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「パンデミアル」の衝撃:第二の氷河期世代を出さないために

金融危機とコロナ、二つの苦境の影響を受けた若者が「機会を失った世代」になるのではないか。

格差拡大、産業の変革、教育の機会など様々な面で不利になった15-24才の若者についての警鐘を鳴らす内容が、世界経済フォーラムが毎年出す「The Global Risks Report 」の2021年の項目の一つになっていると先輩から伺い、その内容に衝撃を受けた。

「現代の世代が将来へのチャンスを掴む十分な道筋が見えなければ、
 苦難の末に勝ち取った今の社会は失われかねない
 ーそして現在の経済や政治機構への信頼が失われることになる」

Hard-fought societal wins could be obliterated if the current generation lacks adequate pathways to future opportunities—and loses faith in today’s economic and political institutions.

世界の状況は日本と非常に近しい。レポート内で具体的に指摘されているのは以下のようなことである。

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・15-24歳の若者は人生で二度の危機(金融危機 とパンデミック)を体験する中で、教育、経済的な、メンタルヘルスの面から厳しい状況に立たされている。

・この世代はすでに環境悪化、ジェンダー・世代・経済・人種などの格差、様々な暴力、テクノロジーによる産業破壊などの影響を受けてきた。

    →金融危機のリカバリーパッケージは若者にとっては足場を作るのに十分ではなく、緊縮財政で教育への投資は減っている。

・そのようなupward mobility(親世代より年収が高くなるなど、機会を与えられて社会的に上昇する動き)が確保できない中で、サービス業など、危機に対して脆弱な不安定な職種についている若者も多い。

 →健康不安を関わる若者も増えている一方で、医療社会保障制度は持続性が危ぶまれる状況。また、地域によっては暴力・難民などの問題もあり。

 →金融危機以降の回復フェーズでの、腐敗して非効率と見えるエリートに対する不満、根深い不正義などに憤り、格差是正などを求める市民活動も活発。

 →パンデミックのロックダウンにより世界の80%の子供達が学校に行かなくなった。しかし、リモート教育に移行しても30%はアクセスできていない。

 →女性や社会経済的に最も弱い層が最も打撃を受けている。

 →金融危機以降、失業率の増加、Gig economyの台頭、”skill crises"など多くの課題がある中、パンデミックで最も打撃を受けた職種に若者が多い。一方で、セーフティーネットの増加は実現していない。

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こういった状況を踏まえて、気づかれていない重大リスク(top neglected risk)であり、次の2年以内にかけて重要な脅威となるリスクとして取り上げられた。

「気づかれていない(無視されている)リスク」というのは本当にその通りだと思う。彼らは投票率も低く、政治参画する術も、声を上げる方法もまだ知らない。票にならないとなかなか注目もされない。そういった課題の重要性に気づき、未来の日本のために今対応できるかどうかが政治の責任ではないだろうか。日本の少子化対策がうまく行かないのは、そういった課題への優先順位をあげられないからだ。

先日の参議院予算委員会の質問でも国民民主党の伊藤たかえ議員の質問に対する質疑で、第二の氷河期世代を作らないこと、増えた子供の自殺への対応、休業支援が本人に知られていない課題などが議論されていた。非常に重要なポイントでの質問であったし、例えば子どもの自殺について答弁された萩生田大臣の真摯な言葉にも心打たれ、本当に期待したい。

日本の将来を考える上で、

・失業なき労働のシフト
・そのためのスキル習得
・一時的なギャップを支援できる社会保障体制

の実現が本当に必要だと思う。次の日本の未来を担う子ども、若者への投資を何よりも。

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