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小浪次郎さんの写真展

皆さんご無沙汰しております。
最後にノートを書いてからだいぶ時間が空いてしまいました。

もともと文章を書くことが苦手なので始めから予想していたことですが、少し空き過ぎてしまいましたね。

以前に比べて仕事以外で自分の写真を撮る時間がかなり減りました。それに伴って写真のことを考える時間が増えた気がします。ここ何ヶ月かあった出来事の中で様々なことを考えさせられ、自分の写真に疑問が湧いてきたことが大きな理由でもあります。

写真が楽しくて撮り続け、お仕事も頂き、写真は僕にとって表現の一部なのですが、僕が撮る写真は世の中に需要があるのだろうかと疑問に思うことがあったり、それはSNSでのいいねや周囲の評価や賞賛などを期待しての需要ではなく、僕の写真は一体何のために存在しているのだろう。なぜこの写真を生み出したのだろう。などと小難しいことを考えたりもしていました。

Canon 7 35mm PORTRA 400 ※撮影の許可は頂いています

そんな時に写真家の小浪次郎さんの写真展に行ってきました。語彙力など気にせず言うならば、とにかくめちゃくちゃ良かったです。僕に取っては今まで見た写真展の中で一番好きな写真展でした。
写真って面白いもので始めた頃に好きだった写真と様々なことを経験してきた今では好きな写真や目に留まる写真が変わっていて今のタイミングだからこそ自分に刺さる写真というのもあるのですが、それを置いておいたとしても今回の小浪次郎さんの写真展は僕にとって非常に素晴らしいものでした。

Canon 7 35mm PORTRA 400

写真一つ一つの素晴らしさもさることながら展示している額装の種類や各スペースの写真の統一感やバランス、空間の使い方など、次回自分が個展をする際に参考にさせてもらいたいなと思う部分がたくさんあり、(もしかしたら展示はアートディレクターの方がやっていて小浪さんご本人ではないかもしれないけど) もうとにかく、全てが好き。でした。

Canon 7 35mm PORTRA 400

写真展に派手さや豪華さは一切なく、それは小浪さんが18歳の頃に住んでいた八丈島の情景から父親を撮影し続けた生活、そしてご自身が父となり、ニューヨークで暮らす現在までを切り取ったごくありふれた日常の写真だったからです。
ですが、そんな日常を切り取った写真が本当にどれも美しく、何気ない日常の写真が人生の儚さを感じさせながらもどこか寂しさと日々の中にある小さな幸せを織り交ぜた小浪さんの優しさ、お人柄を感じる展示でした。

Canon 7 35mm PORTRA 400

今回、小浪さんの写真を見ていて純粋にこんな写真が撮りたいと思ったこと、そして今まで自分が撮っていた写真が何か欲の塊に見えてきて恥ずかしさを覚えたこと。充実の写真展を後にし、そんなことを考えながら渋谷の街を一人歩いていました。

僕はあんなにもシンプルで美しい写真が撮れるのだろうか。
何気ない日常をあんなにも力強く、そして儚く写し出せるのだろうか。
写真が上手いとか、センスがあるとかそんなことではなく、写真に対して向き合う姿勢や人生において自分が大切にするべきもの、写真においての価値観や考え方を改めて見つめ直しなさいと小浪さんに優しく言われたような気がしました。はい。僕の都合の良い勝手な解釈です。

Canon 7 35mm PORTRA 400

先に述べたように自分の写真に需要があるのかないのか、僕の写真は何のために存在しているのかなど、ここ何ヶ月か悩んでいた自分の写真に対するそんな疑問がどうでもいいと思えるほど、小浪さんの写真は非常にシンプルで洗練され、美しかったこと。そしてこの先撮っていきたいと思える自分の写真の指針になるような作品と出会えたこと。たった一人の写真家、一つの写真展によって写真の持つ魅力をまた一つ教えて頂けた本当に素敵な展示でした。

いつか小浪さんにお会いしたい。

Shot on iPhone 
Shot on iPhone 
Shot on iPhone 


※残念ながら展示は1/17で終了していますが、今回の展示されていた写真の写真集が販売されているのでご興味がある方は是非ご購入してみてはいかがでしょうか。

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フリーランスフォトグラファー 石橋 純

東京を拠点に世界中を飛び回り、海外に行く度に様々な国や地域の自然に触れ、その美しさをカメラに収めていくことに喜びを感じ、写真家を志す。
海外の自然から改めて日本の自然の美しさに気付かされ、登山家としても活動。Canon Image Gateway写真展 [極楽・風景時間]では数ある風景写真の中から10人のトリを飾る。
被写体は自然などの風景はもとより、東京・青山にあるBlue Note Tokyoではオフィシャルカメラマンとしてトップアーティストを撮影し、国内外モデルのポートレイトやストリート写真、 雑誌やカメラ機材のレビュー、メッセージ性を込めたアート作品を撮影するなど幅広いジャンルを独自の感性で撮影するフォトグラファーである。
また、ユネスコの無形文化遺産であるブラジルの伝統芸能「カポエイラ」を23年学び、Contra Mestre (副師範)の位を持つ。15年以上を子供から大人まで国内外で教えながら、TVやCM、アーティストのMVや広告などでカポエイラの監修や指導、そして自身もパフォーマー兼モデルとして活動する。

After taking up hiking and realizing how magnificent nature is in Japan, Tokyo-based photographer, Jun, enjoys capturing its beauty through photographs in his home country and abroad. Besides nature, his work covers a wide range of genres such as landscape, portrait, artwork, and street photography.

In addition, for more than two decades, he has been a practitioner of Capoeira, an Afro-Brazilian martial art recognized as a UNESCO Intangible Cultural Heritage of Humanity, and has risen to the rank of Contra Mestre.


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