【ショート】「花は桜木、男はウソツ木🌲」サラリーマン桜木🌸のエイプリル・フール✒️橘順
春の光がまぶしいエイプリルフールの朝、東京の片隅で、一人の男が目を覚ます。彼の名は桜木といい、普段は無口で真面目なサラリーマンだが、今日ばかりは違った。彼は鏡の前で、自分の顔に向かって嘘をつく練習をしている。今日は会社を休むという大嘘をつくためだ。
「私は病気です」と彼は言うが、鏡の中の自分はまるで舞台俳優のように大げさに頷く。彼はその誇張された仕草に自らも笑いを堪える。もし、三島由紀夫が生きていたら、きっとこの滑稽な光景を見て、人間の愚かさや虚栄心を鋭く風刺しただろう。桜木はそんな三島の文学に影響を受けて育った。だからこそ、彼の中には毒とユーモアが同居している。
会社に電話をすると、彼は上司に向かって病気を理由に休むと言う。しかし、その声にはいつもの誠実さがなく、どこかふざけた響きが混じっていた。上司はすぐに嘘を見抜き、「桜木君、今日はエイプリルフールだが、仕事は冗談ではないぞ」とたしなめる。桜木は電話を切った後、自分の愚かさに苦笑いするしかなかった。
エイプリルフールは、人々が真実と嘘を織り交ぜながら、自分自身を少しでも軽くする日。桜木はその日の終わりに、三島由紀夫の小説を開きながら、人生の滑稽さと、それでも前に進む勇気について考えるのだった。
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