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漫画編集がデジタル事業に力を入れる理由

こんにちは。少年ジャンプ+編集部のモミーです。

今回は、なんで漫画編集部が「ジャンプ・デジタルラボ」を作ったか、について書きたいと思います。

前回の記事で、「ジャンプ・デジタルラボ」については紹介しました。

一言でいうと、「ジャンプ・デジタルラボ」は、マンガ×デジタル事業の基地のような場所です。(良いと思った企画には、開発資金を最大5000万円提供しています。)

皆さんの中には、「漫画編集者なのに、なんでデジタル事業の企画や人を募集するの?」と思う人もいるかもしれません。

もしかして、漫画編集者の中でも、
「担当作品がヒットするよう、文字通り「漫画の編集」をすることが自分たちの仕事で、他は餅は餅屋であるべきだ」
こんな意見の人もけっこう多い気がします。

しかし、僕はそう考えていません。

デジタル事業は、漫画編集の仕事なんです。

※ここから書くのは、あくまで個人の意見です

■そもそも漫画編集の仕事内容とは

基本的に漫画編集は「ヒット作品を生み出すのが目標」です。
そのために僕たちが普段どんな活動をしているのか、ざっくりと紹介してみます。
※もし漫画編集の方が読んでいたら、釈迦に説法となりますが…。

① 作家を発掘する (持ち込みを受けたり、漫画賞を開催する)

② トライ&エラーを重ねる (客観的なアドバイスをしながら、増刊や読切掲載など重ねて、レベルアップをしつつ、ヒットしそうな企画やキャラクターを一緒に探す)

③ 連載中クオリティアップを目指す (読者の反応を確認しながら、客観的なアドバイスをしつつ、打合せを重ねる)

④ 売れるよう(作品内容改善以外も)努める (宣伝、映像展開などのプロデュース等)

重要な仕事内容を4つに整理してみました。(他にも重要な仕事はたくさんありますが)

逆にいえば、この4つに集中することが、大ヒット作品の創出につながっていました

基本は「才能ある作家さんとたくさん出会って、たくさん打合せする」。

結構シンプルだと思いませんか?

でも、シンプルな活動に集中して大ヒット作品を創出できたのには、「秘訣」があるんです。

■漫画誌の隠れた機能・役割とは

その秘訣は「漫画誌」です。

「漫画誌」の持つ隠れた機能が、実は大ヒット作創出に役割を大きく果たしてきました。
先ほど挙げた編集者の仕事の4つとも、「漫画誌」があるから力を発揮できることばかりでした。

① 作家の発掘
「この雑誌で連載したい」「この作品が載っている雑誌に持ち込みしたい」と、雑誌があるから才能溢れる新人作家さんがたくさん集まってきてくれます。

② トライ&エラー
漫画賞、読切掲載のコンペ、読切の読者アンケート、新連載のコンペなど、「漫画誌の持つ仕組み」が、トライ&エラーを可能にし、レベルアップやヒットに繋がる企画・キャラクターの探求を可能にしています。

③ 連載中のクオリティアップ
週刊少年ジャンプでも、少年ジャンプ+でも、編集は、漫画誌の各話のアンケートと常に睨めっこしています。どんな天才作家でも天才編集者でも、アンケート結果を100%予想できる人はいません。読者の反応を掴みながら、先のストーリーに生かすことでヒット作に成長する確率を上げます。

④ もっと売れる努力をする
僕が若手編集だったころ、連載で人気を取れば必ず売れる、と先輩に言われてきました。人気が上がれば上がるほど売れる、と。
数百万人が読む週刊少年ジャンプで人気1位を取り続ければ、作者の知名度に関係なく単行本は絶対売れるし、アニメも放送され、海外でも人気になります。それは、漫画誌がカタログとして大きな役割を果たしてきたことが関係しています。

つまり、漫画のヒット作がこれだけたくさん日本で生まれる背景には、「漫画誌」の役割が大きかったわけです。

僕の周りの優秀な漫画編集者は、ここで挙げた漫画誌の持つ仕組みをうまく活用しています。
※優秀な漫画編集者が独立してから、実績以上の成果をあげた例が少ないのは、「漫画誌の機能をうまく活用できない環境」だからではないかと僕は予想しています。

もちろん個人の審美眼や洞察力だけで、ヒット作の編集をしている漫画編集もいると思います。
でも、多くの漫画編集は、「漫画誌の持つ機能」を上手に活用することで、作家さんをサポートし、世に面白いマンガを輩出するお手伝いをしてきました。

■雑誌の存在感低下

しかし、皆さんがご存知の通り、雑誌はどんどん読まれなくなってきています。(でも、週刊少年ジャンプは、ありがたいことに、今もたくさん読んでもらっています)

今後、「漫画誌の機能が働かない時代」が来るのかもしれません。

すでに「①」については
多くの編集部で、持ち込みや漫画賞への投稿はおそらく激減しています。特定の漫画誌にこだわる作家さんは減りました。

そして「②」については、
トライ&エラーをしようにも、漫画誌の訴求力が落ちているため、コンペで落ちると他誌へ残念ながら移ってしまう作家さんが昔より増えました。また、エラーを重ねる余裕がない漫画編集部が多くなりました。

また「③」については、
部数減などの理由で、連載中の読者アンケートの精度が落ちて、クオリティアップの参考にしにくい漫画誌が増えました。

さらに「④」については、
漫画誌の読者が少なすぎて、面白くても気づかれずに売れない、という声をよく聞くようになりました。

つまり、作家さんがヒット作を生み出すサポートを僕たち漫画編集ができにくい時代になりました。

■「ジャンプ・デジタルラボ」を作った理由

才能ある作家さんがヒット作を生みだすサポートをする。
待ってくれる読者に対して新しい面白いマンガをたくさん届ける。
それが、僕たち漫画編集の願いであり、存在意義です。

そのためには、「漫画誌の持つ機能」をもっと今の時代にアップデートさせる必要があると僕は考えました。

漫画業界を巡る環境が変わった主要因は、「スマホ」であり「デジタル」です。

そこで、デジタル技術やアイデアを持つ人の協力を求めたいと思いました。
だから、「ジャンプ・デジタルラボ」なのです。
デジタル事業は、まさに漫画編集の仕事、というわけです。

■デジタル技術やアイデアを持つ人の協力を求む

2014年9月22日に、スマホにおける「週刊少年ジャンプ」を目指そうと、「少年ジャンプ+」を創刊しました。

その日、週刊少年ジャンプにこんな記事ページを掲載しました。

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スマホ・デジタルでも、週刊少年ジャンプを超えるような場所を作りたい。
そのために多くの方の力を借りたいと強く願っています。
ただ、ジャンプを使って利益を生み出す事業アイデアがほしい、ということではないのです。

面白いマンガが次々に生まれる新たな世界を作るために、デジタルの技術やアイデアがある方に力を借りたい。というのが「ジャンプ・デジタルラボ」設立の狙いです。

先輩編集者たちが半世紀以上前に作り上げた漫画誌の機能を、今の時代に合わせて一緒に「再発明」しませんか?

最後に「ジャンプ・デジタルラボ」のWEBサイトに掲げたメッセージを紹介します。

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ぜひ、たくさんのご応募やお問い合わせをお待ちしています。

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