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暗闇で鮮やかに光る蛍光素材 - マテリアルとデザイン

慶応大学KMDの山岡です。専任講師としてFuture Craftsというグループを主宰し、新しいものづくりのテクノロジーの研究開発やメディアアートに取り組んでます。

僕の活動のアプローチは、世の中にある色々なマテリアル(素材)をよく観察して、実際に触れてみながら対話をして、研究や作品に昇華してます。その素材の観察の仕方や、ハックするノウハウ、そもそもどういった新素材があるのか、といったことを学生向けにシェアしようと思ったのですが、世の中のデザイナーやアーティストにも有益かなと思って、ここでまとめてみます。

蛍光素材

たとえば、蛍光素材。特殊なライトで光るシークレット・ペンとして文房具売り場で見たことありますかね。あるいは蛍光インクなどは身近ですね。

特性としては、紫外光を吸収して、余ったエネルギーを光として放出します。蓄光(燐光)も広義の蛍光(フォトルミネセンス)です。

蛍光色のインクや、シークレットインクなどの蛍光不可視インク、カラーボールや警備員の服などの素材に使われてます。Tシャツなど白をより際立たせるための染料に蛍光漂白剤として使われてます。また、蛍光灯は、放電により管の中に紫外線を出させ、それが壁に塗ってある蛍光物質に当たって、発光します。このように割と日常の中でも使われている素材です。

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引用:Beo Beyond

要素の分解

蛍光素材は、塗料として、紙などの素材に印刷して素材を光らす以外にも、蛍光灯のように、光源を素材の後ろに置いて素材を光らすなどの使い方もあります。
つまり、光源・蛍光材料・素材・鑑賞者の位置関係を変えることで、色々な見せ方ができるのです。さらに、塗布する素材の選び方(個体か流体か)、そもそも蛍光材料のみで使用するか、光源(UVライト)の当て方、選び方、鑑賞の仕方(人数や見る距離)なども見方に関わります。

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具体的なアイデア

構成要素がわかったところで、もう少し具体的なアイデアを考えてみましょう。よくある使い方としては紙などの平面に蛍光塗料を塗って発光させます。蛍光インク対応のプリンターもありますね。蛍光可食インクなどもあるのでフードの表面を発光させることもできそうです。

Note用-2のコピー

平面ではなく、立体物にスプレーなどで塗装することもできます。面白いのは、塗装する素材が特性を持っていれば、蛍光と別の特性を持った素材を自作できるということです。私は磁性を持つ砂鉄に蛍光塗料をコーティングして、磁性蛍光体を自作してみました(これは販売もされてます)。撹拌機に乗せてみると回転してパーティクルアニメーションのような振る舞いを見せます。

また糸に蛍光塗料を塗って、立体的な彫刻作品などを制作されています。

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Alessandro Lupi

また蛍光素材そのものを流体として見せる方法も考えられます(水中で動かしたり煙にしたり)。色を混ぜていくのも面白そう。変化を可視化するために蛍光材料を使うのは、生物学では細胞の変化などを観察するために蛍光色にしたり、液体中の流れを可視化するために蛍光体を混ぜたりするのは、よくあるので表現に使ったり、あとは画像処理などコンピュータが認識しやすくするために色付けするなどでしょうか。

光源が必要なので、光源の場所や配置の工夫も大事です。例えばライトも複数用意して切り替えながら当て方を変えてみたり、UVレーザーを用いて局所的にスポットやラインで発光させても面白そうです。

また蛍光灯の構成のように、光源を内側に入れる方法も考えられます。例えば、半透明のオブジェクトの内側を蛍光塗料で塗装する。あるいは、3Dプリンタ用の蛍光フィラメントは販売されているので、そういったものと通常のフィラメントを組み合わせて内側を蛍光色にする。内側にUV光源を入れたらオブジェクト全体が発光しているように見えるでしょう。自由な形の蛍光灯なども作れそうです。

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また身の回りの天然の素材にも蛍光体は含まれます。例えば、パインアメはブラックライトに当てると発光します。成分のビタミンB2が反応しているそうです。ケミカルクッキングということで、色々な料理にリボフラビン(ビタミンB2)を混ぜて発光させているようです。発光する料理を提供するレストランというのもいいですね。

他にもバナナやナッツ類も発光し、様々な植物や昆虫も一部が発光します。モンシロチョウはメスのみが蛍光で光ります。こうした自然由来の素材を表現やデザインにそのまま取り込むことも考えられそうです。

※ブラックライトは安全性を確保した上で使用しましょう。ブラックライトの危険性。蛍光材料も同様で、きちんと素材のデータを見て使用条件をチェックしましょう。

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