顧客の生の声を集めるはずのアンケートがなぜか上手く活用できない理由
おはようごございます!眼から鱗という会社で経営者の顧問業『あとおし』を提供している長島です。今日は”企業が行うアンケート”について書いてみます。
アンケートについて質問を受けることがよくあります。そのほとんどがアンケート項目に関する質問ですが、実はそれよりも大切なことがあります。それはアンケートを実施する目的です。この目的が曖昧であれば項目を精査する基準も定まりません。
例えばこちらの記事です。年間200人ペースでユーザーインタビューを実施していますが、それは年間600回のリリースに対する重要性や優先順位を決める材料として活用しています。こちらのアプリは医療系であり、実際に体調を崩した方が利用するため、その状態になった人にとっての体験価値を確認することが目的になっていると感じました。確かに、健康である時と不調である時であれば、アプリの操作性などに対する感覚は違ってきそうです。
アンケートが危険な理由
アンケートは一般的な手段として広がっているだけに危険な理由がいくつかあります。
・恣意的に顧客の声を集めることができる
・顧客を評論家にしてしまう
・アンケートでマイナスな環境を呼び込んでしまう
アンケートは質問項目を意図を持って設計することができます。その結果として顧客の生の声ではなく、欲しい回答だけを回収できてしまいます。純粋に顧客の声を集めたいという事であれば、選択型のアンケートではなく、すべてを自由記述にする方が良いでしょう。
またアンケートは顧客を評論家にするという逆効果があります。例えば、セミナーなどの受講者に対して、【講座内容に満足しましたか?】と質問をすると、全体を振り返って満足できる内容であったかどうかを、講座終了後に考え始めます。それまでは特に意識することなく何となく良かった。勉強になったと考えていたとしても、この質問をすることによって、そのセミナーの価値をに考えようと意識します。感覚的な感情をアンケートに答えるという目的によって、論理的な回答に変換させることになります。その結果として受講者をそのセミナーを評価する評論家に変えてしまいます。
アンケートでよく評価を求めることがありますが、本当に知りたいのでしょうか。満足したか?の五段階評価のアンケートがあったとして、全体の10%程度が最低評価の1や2を付けたとします。その結果を受けて、何を改善するのでしょうか?10%の不満足を0にするために改善をするのでしょうか?例えば、不満足の数値が10%未満であれば概ね好感を持って受け入れられているなどの独自基準があれば、そのアンケートには意味があります。そうした基準も無い場合、評価項目をアンケートから削除することをお勧めします。
アンケートを行う目的
アンケートやインタビューを実施する目的にはいくつかあると考えています。アンケートはあくまでも手段であり、企業が行うにはその目的の方が重要になります。以下、私が考えるアンケートの目的を列挙します。
①データ化し、パターンなどの分析に役立てる
②アンケートを通じて、その後の営業を効率化する
③アンケートを手段に顧客訪問の理由を作る
④顧客に印象付けたい自社の価値をアンケートで定着させる
⑤バイアスを排除して純粋に回収し、自社の方向性に役立てる
データ化するというのは顧客の傾向を分析する上では非常に有効ですが、有効な分析を行うためには一定のデータ量が必要になります。同時に大量のデータを取得できる。または継続的に同じ質問を行いデータを蓄積できる、などの条件が整っている場合は、データ活用を前提としたアンケートは有効です。
私がよくアドバイスをするのは、②から④の内容です。アンケートをあくまでも手段と考えて活用していきます。企業が行うアンケートの多くは顧客に対して行なっています。これを顧客の声を聞くという”言い訳”を作って、顧客と接触をする機会だと考えます。特に営業の効率化や自社の価値を定着させる目的でのアンケート設計は、事前に回答する顧客の心理を想定することでどんな項目があれば良いかが分かってきます。
提供価値の認識と定着にアンケートは活用できる
例えば自社の提供する価値を再認識して欲しい場合であれば、『当社が提供している価値を以下の項目よりお選びください』という質問とともに、感じて欲しい自社の価値を選択項目として列挙します。これによってアンケートを読むだけで顧客の意識に感じて欲しい価値のキーワードが入っていきます。その上で『その項目を選択した理由を教えてください』と確認します。選択項目では価値を表現するキーワードに対する意識付けを行い、自由記述ではその理由を、”意識的に論理的に”アウトプットして貰います。この整理してアウトプットするという事を通じて記憶に定着し易くなります。
またアンケートは顧客訪問の理由づけにも使えます。定期的にアンケートを行う習慣を持てば、それを理由に訪問ができます。特に普段は営業マン以外が訪問していないという場合、アンケートを理由に営業とは違う人(同行でも構わないが)が訪問することで、それまで見えなかった事が分かるケースがあります。営業への信頼度や商品・サービスへの満足度。現場でしか気づけない顧客の環境の変化など。特に重要な顧客には、アンケートを通じて訪問し顧客との接点を増やすことは、長期的な顧客との関係を継続していく上でも大切になります。
目的とそれに応じたアンケート設計が大切
アンケートは手段です。その手段を通じて達成したい企業としての意図があり、それを正しく反映できているかどうかが大切になります。アンケートという形式に囚われてしまい、聞く必要の無い項目を聞いてしまっている。聞くべき項目が増えてしまい、やたらと長くなっている。回答者に気を使いすぎて聞きたい項目を聞いておらず中途半端な内容になっている。
アンケートを考える際には、まずは目的から考えましょう。その目的に応じて、過不足なく確認するためには、どんな項目が必要なのか。全てを洗い出していきましょう。アンケートはそれを答えるシーンによっては回答数が多くても許される事があります。回答項目だけではなく、どの様なシーンでアンケートに答えて貰うのかも想定しましょう。仮にアンケート項目が多岐に渡り多くなった場合は、アンケートの目的自体が多くを求めすぎていないかなども確認してみましょう。アンケートは正しく活用すれば有効な手段となります。今一度、自社のアンケートを見直してみてはいかがでしょうか。
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