知識はある。分析もできる。けど選手に伝わらないじゃ意味がない。
実際の指導現場で選手に対して行うセッションの目的を成すため、もしくは起きた問題を解決するために与えるキーファクターや、実際の試合でハーフタイムなどに修正を加える時の伝え方・教授法には各指導者によって異なった方法があります。
そこに何が正解や不正解などはなく、実際に指導しているチームのカテゴリー、もしくは選手たちの性格によっても異なってくるものです。
一般的には、伝達方法には二つの種類があります。
① 質問形式
② 直接指示形式
ちなみにバルセロナのコーチングスクールに通うと、これらの項目は「チームマネージメント】と言った科目で授業を受けることになります。
話は戻りますが、1つ目の質問形式は初めから回答を選手に提示して与えるのではなく、質問を繰り返しながら、監督がガイド役になり選手たち自身で答えを発見させるように導く方法です。
実際どのような現象(問題点)が起きているのかを理解させるため、そしてどのようにその問題が解決できるかの発見を監督が導くやり方です。
ちなみにですが、スペイン語ではデスクブリミエント・ギアード(案内された発見)といった言い方で表現されます。
逆に、2つ目の直接指示形式と言って初めの段階からダイレクトに選手にキーファクターを提示し、伝える方法になります。
先ほども言った通り、どちらの方法が絶対に正解ということではなく、どちらの方法も必要となります。
最近よく耳にすることで、2つ目の直接指示をする方法は選手をロボット化してしまうから絶対ダメだとか、1つ目の質問形式の方が選手が考える力が絶対身につくからいいなど聞くことがありますが、一監督として両方の方法を局面に応じてミックスして使えるようにすることが大事になります。
例えば、個人戦術のカバーリングのメニューをする時にどのような角度を取りなさいといったシンプルなキーファクターの伝達の場合、初めからポジショニングを直接提示した後、なぜそのポジショニングを取らないと行けないかの部分を質問形式で導くことによって、選手のカバーリングに対しての理解の導くスピードが早くなるかもしれません。
セッションの持ち時間によっても、質問形式ばかりを取り入れてしまうと実際に選手がプレーしている時間が減ってしまったり、本当に伝えたいことが結局伝えれないといった現象も起こりがちです。
カテゴリーによっても変わってきます。
自分はU12年代まではどちらかというと質問形式を多く取り入れ、優先するべきだなと思います。なぜなら、この年代から選手自身で考える力や考えなくては成立しないメニューをこなし蓄積することによって、上のカテゴリーに上がった時に出る効果の差というものは大きなものがあるからです。
もちろん、質問ばかりを投げかけてしまうとまだまだ子供たちの彼らにとって苦痛に感じることもあります。言ってしまうと、下の方のディビションの選手たち相手には戦術理解度がまだまだ低い選手が多くなる可能性も高くなるのでそこのバランスは大切になっていきます。
実際、バルセロナのクラブのユースチームの練習を見ていても、サッカーを教えているというよりかは、すでに選手の中で身についている知識や経験を監督がどのオプションがベストなのか指示するだけのような感じです。
それはやはり小学生年代から蓄積の部分で質問形式を取り入れて選手の中で考える力を低学年の間から養っているからです。
特に、スペイン人の子供を相手に指導をする場合、小学生年代からでも関係なく自分の意見を主張してくるので、練習中や試合中でも監督との間での口論というのは当たり前の光景であり、ほとんど直接指示方法は通用しないことが多いです。
昨シーズン、自分がアシスタントコーチで帯同していたチームにバルサから漏れて流れてきた11歳の選手達がいたのですが、一番驚いたのが今練習・試合の中でどのような現象が起きているかを選手の中で分析し理解してプレーしていたことです。
監督の「今相手のビルドアップの形はどうなっている?」や、「なぜ起きてほしい現象が出ないと思う?」などの問いに対し、必ず選手自身の意見が返ってきます。
一番驚いたことは、試合のハーフタイム中に監督がプレッシングの方法を変えると言った時、一人の選手が「いや、自分はこうした方が相手の弱点をもっとつけると思う」と意見し、最終的にそのプレッシングの方法が採用されたことです。
この選手と監督の関係性というのも、普段から監督が選手と質問を繰り返しながらコミュニケーションをとることで出来上がる部分なんだなと感じます。
日本人選手に対してベストな伝達方は?
一方、日本人は真面目で大人へのリスペクトが強いですから、監督からの直接な指示でも全て聞いてしまうといった印象です。
そういった性格だからこそ、小学生年代のうちから質問することを優先することで上のカテゴリーに上がった時に苦しまない環境づくりが私は必要になると考えています。
練習試合のハーフタイムなどでも、起きている現象がどのようなものかを質問することで、チームとしての共通認識にも繋がることが多いのでぜひ、小学年代の指導をされてる方々は、自分が用意したキーファクターの理解度を選手の中で浸透させるために、質問形式の割合を上げることを推奨します。
もちろんすぐに成果として、目に見えるものではありません。
自分も毎シーズン持つチームで、選手たちの中で自分たちのプレーモデルや取り組んでいることのテーマを意見として主張してもらえるようになるまではなかなかの時間がかかります。
しかし監督をしていて、練習中に質問形式を取り入れた場合に、選手からすぐに返答が返ってくることは、自分たちがやりたいことが浸透してきているんだなと実感することができ、必ずそれが選手たちのためにもなると感じます。
先日のからの記事でもリピートして伝えていることですが、小学生年代は子供達の未来を左右させる大事な学年です。
子供達が上のカテゴリーに上がった時に困らないために、アプローチの仕方を少し変えることで、選手の頭の理解度が上がります。
最後に、まさしく今日お話しした質問形式の伝達方法が詰まっている動画を添付します。
ラ・リーガ・プロミセスというスペインで行われるU12国際大会のデポルティーボ・ラコルーニャのハーフタイムの様子の一部です。(既に何度かご覧になられた方もいるかと思います。)
監督の相手の狙い所や、プレスのかけ方はどうなっている?という現象としてピッチで起きていることの問いに選手たちが次々と答えていきます。
これはまさしく普段のセッションからチームとしての共通認識を養っているからこその成果であり理想の形だと思います。
選手の間で回答を導くことで、チームとしての共通認識が高まります。
【MLT】
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日本人とスペイン人のスタッフで構成されるMLTは、バルセロナを拠点に置くスポーツ団体です。日本のサッカー発展に貢献するため、バルセロナと日本を繋ぐツールになるべく活動しています。日本サッカーが発展するためには、①育成年代の改革 ②サッカーを見る・学べる環境作り ③指導者のレベルの底上げ が優先して必要だと思っており私たちのコンセプトでもあります。
現在は、バルセロナで小学生年代に向けたMLT テクニフィケーションスクールを開催したり、夏に日本で指導者向けカンファレンスやサッカーキャンプを開催しております。詳しくは、我々のホームページにて活動内容を掲載しておりますのでどうぞご覧ください。
MLT 創設者 紹介
【高田 純】
2014 年高校を卒業後、バルセロナに渡り2015年には、スペイン指導者ライセンスレベル2(日本のA級相当)取得。近年では、クラブUEコルネジャで小学生年代チームの第一監督を務める。
-指導経歴-
2014-2015 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2015-2016 CLUB フピテルU-12 セカンドコーチ
2016-2017 UE コルネジャ U-12 第一監督
2017-2018 UE コルネジャU-11 第一監督,U-12 第二監督兼アナリスト
2018-2019 UE コルネジャU-11 第一監督,U-14第二監督兼スカウティング
2019-2020 UE コルネジャU11 第二監督
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