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KAMADOUMA

お前は突然私の前に現れた
冷たく澱んだ霧と 陰鬱な雨が交わる夜に

私は薄暗い書斎で 独り 古びた大きなデスクに向かい
虚ろなまなざしで部屋の隅を見つめていた
私は何かを待っていたのだろうか?
いや、それとも?

私は戦慄し微かに悲鳴を上げた
お前は私自身が作り出した幻影?

お前は私? いや、私がお前なのか?
得体のしれない不安に私は恐怖する

か細く神経質な触覚を長々と伸ばし
禍々しいまでに発達した後肢を曲げ
褐色の衣の下に艶めかしい肌を隠し
ひっそりと不気味に佇む冥府の使者

不吉な響きの 忌まわしきその名を呼ぶ者は
必ずや呪われることだろう

身の毛もよだつ 魔界の虫 
黒き大きな竈馬よ


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