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【5大商社決算】資源バブルの先に見えた重大課題初の利益「1兆円超え」も株価はバフェット頼み

東洋経済オンラインより

森 創一郎 : 東洋経済 記者

総合商社は資源バブルの先に、成長ストーリーを示すことができるのか。
5月9日、5大総合商社の2023年3月期連結決算が出そろった。三菱商事の純利益は1兆1806億円(前期比25.9%増)、三井物産が1兆1306億円(同23.6%増)と、総合商社で史上初めて純利益が1兆円の大台を突破した。
住友商事、丸紅はそれぞれ5651億円(同21.9%増)、5430億円(同28%増)で着地。相対的に資源ビジネスの比率が低い伊藤忠商事は、8005億円で唯一、同2.4%の減益となった。

今期は5社とも減益の見通し

一方、ウクライナ戦争を機に一段と高騰した資源価格は、世界経済の減速懸念などにより足元では一服。2024年3月期は5社とも業績がピークアウトする見通しだ。
原油価格で見ると、三菱商事は2023年3月期の1バレル=98ドルから2024年3月期見通しは同83ドルの前提(北海ブレント)に引き下げている。ほかにも製鉄用の原料炭や鉄鉱石、ガス価格の下落、為替効果の剥落を織り込み、全社とも2024年3月期は減益決算を予想している。
トップの三菱商事が9200億円(前期比22.1%減)、2位の三井物産は8800億円(同22.2%減)。伊藤忠商事は減益幅が小さく、7800億円(同2.6%減)と3位に続く。
いま商社に求められているのは、未曽有の資源バブルで得た果実をどう株主に還元するか、そして今後の成長ストーリーをどう描くか、だ。

株主還元については、各社とも減益見通しにもかかわらず増配や配当維持の方針を打ち出している。自己株買いにも積極的だ。丸紅が5月8日に上限300億円、翌日には住友商事も200億円の追加自己株買いを打ち出した。その直後には三菱商事が3000億円に上る巨額の追加取得を発表した。

一方、総合商社が成長戦略を示すのは難しい局面にある。地政学リスクが高まるのと同時に、資源ビジネスも脱炭素化の流れで転換を迫られている。インフレが進行する海外では、大型のインフラ投資で投資のリターンを得るのは難しくなっている。

こうした中、各社首脳は決算発表の場で成長の道筋をどう示したのか。

三井物産の堀健一社長は、「当社の強みをグローバル産業で横断的に融合することで、複雑化する社会課題にベストな現実解を提供する。コア事業と周辺事業を組み合わせ、産業横断的な事業群を形成していく」と語った。
「産業横断的な事業群を形成していく」と話した三井物産の堀健一社長。

三井物産は2026年3月期までの新中期経営計画を発表。例えばモビリティ事業では世界で事業群を3倍に拡大し、天然ガスなどのエネルギー関連で1兆円、食や健康関連で3500億円の資本を投下するとした。

資源価格や為替などの前提条件を2026年3月期の前提に調整した純利益ベースで、7500億円から9200億円まで引き上げる計画だ。

業績好調でも株価は割安水準

一方、同様に資源価格や為替の前提を調整した数字で見た場合、三菱商事は2023年3月期の純利益を7300億円とし、資源市況下落の中でも、今期は同水準の純利益を確保するとした。中計最終年度の2025年3月期は8000億円とする。「稼ぐ力がきちんとついている」と語る、三菱商事の中西勝也社長:三菱商事)

三菱商事は現中期経営計画で2024年度までに全体で3兆円、うち再生可能エネルギーなどEX(エネルギートランスフォーメーション)関連事業に1.2兆円を投じる。再エネについては、「先見性を持って投資することで、市場成熟期の高収益を実現する」とした。

中西勝也社長は、「資源高や円安(による効果)だけでなく、稼ぐ力がきちんとついている手応えを感じている」と力を込める。

伊藤忠商事は得意の「川下」を深耕し、消費や電力など生活に密接に結びついたデジタルデータを活用するなどして、新規のビジネスを創出。2023年3月期の7875億円から2024年3月期は8000億円に引き上げる計画だ(純利益から一過性損益を除いた基礎収益ベース)。

ただ、こうした説明からはまだ投資した事業の具体的な収益化の道筋を読み取るのは難しく、総合商社のコングロマリットディスカウント(複合企業の企業評価が割安になること)がつきまとう。いまだに三菱商事と住友商事の「PBR(株価純資産倍率)1倍割れ」(解散価値を株価が下回る状態、5月9日時点)が続いているのは、その証左ともいえる。

いま、総合商社の株価を牽引している最大の材料は「バフェット買い」だろう。4月中旬、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏の率いるバークシャー・ハサウェイが5大商社株6%超を7%超まで買い増したことが伝わると、商社株は前日比3~5%高と跳ね上がった。

各社の決算会見でも、商社首脳らが入れ替わりでバフェット氏を東京・大手町のホテルを訪ねた、いわゆる「バフェット詣で」に関する質疑応答が相次いだ。

「バフェット効果」に頼らず成長できるか

丸紅の柿木真澄社長は、「バフェットさんは、いいビジネスを適切な値段で手に入れて、いい経営陣を持つ会社に投資すると話していた。一応合格点をもらえているのではないかと、軽めの自負を持っている」と語った。

伊藤忠商事の鉢村剛CFOは「バフェット氏は総合商社への投資に満足していること、長期的に保有することに言及した」と明かし、三井物産の堀社長は「当社のビジネスモデルを直接説明する良い機会だったが、(バフェット氏は)よくご理解いただいている印象を受けた」と話す。三菱商事の中西社長も「三菱商事のことはよくご存知だった」と振り返る。

ただ大盤振る舞いの株主還元やバフェット効果は、短期的な株価の押し上げ材料にはなってもそれが永続するとはかぎらない。資源バブルで得たキャッシュで有効な投資ができるのか。総合商社には、今後、成長モデルをより具体的に示していくことが求められる。


この記事では、5大総合商社の2023年3月期連結決算が発表されたことを受け、それぞれの会社の現状と今後の展望について紹介しました。三菱商事と三井物産は、史上初めて1兆円の大台を突破するなど、成長ストーリーを示しました。一方で伊藤忠商事は、資源ビジネスの比率が低いことが明らかになり、減益となっています。今後、新たなビジネス領域の開拓やグローバル化など、総合商社各社がどのような戦略を進めるかが注目されます。総合商社は今後も、社会や経済にとって重要な存在であり続けることでしょう。


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