【エッセイ】洗濯機に優しい世界。それはきっと人間にも優しい世界。
2021/2/3
うちの洗濯機は壊れかけている。しょっちゅう機嫌が悪くなって仕事をしない。脱水ができなくてすぐにピーピー泣く。まるで3歳児みたいにすぐ泣く。
たぶん洗濯パンが置いてあるところの傾きが強いからなのかわからないけど、いつも決まって脱水の時に泣き始めるんです。
仕方ないのでその度に僕は洗濯機のところまで行って、優しく撫でてやります。それでもダメなら抱きしめてやるんです。よしよし、お前の気持ちもわかるよ、でもお願いだから動いておくれ、良い子だからね、って声をかけながら。
そこまでするとようやく動き出してくれるんです。なかなかのわがままちゃん。
買い替えてしまえばいいってことはわかっているんです。新しい聞き分けが良くて働き者の洗濯機に。
でもそれができない。なぜなら愛着があるから。これまで幾多もの僕の汚れたパンツを洗ってくれたこの洗濯機に。
それになにより僕は親近感を感じてしまっているんです。洗濯機に。
僕も泣き虫です。働くのが嫌いです。わがままです。誰かに優しく撫でてほしい。抱きしめてほしい。そんな人間です。
洗濯機を買い替えてしまったら、まるで自分で自分に用無しの烙印を押すみたいで僕にはできないんです。
僕が僕のことを諦めてしまったら人生が終わってしまう。そんなこと絶対にできません。
社会から見たら僕も使い物にならないガラクタみたいな人間なのかもしれない。それでも僕は生きていたい。
完璧な人間なんてものは存在しない。完璧な洗濯機が存在しないように。
村上春樹風に言ってみましたが、僕は今日も不完全な僕を抱きしめて生きていきます。よしよし、お前の気持ちもわかるよ、でもお願いだから動いておくれ、良い子だからね、って声をかけながら。
だからみなさんも自分自身を抱きしめてあげてください。優しく愛してください。そうすればあと少しだけ頑張れるかもしれない。生きていけるかもしれない。
できることなら人間みんながみんなを抱きしめ合える世界が来ればいいのに。とても優しい世界が。
そしたら僕も綺麗なお姉さんや可愛い女の子といっぱい抱き合えるから、なんて下心はないですよ?本当ですよ?
それではみなさん、良い夢を。
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