーの代表格たるお店たちは、この期間にオープンしています。

そこでは本場ヨーロッパで修行をしてきたパティシエたちが「本場の味を、エスプリを日本で表現する」こと、本場の味が無かった日本にホンモノを作ることをミッションとしていました。

このことは最近発売されている雑誌等でも改めて確認できました。
※例: Pâtissier パティシエ Vol.2
https://www.shibatashoten.co.jp/sp/detail.php?cid=99&bid=08089900


それに対して次世代の作り手、というのは
そのスイーツブームの中で育ってきた作り手を指します。
本場ヨーロッパでも修行しますが、その前に日本で名店の味に感動し、それらのお店や学校で、多くの日本人シェフに学んでいます。
雑誌や書籍、日本語で書かれた学ぶ読み物も数多く出版されています。

作り手、と書いたのは、製菓学校〜日本や海外のパティスリーやレストランやホテル〜独立といった王道キャリアのパティシエだけでなく、飲食とは全くの異業種からのキャリアチェンジで入ってきた人たちも相当数増えてきたことを意図しています。

直接菓子づくり、レシピづくりに携わる人もいれば、経営・マーケッター・デザイナーとしてお菓子づくりをデザインする人もいて、それらの方々が関与したスイーツが2010年代あたりから現れはじめています。

こういった次世代の作り手たちのお話を伺っていると、スイーツブーム黎明期を牽引した大御所パティシエたちとの大きな違いとして、本場ヨーロッパの味・エスプリを日本に持ち込むことをミッションとしていないことに気付きます。

ヨーロッパから多くのことを得ているようでありつつ、それと同じくらい、自分が生まれ育った国・日本、そして地域の風土、日本人としての嗜好を大事にし、そこから自分オリジナルの味・表現を模索することをミッションとしているような印象を受けます。

本場の味は先輩方の店で食べられる。
お客さんもその味を知ってる。
じゃあその環境の中で、自分はどんな味を創る?届ける?
それを日々、チャレンジしているように感じます。

ちなみに、ここからは以前読んだ本の受け売りですが、
この日本のスイーツのトレンドは、日本の音楽業界と同じ道を踏んでいるみたいです。
J-POPも、80〜90年代の黎明期のアーティストたちはアメリカやヨーロッパの音楽に学び、本場のロックやポップミュージックを日本に持ち込みました。
それらを聴いて育ってきた00年代以降のアーティストは、日本の語感やカルチャーを織り交ぜた新しい音楽を作っています。中には洋楽をほとんど聴いたことがない人もいるのだそう。

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そして、時代の変化はスイーツ以外にも現れてます。
インターネット、SNSをきっかけに、多くのクリエイター・パフォーマー・デザイナーたちは、お互いの世界を知り、繋がり、コラボレーションした創作を次々と生みだしています。

そんな状況下でも、フード業界とのコラボレーションはなく、しばらく一定の距離感があると感じていました。
推測ですが、制作面&衛生面に対する非飲食のプレイヤーの理解が不足していて、敷居が高かったのだと思います。(この理解のギャップは今でも真っ先にぶつかる大きな課題だったりしますが)

ですが、新しい創作を模索するクリエイターやパフォーマーはフード業界に目を向け始めました。料理人やパティシエも、クリエイターやパフォーマーたちのコラボレーションを目にすることが増え、関与する機会を探す人が現れ始めました。
この1〜2年は、フードやスイーツも織り交ぜた新しい創作が生まれてきています。

・OPEN MEALS / サイバー和菓子
https://www.open-meals.com/cyberwagashi/

・東京造形大学 / メタモルフード展
https://www.zokei.ac.jp/news/2020/13575/

・株式会社カンカク / パフェパフェ
https://www.google.co.jp/amp/s/prtimes.jp/main/html/rd/amp/p/000000005.000047640.html


COVID-19の影響があり、対面で繋がらなくなってコラボレーションしづらいと思うときもあります。
一方で、現状の仕事・環境・リレーションを見直す必要性の中で、これまでの価値観や既成概念をガラガラポンして、新しい世界を開拓するチャンスともなっています。

歴史を辿れば、こういう大きな課題を抱えた時代には、それを乗り越えるパラダイムシフトが生まれています。
それはスイーツの世界にもどんどん現れていくであろうと予感しています。


まとめます。

インターネットやSNSによってグローバル化した時代、業種の垣根を越えやすくなった時代において、
製菓のスキルを持つ人(=パティシエ)と、それ以外のスキルを持つクリエイター・パフォーマー・デザイナーがコラボして、
ヨーロッパのエスプリ・メソッドと日本の文化・風土を織り交ぜた、
これまでのヨーロッパにも日本にもない、新しい解釈・発想に基づいたスイーツ。

これのトレンドをNew Generation Sweetsと今回呼びました。

この先どうなっていくか、不安もありますが、それを上回る楽しみを感じてます。
私もそれを撮りたい、食したいです。


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