僕が出会った本たちのこと
『犬になりたくなかった犬』(ファーレイ・モウワット著)という本についてご紹介したい。
この本は、カナダに住む一家にやって来た、耳の垂れたさえない子犬が、いつしか立派な猟犬に成長する話だが、とてもユーモアにあふれており、動物(特にワンコ)好きの人にはオススメの本だ。
主人公のワンコ「マット」は、大きくなっても見た目はあまり変わらないのだが、たいへん戦いが上手だったりする。たいがいの凶暴ワンコなら、小手先でちょちょいのちょいと、やっつけてしまうのだ。
僕はこの本を、中学時代に知り合った親友O君から借りて読み、すっかりその面白さにハマってしまった。O君は僕以上にこの本が気に入り、母親に頼んで雑種の子犬を手に入れ、「マットヘルム・ステュットガルト・フォンシュタインベック三世」という名をつけた。
マットの、一見とぼけた外観と違い、なんだかとても由緒ありげな長い名前だった。僕たち二人は、息継ぎ無しでこの名を何回唱えられるか競争して遊んだものだ。僕の記憶では、一息で15回唱えてO君に賞賛されたと思う。
友人はマットを本当に可愛がっていた。僕にもよくなついてくれて、休みの日など、僕が自転車に乗って友人宅へ行くと、まず庭にいるマットが僕の来訪を察知して、喜びのあまり座りションベンをしたという。それはつまり、僕が行くと必ずご主人様と一緒に遊べるからだった。
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