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【現代の駆け込み寺】東京のホステルおすすめ6選

 私には住所不定無職だった時期がある。2018年9月、上司と喧嘩して勤務していた北関東の病院をやめた。精神的体調を崩して東京の実家に戻ったものの父母の反応は冷たいものだった。私はかねてからの気分の落ちこみに加え、吐き気や立ちくらみ/倦怠感/食欲不振/便秘/過眠といった身体的な症状に悩まされており、私はだめな人間だ、と思って病院のトイレで泣いていた。だが65歳以上の父母に精神疾患への理解があるはずもなく、実家で何もしない私に対して着替えろ風呂に入れと怒鳴ったりしていた。食事の時間は沈黙が気まずく、話しかけても冷たい反応をされるだけだった。母は私に「外で部屋を借りなさい、パパはもう少しで爆発しちゃうから」と言った。とはいってもすぐに物件を探して契約するなんて出来ない。2018年11月、私はリュック1つで実家を出てカプセルホテル暮らしを始めた。カプセルホテルというと危険なイメージを持つ人が多いかもしれないが、現代のカプセルホテルはホステルと呼ばれ、シンプルで機能的な空間となっている。個人に与えられるスペースは狭くとも充電できるコンセントやフリーwifiがあるし、その狭さがあなぐらにもぐりこんだ感じで落ち着く。リネン交換やシャワー室もあって清潔だ。女性専用のフロアがあるところも多く、安全面が保たれている。それにとにかく安く1泊2000円程度で泊まれるところが多い。私が家出していた頃、ホステルは外国人観光客の利用者が多かった。しかしコロナ渦で外国人観光客がいなくなり、私が最も気に入っていたセンチュリオンキャビン赤坂スパもなくなってしまった。このホステルは建物全体が女性専用で、大浴場やサウナ、館内着の貸し出し、フリーのお茶/雑誌などがあって本当に居心地がよかった。私と同じように長期滞在している年配の女性がいたりして、その人がどんな人生を送ってホステル暮らしをしているかと思いを巡らせていたものだ。ホステルは観光客の宿泊施設というだけではなく、行き場を失った人を受けとめる現代の駆け込み寺であった。ホステルは特に浅草に多くあり、外国人観光客向けに和風の小物が飾られたり、畳がひかれた共用スペースで宿泊者同士が交流できるようになっていたりする。1泊2000円なら1週間いても14000円だ。行き場のない人にはホステル暮らしを勧める。以下に特に勧められるホステルを紹介する。


①ナインアワーズ(成田空港、北新宿、神田、大手町、赤坂、蒲田、半蔵門、浜松町、水道橋、新大阪、なんば、名古屋、博多、中洲、仙台)

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http://www.booking.com/Share-DIrBGk
 
 ナインアワーズ浅草を愛用していたのに閉業してしまっていた。だがナインアワーズは浅草以外にもたくさんあり、どこもほとんど同じ構造だ。とにかく機能的で無駄のない白い空間に泊まることで実験動物になったかのような、宇宙旅行に来たかのような気分になれる。ナインアワーズといいつつ連泊すれば24時間以上いられる。歯ブラシがもらえたり館内着の貸し出しがついてくるのもありがたい。


②BUNKA HOSTEL TOKYO(浅草)

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https://bunkahostel.jp/ja/

 浅草駅近くのモダンなホステルなのだが現在休業中だった。ホームページを見るといずれ復活するらしい。このホステルのいいところは1階が居酒屋レストランになっているところだ。ホステルに引きこもっていて困るのが食事だ。それでもこのホステルなら、外に出て食事を調達する気力がなくても1階のレストランで事足りる。もうここだけで生活が成り立つだろう。


③カオサン東京サムライ(浅草)

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http://www.booking.com/Share-oFUFSi

 サムライという名前のごとく和風なインテリアで外国人が喜びそうな要素がつまったようなホステルである。共用スペースに座敷とキッチンがあり、アットホームな雰囲気のなかでパソコンを開いたりおしゃべりを楽しんだりと、それぞれ思い思いに過ごすことができる。

 
④ゲストハウスtoco.(入谷)

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http://www.booking.com/Share-RYMU4I

 入谷駅近くの住宅街にある古民家を改装したホステルである。小さな日本庭園を縁側からながめ、木製の2段ベッドで寝ればおばあちゃんの家に来たような懐かしい気分になれるだろう。夜はバーで、朝はキッチンでスタッフの方の手作りのあたたかい食事をいただくこともできる。ただシャワーはついておらず近隣の銭湯を利用することになる。


⑤BOOK AND BED TOKYO(新宿、心斎橋、京都)

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http://www.booking.com/Share-lFVshO

 泊まれる本屋というコンセプトのホステルで、本がきれいに並べられた本棚のなかに眠るスペースがあるような構造になっている。個人スペースが狭くて女性専用エリアもないのだが、インスタ映えするインテリアを見るだけで楽しい。もちろん置いてある本は読み放題だ。ドリンクの注文やデイユースもできる。支払いがクレジットカードのみで現金は使えないのでそこは気をつけたい。


⑥トレインホステル北斗星(馬喰町)

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http://www.booking.com/Share-yKRXjT

 惜しまれつつも引退した寝台列車の北斗星を再現したホステルである。実際の寝台列車の部品が再利用されており、トイレのドアもかつてのA寝台ロイヤルの扉がそのまま使われている。共用部ラウンジ/キッチンの“グランシャリオ”で車内放送や走行音の動画を聞けば、もうそこは寝台列車・北斗星そのものだ。


※他にも個性的なホステルがたくさんある。コロナ渦で大変な苦境に立たされているかもしれないが、ホステルの文化がなくなって欲しくないと思う。ただ気にとめておきたいのはホステルで与えられる個人スペースは、座る分には問題ないが立つことは難しいくらい狭いということだ。トイレ、シャワーは共用だし、個人スペースに鍵をかけることは出来なくてカーテンなどの仕切りしかない。貴重品は常に身につけるなど、防犯の意識を忘れないようにしてホステルという空間を楽しんでほしい。


 

 


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