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虎ノ門・東京ブラチャリツアー(#7)

わたしは大学時代から今にいたるまで10年近く、東京で生活しています。

そんなわたしには「東京に住んでいるのに、東京に詳しくない」というコンプレックスがありました。たとえば山手線の駅名をすべて言えないし、「東京に来たらここに行け!」みたいな定番スポットも知りません。

そんなある日、わたしはアソビューでとあるサイクリングツアーを見つけました。

「東京の名所をガイドと巡るブラチャリツアー! 虎ノ門を出て銀座・築地などの名所をまわります」

なんて自分向けのツアーなんだろう!早速ツアーに申し込みます。

そしてツアー当日、虎ノ門ヒルズでガイドさんと合流。

ガイドさんは某航空会社に勤めていたという男性でした。現役時代はロードバイクの運営に携わっていたという経歴があり、退職後に本格的にガイドツアーを始めることにしたのだそう。

「航空会社がロードバイクのイベントを開くんですか?」
「そうですよ。ただ飛行機を飛ばすだけじゃなくて、航路周辺の地域も活性化させようというのが狙いですね」と彼は教えてくれました。

続いて彼が
「まぁ、わたしは本部の人間なので、下に仕事を任せるばかりだったんですけどね。あんまり自分から仕事した記憶はないんです
彼の何気ない一言に一抹の不安を感じました。そしてこの時の不安が、このあとの波乱のツアーに繋がるとは……

虎ノ門にある駐輪場からロードバイクに乗ると、早速ツアーの始まりです。

初めて乗るロードバイクは、メチャクチャ軽い!ペダルを踏むだけでスーッと前に進むので、風になった気分を味わえます。

虎ノ門を出ると、まずは日比谷公園へ。

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続いて銀座のオシャレな町並みをサイクリング。
都心っていろいろな見所があるけれど、それをいちいち歩いて回ったら疲れてしまう。その点、サイクリングならいろいろなところを一気にぐるっと回れて楽しい!

ファーストパンチ

銀座の裏通りにはコーヒーショップやホットドッグなどの露天が並んでいました。

ガイドさんはコーヒーショップの近くででバイクを止めると、
「ちょっとここで待っていてください。おいしいコーヒーをご馳走します」
と言って、コーヒーショップへと歩いていきました。

5分、10分と経過するも、なぜかガイドさんは戻ってきません。お店はすぐそばにあるのに、どうしたんだろう。

ガイドさんがわたしが座るベンチに戻ってくると、こう言いました。

「すみません、財布忘れちゃったのでお金貸してくれませんか?」
「えっ……」

ここでファーストパンチが飛んできます。

ガイドさんとはいえ、初対面の人にお金を貸すのは抵抗がありましたが、コーヒーは飲みたいのでお金を出すことにしました。

気を取り直して出発すると、皇居の周りをサイクリング。さすが日本の中心部、都心とは思えないほど広い!

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セカンドパンチ

ただ、この時点でわたしは疲れ始めていました。ガイドさんの漕ぐスピードが速くて、ペダルを漕ぐのに必死だったのです。

休憩中、「もう少しスピードを落としてもらうことはできますか?」とガイドさんにきくと、ここでセカンドパンチが飛んできます。

「すみません、今日のコースを走るのは初めてなので、最終フェリーの時間に間に合うかわからなくて。だから急がないといけないんです」
「そうなんですか……!?」

(下見なしでお客さんをツアーに連れ出しちゃだめでしょ……俺は実験台か!)

心の中で叫ぶわたしに向かって、サードパンチが炸裂します。

「この前も、のんびりガイドしてたら帰りのフェリーに乗り遅れちゃったことがあるんですよね。だから、今日は時間に間に合うようにしたいんです」

(それガイドが言っちゃダメなやつー!)

わたしの心の叫びは、思わず口から飛び出しそうになるほどでした。

銀座を出ると築地に到着。
知らなかった、銀座と築地ってこんなに近かったんだ!
銀座のハイソな町並みと、活気のある場外市場というギャップも面白いと感じました。

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築地を出発すると、勝鬨橋を渡って月島、豊洲市場へ。
このツアーに参加した当時(2016年春)は、まだ豊洲市場は建設中の状態で、それこそ何にもないコンクリートジャングルでした。

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豊洲市場エリアは坂道が多く、ペダルがずっしりと重く感じます。
あまつさえ走るペースが速いので、景色を楽しむというよりはトレーニングのようでした。

日が暮れかかった頃、「お台場海浜公園」に到着。フェリーの出港を待つ間、東京にしては広すぎる夕暮れを鑑賞して過ごしました。

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ビルに囲まれた東京の町では、日没なんて滅多に見ることができません。こうして「1日が終わっていく光景」をじっくりと見届けるのって、とても久しぶりな気がする。

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自転車ごとフェリーに乗ると、「日の出桟橋」へ。すっかり夜になった町を走ると、間近で東京タワーを鑑賞し、やっとスタート地点の虎ノ門に帰ってきたのでした。

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「いやー、おつかれさまです。今回は特別ツアーということで、いつもより2時間もかかっちゃいましたよ
「そうですね……」
わたしはへとへとの状態で、相槌を打つのに精一杯の状態でした。
「では、今日はお疲れさまでした」
ガイドさんがツアーを切り上げようとしたので、
「あの、貸したお金……」
「あっ、そうでした」
(忘れてたんかーい!)

こうして、伸びしろだらけなガイドさんによるブラチャリツアーは終わったのでした。

炸裂!ファイナルパンチ

サイクリングツアー中、ガイドさんは時折写真撮影をしてくれました。
後日、ガイドさんが撮影した写真がメールで送られてきたのですが……
「小さくて見えない!」
写真は圧縮されたのか、それともサムネイルを送信してしまったのか、100pixelぐらいの極小サイズのもので、何が写っているのかもほとんどわかりません。

もう、今回のツアーの思い出は「全部なかったこと」にして忘れちゃおうかな……

学んだこと

・行き過ぎた失敗は、かえって笑える
・ツアーガイドが失敗談をお客さんに話しちゃいけない
・デートもガイドツアーも、下見は絶対にやりましょう

現在、このガイドツアーはアソビューには掲載されていませんが、他のアクティビティサイトなどには掲載されているようです。

評価を調べてみたら、なんと星4つ。わたしが体験したような「とんでもツアー」が開催されたというレビューは、一つもありませんでした。

それならそれで構いません。きっとあのガイドさんは、あの日の失敗をバネに、ものすごいスピードで成長したのでしょう。

店舗情報
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