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PoppaとNannyと~ウェリントンに通って20年~(5)

 (写真の公園は、ウェリントンから北東方向にあるマスタートンという町の公園です。ニュージーランドワインの産地の一つ、ワイララパ地方の中心の町です。)

 おじいさんは90歳まで、寝たきりにもならず、長生きした。おばあさんのおかげなのかもしれない。といっても何か尽くしてがんばった、ということでもない。

 おばあさんは少し足が不自由で、歩くときには左側に1回傾き、次に元の姿勢になって、のっしのっしとゆっくり歩いていた。長くは歩けないが、家の中を転びもせず歩くのである。洗濯もできていた。おじいさんは、そんなおばあさんを助けることで、十分幸せを感じていたようだ。数軒先の教会に行くのも、おじいさんは車を出していた。もっとも、元タクシードライバーだけに得意なことではあった。

 さて、おじいさんのためにおばあさんは、特に健康的な食事を考えていたわけでもない。でも、栄養のバランスはよくておいしく、私は、いつも夕食は楽しみにしていた。日本のご飯の代わりのジャガイモ(茹でたのか、またはマッシュポテト)とメイン、ニンジンやグリンピースの温野菜、そして、庭で育っているレタス中心のサラダ。締めにアイスクリームか、パウンドケーキなどのお菓子にクリームをかけたデザート。これが基本線で、私は、「食べられません」といったものは一つもなかった。

 日曜日の礼拝に行く日は、お昼御飯が中心になり、二人とも夕食はとらないか、ちょっとつまむ程度。友人に会いによく出かけていた私は、「夕方帰るからとっておいて」といい、レンジで温めたべていた。鶏肉をクリームで煮たものなど、1週間のなかでも一番手の込んだものが出るからだ。

 でも、食べ飽きるのが一つだけ。それが日本でいう「カニかまぼこ」。外国では"Surimi"の名で売られている。ソフトボールより少し大きいくらいの、冷凍したカニかまぼこがスーパーにはある。それを先ほどのサラダに入れ、それと茹でたジャガイモで夕食。これとデザートという夕食が週に1回はあった。でも、かまぼこは摂取しやすいたんぱく源として、お年寄りにはもってこいなのだ。慣れている味だけに、ちょっと「外国にいるのに」とは思った。でも二人の長生きを支えたのは、カニかまぼこだったかもしれない。

 次はおばあさんのことをさらに書こうと思います。


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