文豪たちの愛した場所、山の上ホテル。
「ひさかたぶりの神田神保町さんぽ」からの、つづき。
これまでは、いつもその前を通るばかりだった坂をいよいよ登ると、すぐに小さなホテルの入り口と、白い制服をきたドアマンの姿が目に入りました。山の上ホテルです。
ここで、チェックインと宿泊の説明などをしてくれます。
冷たいお絞りと麦茶をポーターさんが出してくれたり、あまりに丁寧なので若干緊張(笑)。ホスピタリティもとても良くて、利用者も自ずから物腰が丁寧になってしまう。
今回、なぜ山の上ホテルに泊まってみようと思ったのか。
せっかく東京に行くのだから、昔から気になっていたことを一つずつ実現していこうと思ったんです。地方に移住する前は、まだコロナが発生する1年前だったので、しょっちゅう関東にも遊びに来られると思ってたんですが、こうなってくると、なかなか……なので。
山の上ホテルとえば、有名な文豪や作家さんが利用していたという逸話が多く残っているホテル。一番有名なのが、池波正太郎さんが常連で、缶詰になるときに利用し、こちらのホテルのお料理が大好きだったという逸話。
こういうワガママなリクエストができるかどうか、わからなかったのですが、予約時に事前にメールで問い合わせをし、池波先生が利用されていた部屋をお願いしました。
振り返れば、父親の影響で、小学生の頃から時代劇好きで、特に「鬼平犯科帳」「藤枝梅安」の世界観がかっこよくて大好きでした。池波先生がもしや鬼平や梅安を原稿を書いていた部屋に泊まれるかと思うと、期待と緊張でドキドキ。
どなたかがネットで書いていたので、和室だとは聞いていたのですが、襖を開くと、10畳くらいのお座敷にダブルのベッド、正面に障子窓があり、その前には雰囲気のある木の机。椅子はシンプルなんだけど、革張りの座面のスプリングが程よくお尻が痛くならない、何とも素敵な感じでした。
最初は恐れ多くて、しばし立ってましたが、夕飯の後は座って、古書店街で買ってきた本を読んだり、ノートを書いたり、思いを巡らせていました。
夕飯は、和食、中華、鉄板焼き、洋食から選べるのですが、今回は洋食にしました。どのレストランも本格的で、ぜひまた食べてみたいなと思いました。
ちなみに、洋食の「文豪御用達 宿泊プラン 特別ディナー」はこんな感じでした。
連れ合いの体調が悪かったので、私の方がご飯は堪能できました。翌朝もレストランに朝食へ行く予定でしたが、部屋食の和食に変えてもらいました。それがまた予想以上の豪勢な朝御飯で、お部屋で食べると、きっと池波先生もここでご朝食を召し上がったのでは?とすごい幸せな気持ちでした。
古書店街の近くにこのホテルがあり、作家や文化人が御用達にした意味が、泊まることでとても納得できました。
ちょっと歩けば古文書から雑誌まで、本のエネルギーが層のように渦巻き、さまざまな人の想念や叡智、言葉がふつふつブツブツと沸き立ってる場所であり、アイディアやインスピレーションの宝庫であり、そこでまた本が生まれる街でもある。
エネルギーというか、オーラというか、交流しあっている独特の場所なんだなぁと。こういう場所がこれからも受け継がれ、守られていってほしいなと思いました。
わたしの中でも、憧れのなかのイメージと、これまで聞き知った物語と、実際の場所での感覚や見たもの触れたものと、いろいろな刺激を受けて、とても腑に落ちた経験となりました。
私も自分の感覚を大切に、目に見えないなにかご縁を信じながら、文章を書いていきたいなと思いました。
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