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(本)RANGE 知識の「幅」が最強の武器になる

自分にはもうすぐ3歳になる子供がいます。
子育てに正解はない、とはよく言われることですが本当に手探りの日々です。
細かいことを挙げると、お菓子を欲しがっているけど、このタイミングであげて良いものかとか、youtubeをみたがっているが、どこで打ち切るか・・・とか、側から見れば「どーでもええわ!」となりそうなことでも、当の親としては、正解はないので自分の考えなりその場の状況を見て判断というのがほとんど。
こんなんでいいのか、悪いのか。
まあ大きくなってるから良いとしよう・・

で、子育てのうち大きな選択の一つは「どのタイミングでどんな知識を習得させるべきか?」ということかと思います。
30代後半の自分が小さい頃は、幼稚園や小学校で塾に行くなんていうのは限られた人たちだけだったという記憶があります。これは、田舎の公立の小学校でのサンプルなので、一般化はできません。中学校の高学年くらいからは、高校受験を目指して少しずつ塾に通う人がちらほら出るというくらいの感じです。
もしかしたら関東圏なりの中学・高校受験を控えた子供は条件がガラッと違っていたかもしれませんが。
で、今の状況を見てみると、本当に小さい子供から「忙しそう」。
自分の子供は3歳に達していないということで特に習い事等させてはいませんが、知り合いの小学生の子供は、平日全てに習い事(公文、水泳、英語)が入るという下手したら社会人より忙しいのでは・・と思うハードスケジュール。
家に帰ったら幽遊白書みるとの友達と遊ぶことしか考えてなかった過去の自分に見せてあげたい・・・笑

で、通塾を含めた現在の大きな流れというものを概観してみると、全ての分野において「早期の専門特化」の動きがあるように思います。

・英語をペラペラにするには小さい頃から英語を習わせるべき
・海外ではスポーツも子供のうちから良い環境で習わせて、成果が出ている

こんな言説はよく耳にするところですし、説得力もありますよね。
インターナショナルの保育園に通っている小さい子供が英語を流暢に喋ってる姿をみると、頼もしさも感じるレベルです。

こういった大きな風潮を作り出している一つの背景には、その分野では有名になった”1万時間の法則”があるかと思います。
自分の拙い記憶だと、確かこの考え方はマルコムグラッドウェルの天才という本で、各分野のエキスパートの練習時間から導かれたものだったはずです。

音楽なりスポーツなり、各分野で1流といわれる人の総練習時間を計算すると概ね1万時間だったというもの。本書は確かプロスポーツ選手の生誕月の比率を調べて圧倒的に年度スタートに近い4月の割合が高いことなどを示していて、非常に興味がそそられました。
ちなみに、このカラクリは
・特に小さい頃は同学年でも4月生まれと3月生まれ(約1年の差)による運動能力差が大きい
・なので、同じ学年の中では早く(4月に近いタイミング)で生まれた方が有利で活躍しやすい
・活躍する人ほど良い環境が与えられる機会が多くなるため、結果、プロ選手の割合も増える(強化選手だったり、強い相手と戦って実力を伸ばす機会、など)
というものだそう。

閑話休題。
で、それなりの学術的・理論的背景と我々の実感としてのわかりやすさも相まって、1万時間の鍛錬をするにはどうしたら良いか→早めに着手した方が有利というシンプルな図式が成り立つわけです。勢い、色んな分野でより幼い時期に着手させようという流れが加速するわけですね。

個人的には、この流れ全てに反対するつもりはないですが、なんか大事なものが抜け落ちている感覚があり、賛同しかねる部分があります。
例えば、インターナショナルスクールに言ったり、小さい頃から英会話教室に通ったりすれば、コミュニケーションをとるときに必要となる英語の運用能力が熟達するのは間違いないでしょう。身につけて損になることもない。
でも、人間の時間は有限だとして、友達と遊んだり、他の経験をしたり、日本語に触れて母語の運用能力を向上させる時間を削ってでも、幼いうちに英語の習得に時間を割くべきなのか?はよく考えるべきだと思います。

自分の身を振り返ってみると、英語を勉強し出したのは中学校に入ってからですし、留学経験もない。そんな状況で大学に入ってから留学生と接したり国際学会でプレゼンしたりなので、それはそれは苦労しまくりでした。プレゼン資料の準備もですが、トーキングペーパーの作成、質疑応答の想定などを含めると膨大な時間を投下していましたし、その度に自分の英語運用能力の低さを呪ったりもしました。
海外に行っても「ああ、もっと英語勉強しとけよ過去の自分!」と思うこと多々。
でも、これがなんとかなるんですね。
本当に伝えたいことはなんとかなる、逆に伝えたいこと・相手が知りたいようなことを自分の中に持つことの方が大事というのが肌感覚としてあります。
もちろんN=1の話で、自分だって幼い頃に英語に触れる体験があれば、こんな苦労もなかったかもしれない。でも、よく批判の的になる中学生からの読み書きばかりの勉強でも、なんとかはなるわけです。本気になれば、ですが。
(ちなみにTOEICは800程度で可もなく不可もなく、というレベルです・・泣)
なので、目先のテクニックの習得よりトータルの人生で考えたときに、より子供の人生に益するものを体験させてあげたい、そんな思いです。

遠回りですが、本書に戻ります。
タイトルにもあるように、幅広く知識を身につけることの重要性を説いています。冒頭にタイガーウッズとロジャーフェデラーの話が出てきて、その比較が非常に興味深い。
ご存知の方も多いかもしれませんが、ウッズは生まれた直後からゴルフに特化した教育を受け続け、世界一のプレーヤーになった。一方、フェデラーは意外とテニスのスタートは遅く、他のスポーツも色々経験したのちテニスに専念し長期に渡り世界一になった。この2つの事例から導き出されることは、何が何でも幼い頃から専門特化的にやる必要はないこと、特化が有効な分野があるということです。

詳細は本書に譲りますが、多くは「幼い頃に幅広い経験をさせ、本当に本人がやりたいと思う分野に特化させる」という戦略をとった方が成功する可能性が高そうです。本書には、チェスをはじめ、多くの分野の事例が引かれており(例えば、英才教育により3姉妹を世界トップクラスのチェスプレーヤーにした話、とか)個々の事例も非常に面白いです。

読んでる本人にもですが、子供や部下を育成する立場の人にも参考になる1冊です。

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