見出し画像

それは、わたしのものじゃない

まー、と呼びかける愛くるしい声。

そんな大きさで一体何が掴めるのか、と思ってしまうほど小さな小さな手。そのぷくぷくとしたパーツを眺めていると、なぜだかバルーンアートのプードルを思い出す。

やわらかな足の裏は、まだ大地をよく知らない。トタ、トタ、と一歩ずつ開拓でもするかのように、新しい何かを探して踏み出していく。

彼の感情はくるくると変わる。涙を流さずに泣き声をあげたかと思えば、大げさに唇を突き出し、歪めてみせる。次の瞬間には愛嬌たっぷりに目尻を下げて、まだ言葉ともつかない何かを発しながら、こちらへと精一杯手を伸ばす。

空を掴んで見えない何かを手繰るかのように、タ、タ、トタ、と向かって来る。

あまりに新しくて、簡単に壊れてしまいそうなその存在。
精一杯この胸に迎えたくて、広げた腕は空を切り──何も残らない。

私には、子どもがいない。
たぶんこれからも、いない。

なんとかやっていくために使わせていただきます。 ブログから来てくださった当事者の方は、ぜひご自分のために使ってくださいね。大富豪の方からのサポートはありがたくお受けします。