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シェルパのパーパスを定義しました

順風満帆…ではなかった。ミッション見直しのきっかけ

最近ありがたいことに、会う方にこう言われることがよくあります。

「順風満帆ですね。」

確かに、半年前に「SmartESG」の正式版をリリースして以降、導入企業の数は右肩上がりに伸び続け、直近の導入企業様の時価総額合計は30兆円を超えました。

現在の日本の上場企業の時価総額計は約800兆円なので、ローンチしてから半年で市場の約4%をカバーする形でプロダクト提供ができており、我々が当時定めた「サステナビリティ・ESG経営をテクノロジーの力で加速する」というミッションは一見順調に達成しているように見えます。

しかし、SmartESGというプロダクトを構想し始めてから現在にいたるまで丸2年、数百の企業様や市場関係者にお会いする中で、まだまだ日本のサステナビリティ・ESGが進んでいないと感じる場面が幾度となくあり、その度に自分の無力さを痛感してきました。

「うちの会社はサステナビリティどころじゃなくてね。。」

サステナビリティの取り組みが遅れている企業様に対し、SmartESGやサステナビリティ経営を説明すると、ピンときていない表情を浮かべ、「うちの会社はサステナビリティどころじゃなくて、明日を生き抜くのも大変なんです。。」というリアクションをいただくことが多くあります。

今でこそサステナビリティやESGといった単語を目にしない日はありませんが、それでも日本は欧米対比でサステナビリティがあたりまえにはなっていなく、全体としての意識も低いということを感じる瞬間です。

客観的なデータとしても日本のESGスコアは諸外国対比で見ても低く、サステナビリティへの投資アロケーションも低いままの状況です。

シェルパ・アンド・カンパニー採用資料より

サステナビリティ担当者のサステナビリティ問題とマネジメント層の意識の乖離

一方で、サステナビリティ経営の推進度が高い上場企業様においても多くの問題が顕在化しています。先日、世間一般からESG推進度合いが高いと認識されている某大手の企業様に対してSmartESGをご提案する機会をいただきました。その日、会議室には執行役員兼ESG本部長とESG部署の担当者が2人並んで座っていました。

私がSmartESGを説明している間、現場の担当者は身を乗り出してプレゼンに聞き入り、一通りの説明が終わるや否や、テクノロジーをもっと使ってESG情報開示を効率したかったが、これまでどうやればいいか分からなかった、SmartESGを使えば情報開示のベストプラクティスが作れるかもしれない、と目を輝かせながらサステナビリティにおけるテクノロジーの活用可能性について語り出しました。

出所:みずほリサーチ&テクノロジーズ「サステナビリティ経営における非財務情報の
データ管理・IT活用の課題に関する調査」

しかし、一通り担当者との会話が盛り上がった後で、それまで黙っていた執行役員兼ESG本部長はこう言ったのです。

「現場の負担が下がるかどうかはそこまで大事ではない。私は◯◯(現場責任者の名前)に聞けば全てサステナビリティの取り組みや情報開示については把握できるので、彼が倒れない限りは大丈夫。なので、テクノロジーを使ってESG情報開示の負担が減るというご提案は私にとってそこまで魅力的ではないし、むしろ他部署とのやり取りなどをある程度苦しみながら取りまとめることでより良い情報開示につながっていくのではと思っている。」

現場担当者のひきつる顔を横目に見ながら、彼は続けました。

「とはいえテクノロジーを使ってESGスコアの向上、ひいては株価の上昇にもつながるのであれば導入を前向きに検討する。我々のような立場になるとその点が一番大事だし課題に感じている部分でもある。」

皆さんはサステナビリティ担当者のサステナビリティ問題というものをご存知でしょうか。ここ数年で急増した評価機関を中心とする数多のステークホルダーからの開示要求やサステナビリティ情報開示の義務化に伴って、これまでアナログに構築していた社内の開示体制が耐えきれず、さらにはマネジメントからのESGスコア向上のプレッシャーにさらされることで、サステナビリティ担当者に大きな負担がかかり、彼ら自身がサステナブルな働きができなくなる、という問題を指します。

SmartESGはこのような開示業務の負荷を下げるためのプロダクトとして開発しましたが、現場とマネジメントの意識に乖離がある場合、サステナビリティへの意識を高く掲げる会社であっても社内の担当者はまったくそれを感じていないという本末転倒な結果が起きます。

また上記に挙げたいずれのケースでも通底しているのは、推進度合いの高低に限らず、どの会社の経営層も売上や利益、スコアといった目に見える情報に追われてしまっていて、より本質的なサステナビリティ経営につながるアクションを考えられていない、あるいはサステナビリティ・ESGにおける新たな価値を認識できていない、ということです。

前述の通り、欧州を中心とする諸外国は明確にサステナビリティ・ESGを新市場として大きな投資を行っています。伸び悩むGDP、世界最高の高齢化率など、数々の問題を前に今後日本が経済後進国になりうる可能性が高い中で、経営層が今までと同じような考え方でサステナビリティ・ESGを捉えて「社会的に有用なもの」として過小評価してしまうと、新たな市場においても日本とグローバルとの差は開いていくのではないだろうか。。上記のような体験を繰り返すたびに、自分の中で強い危機感が芽生えてしまい、日に日に悩むようになりました。

私たちシェルパが実現したい理想の未来/社会像はなにか。ミッションを超えた新パーパスの策定

この危機意識こそが今までシェルパが掲げてきたミッションを改めて見直すきっかけとなっています。確かに「テクノロジーでサステナビリティ・ESG経営を加速する。」ことにはやりがいがあって社会的に意義もあるかもしれない。でもテクノロジーを主語にするだけでは足りない。

日本が数多の環境・社会問題を乗り越え、再び世界で戦うための経済成長と真に持続可能な社会を実現するためには何が必要なのだろうか?そこに向かって本当にこの会社やメンバーと実現したい理想の未来/社会像はなにか?自分たちの存在意義は?

正式版をリリースした昨年冬から自分の胸にさざ波のように押し寄せる違和感を言語化し、チームメンバーともディスカッションを重ねた結果、つい先日、以下のような考えにまとまりました。

サステナビリティを主語に

まず出発点として考えるべきは、未曾有の危機に瀕する地球環境や、COVID-19が浮き彫りにした格差・人権問題は、これまでのビジネスが前提としてきた、「資源は無限にある、外部不経済は誰かが負担してくれる」という考え方そのものを見直すことを迫っているということです。(この点に関しては私がサステナビリティ領域で起業することを決めたNoteにもまとめていますので、お時間ある方は是非ご覧ください。)

上記のような危機的な状況を乗り越えるには、企業は今まで市場経済の外側にあった気候変動や生物多様性、人権といったサステナビリティに関する課題をこれまで以上に「あたりまえ」のものとして経済活動の一部に取り入れた上で、社会的価値の創出と経済利益活動を両立し、中長期的な企業価値の向上を目指さなくてはなりません。

この「道徳性」と「経済性」という一見相反する2つの価値観の両立は実は「近代日本経済の父」とも称される渋沢栄一によって100年以上前から唱えられていました。ですが、今なお実現に至っていないということは、100年以上前に唱えられていたこの考えだけだとまだ足りないピースがあるはずです。

“正しい道理の富でなければ、その富は完全に永続することができない”
“したがって論語(道徳)と算盤(経営)を一致させることが今日の大切な務めである”

渋沢 栄一「論語と算盤」

ラストピース、道標としてのテクノロジー

繰り返しにはなりますが、企業が「道徳性」と「経済性」という相反する2つの概念を両立するためには、企業経営のあり方そのものを根底から覆すようなチャレンジが必要です。

このとてつもない難度の山を迷わず登るための”道標”は何か。曖昧だった非市場経済における価値を定量化・可視化し、証明することさえできれば、社会的価値の創出と経済利益活動の両立は実現されるのではないだろうか。

上記のような議論を重ね、プロダクトを磨き込むうちに、自分たちが理想とする未来の実現に向かってテクノロジーを突き詰めることで、これまで過小評価されてきた非市場経済におけるそれぞれの価値を証明できるのではないか、と改めて考えるようになりました。

これは単なる過信や思い込みではなく、直近のAI技術はまさしく非財務情報の価値を検証できるレベルにまで進歩しており、技術を正しく扱える強い開発メンバーも続々と弊社にジョインして検証を進めているという事実も大きいです。新しい技術や新メンバーの才能を活かすべく、つい先日AI事業部の新設も発表させていただきました。

我々がテクノロジー・AIにベットし、あらゆる企業にとっての"道標"となることができた暁には、渋沢栄一が100年前に描いた論語と算盤の一致、すなわち真に持続可能な社会と日本経済の発展を両立できるはずであり、それこそが我々の存在意義になるはずだ、改めてそのような思いを抱きながら実現したい未来を以下のように描いてみました。

シェルパ・アンド・カンパニー採用資料より

2050年はこうなっている

  • 日本企業がサステナビリティ経営の推進を通じて、企業価値の向上と社会価値の創出を実現している

  • テクノロジーの活用により、企業・個々人の生産性が大きく向上し、新に持続可能な社会が作られている

この2つの長期目標とともにある実現したい理想の未来/社会像の達成に向けて、我々シェルパはミッションを超えた新パーパス

シェルパ・アンド・カンパニー採用資料より

を掲げます。サステナビリティだけではなく、テクノロジーだけではなく、その双方を経済活動における"あたりまえ"にすることを目指して。

あるべき理想の社会/未来像の実現に向かって

あるべき理想の社会/未来像の実現に向けた第一歩として、私たちシェルパはESG情報開示支援クラウド「SmartESG」の提供を行っています。また定めたパーパスの達成に向けて、以下の短期・中期・長期ロードマップを策定しました。

  • 短期(〜2030)

    • 企業が情報開示のベストプラクティスを確立し、より高度なサステナビリティ経営推進に時間を割くことができる

    • 企業が適切な開示・取り組みを通じてESGスコアの向上など、市場からの評価向上を実現する

    • 開示情報の充実/統一化により、投資家/外部評価機関を中心とするステークホルダーも企業を評価しやすくなる

  • 中期(2030〜2050)

    • データ/AIの活用によりサステナビリティ経営の推進が企業価値向上/社会価値創出につながることが明らかになる

    • 日本の全企業がサステナビリティ実現のためにテクノロジーを徹底追求している

  • 長期(2050〜)

    • 日本企業がサステナビリティ経営の推進を通じて、企業価値の向上と社会価値の創出を実現している

    • テクノロジーの活用により、企業・個々人の生産性が大きく向上し、真に持続可能な社会が作られている

シェルパ・アンド・カンパニー採用資料より

これからのシェルパ

この度、シェルパはグローバル・ブレイン、WiLを共同リード投資家として三菱UFJキャピタルやみずほキャピタルなど、6社のベンチャーキャピタルから総額4.1億円を調達しました!

前回ラウンドで投資して頂いたジェネシア・ベンチャーズからも追加投資をいただき、またグローバルでもプレゼンスを誇る素晴らしい投資家の方々に新しく入っていただいたことで、サステナビリティ・ESG市場を作り上げ、パーパスを追い求めるための万全の準備が整いました。

この1年は大きく採用と開発に投資していきます。すでに素晴らしく優秀なビジネス・開発メンバーがジョインしており、7月にも新たな体制を発表予定です。

おわりに〜We're hiring

ここからのシェルパの挑戦は、あるべき理想の未来/社会像の達成に向かって、第一線を担う企業にテクノロジーの力を用いて伴走し、新しいサステナビリティ・ESG市場をつくることに他なりません。挑戦の先に生み出せる社会的インパクトは大きく、我々は今とてもやりがいのあるフェーズにいます。

10年、30年、100年先の持続可能な未来を見据えて、サステナビリティ領域にテクノロジーを用いて真正面からチャレンジするスタートアップに共感していただけたら、それは門をたたくサインです。是非以下リンクより募集をお待ちしております。

グローバルでも横一線なこの市場をフロントランナーとして駆け抜けた暁には、シェルパはユニコーンに、さらにその先には1兆円企業となって社会に対して巨大なインパクトを生み出していると確信しています。

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